パソコン延命処置室です.2

今,パソコンを買い替えずに高速化を行う方法

ゲタを使ったマシンの
アップグレード(2)

岩村 益典

 4年リースの終了マシンのCPUは,100MHz,120MHz,133MHzのノーマルなPentiumが搭載されています.5年リースなら,Pentium 60/66MHzが混じっているかもしれません.このPentium 60/66MHzは,Pentiumシリーズの最初のCPUですが,その後の90/100MHz用とはソケットが異なっています.Intel社からOverDrive品で2倍程度に速くするCPUが提供されていた時期があります.
 ですが,120MHzはもう企業の使うパソコンとしては限界かもしれません.
 また,90/100MHzの次の出てきた120/133/75MHzの時期からチップセットの性能も向上し始めたため,能力の高いチップセットを使った133MHzは,もう少し長く使えるかもしれません.
 しかし,業務の中で画像を扱うようなことがあるのなら,新しい400MHzクラスのマシンに変えてしまったほうが,仕事の効率は著しく上がります.CADとか3Dの世界ではなく,Webベースで,ファイルフォーマットの変換などを行う作業でも,CPUパワーの恩恵を受けることができます.
 といっても,4年リースを再契約すれば,支払いは安い金額ですみますから,もう1年このままで,という企業も多いのではないでしょうか.そういうときには,1万から2万円で実用レベルまでCPUの処理能力を上げることのできる“ゲタ”が,手軽に現状に対応できるのではないでしょうか.
 前号のゲタの解説の続きとして,活用法に触れます.

ゲタの活用法とシステムクロック

 TRY!PC誌で夏号(4月18日)で紹介したJJ-P55Zは,マイナーリビジョンアップし,クーラーとのセット販売パッケージをJJ-Pegasus55z(略してJJ-P55Z)と呼ぶことになりました.JJ-P55Zは,2.4VすなわちK6-3に対応するようになりました(基板上の表記が2.5Vとなっている商品もあるが実は2.4V).
 ただし,JJ-P55Zはシステムバス(FSB:フロントサイドバス)66MHzまでの動作が保証されています.100MHz動作はサポートしていません.これは,クロックが上がるにつれて,JJ-P55Zを使用した際のCPUとソケットの距離分,配線が長くなるために動作を保証できないことが原因です.
 そこで,1999年6月現在,新しいタイプのゲタを開発中です.従来のJJ-P55Zは,基板上にコンデンサやレギュレータICを取り付けるため,通常のSocket7よりサイズが大きくなります.そのため,Socket7に取り付けても,確実に固定することができるように,JJ-P55Zの下に,もう一段板を入れてあります.
 システムバス100MHzに対応させるためには,ゲタの厚みを薄くし,CPUがSocketに密着するようにしなくてはなりません.そうすると,ゲタ上に電解コンデンサやレギュレータICを配置することができません.そこで,ゲタと電源基板を分離することにより,この問題を解決することになりそうです.もしかしたら,本誌が書店にでる頃には,新ゲタをJulius Iwamura Hardware Page(http://www.cqpub.co.jp/ Julius/)で紹介できているかもしれません.
 さて,高速動作時には,必ずクーラーによる空気の流れが,JJ-P55Z上のレギュレータICにあたるように工夫してください.そうしないと,レギュレータICの温度が30度近くも異なります.
 古いメインボードの中には,電源容量が不足するためK6-IIIを使うとオーバーヒートする場合があります.こういった場合にもJJ-P55Zを使うことで,対処することができます.

倍数設定もゲタでOK

 旧マシンのアップグレードとしては,K6-2の300MHzくらいが無難だと思います.それ以上にしても,Windows 95ではパッチプログラムが必要になりますし,メモリやグラフィックスの性能もバランスを取らなければなりません.しかし,K6-2の300MHzの市場では品薄状態です.
 ここで,脚光を浴びるのがIDTのWinChipシリーズです.値段も安くなかなかのものです(6,000円〜7,000円:秋葉原).シングルボルテージ使用でMMXに対応しています.しかし,240MHzで使おうと思ったら,システムバスを60MHz,倍率を4倍に設定する必要があります.取り付けるマシンに4倍の設定がない場合にはどうすればよいでしょうか.
 この場合に,ゲタを使うことができます.ゲタの電源関連ジャンパーをすべてオープンにし,ゲタへの電源ケーブルを取り付けなければ,シングルボルテージで,倍数設定が可能です.

Winchip.jpg (457007 バイト)

スロット1用のゲタと製品リリースのタイミング

 J&Jブランドでは,スロット1用のゲタの開発を終了しました.このゲタは,見かけはスロット1に取り付けるSocket370 CPU用ドーターカードと同じなのですが,電源回路を搭載しています.
 来るべき新Socket370 CPUが電流を多く必要とする場合でも,ゲタ上の電源が電力をCPUに供給するので安定して動作する設計です.現時点で存在するSocket370 CPUでは市販の電源を特別に搭載していないドーターカードでも実用になっているのが実状です.
 電源を搭載したゲタはコストが上がるので,マーケティング的にこのゲタをすぐに発売するかどうかは,今後のIntel社の戦略に関わってきます.

● おわりに

 前号の図1で紹介したCyrix M-IIシリーズは,新しい上位CPUの設計が中止されました.現状の製品群は要求があれば製造されるようです.
*その後VIA社が買収しましたので,後継のCPUが出てきています.
*IDTはCPUの製造を中止するアナウンスを行いました.


copyright 1999 岩村益典