3. 誤り訂正と波形等価

 Bluetoothなどの情報通信では,S/Nの低下や干渉の影響により,情報誤りが生じてしまう.ディジタル情報通信では,一般的にこれらの耐性をもつものとして誤り訂正符号が適用される.誤り訂正符号は,ブロック符号と畳み込み符号の2種類に大別される.

 ブロック符号は,情報ビット(ブロック)に誤り訂正用のビット(ブロック)を付加するもので,畳み込み符号は情報ビットに誤り訂正ビットを埋め込むものである.また,情報の誤りには大きく分けて,ランダム誤りとバースト誤りの二つのタイプがある.ランダム誤りは連続時間に飛び飛びの情報ビットに誤りを起こすもので,バースト誤りは短時間に一部分が集中的に誤るものである.

 Bluetoothではランダム誤りを訂正するために,ブロック符号であるハミング符号を採用している.ハミング符号では,1ブロック中の1ビットの情報誤りを訂正できる.付加する誤り訂正符号がmビットの場合,訂正可能なブロックサイズは2m−1ビットである.そのため,符号化率と呼ばれるブロックサイズと情報ビットの比は(2m−1−m)/(2m−1)となる.

 ハミング符号の表記には,(ブロックサイズ,情報サイズ)が用いられる.たとえば,m=3ならばハミング符号(7,4)と表記する.ハミング符号(7,4)の誤り訂正符号化と誤り検出・訂正の仕方を,図6に示す.

〔図6〕ハミング符号(7,4)

 Bluetoothでは符号化率2/3の誤り訂正符号として,ハミング符号(15,10)を適用している.さらに,符号化率1/3の誤り訂正符号として,3回同じ情報を送信する単純繰り返し法も採用している.

 次に,波形等価について述べる.近年,携帯電話などに代表される情報通信機器の普及により,無線回線における周波数帯域の不足が問題となっている.このことから,広い占有帯域幅を必要とする通信方式は望ましくない.一方,ディジタル信号には,たくさんの高調波成分(スペクトル帯域)が含まれている(本誌2000年2月号特集 第2章1.1項参照).

 もし,ディジタル(情報)信号をそのまま変調すれば,この高調波成分も変調することになり,非常に広い周波数帯域を占有してしまう.そのため,一般的にはディジタル情報信号の帯域をフィルタにより制限したあとで変調を行い,帯域幅を狭帯域化して適用する手法が用いられる.

 しかし,むやみに帯域を制限するとディジタル信号がパルス波形でなくなってしまい,情報復調時に誤った判断をする可能性が高くなる.そこで,帯域制限されたディジタル信号が干渉なしにディジタル(パルス)として扱うことのできる基準が設けられており,これを「ナイキスト基準」という.

 さらに,このナイキスト基準を満たしたうえで帯域制限を行うフィルタの周波数特性を「ロールオフ特性」という.図7は,ナイキスト基準を満たすパルス波形と,正規化周波数軸上でのロールオフ特性である.

〔図7〕パルス波形とロールオフ特性

 理想的なロールオフ特性は,α=0のように通過帯域内では“1”,阻止帯域では“0”となることであるが,このような(理想)フィルタは実現できないため,実際にはα=0.5のような緩やかな周波数特性のフィルタが適用される.

 また,図(a)に示したように,αが0と0.5の場合のパルス波形には,ほとんど差がなく,この程度であればα=0.5のフィルタでも問題なく利用できることがわかる.αが0に近いほど性能は良くなるが,高価になったり広帯域化することが難しいため,一般的にはα=0.3〜0.5のフィルタが適用される.

 ここで,送信側から帯域制限をしたことにより,パルス波形は丸みをおびた波形となってしまう.さらに,送信された信号の波形は,通信路の影響で変形してしまうことがある.これらの影響を低減するために,受信側でも送信側のフィルタの逆フィルタを適用し,通信路の影響を考慮した信号処理を行う.

 このようにして,パルス波形の再生を行うことを「波形等価」という.前述したαなども,波形等価のパラメータの一つである.

以降の内容は本誌を参照ください

1. マルチメディア情報通信とBluetooth

2. 受信感度と送信電力

3. 誤り訂正と波形等価


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