Julius Iwamura Hardware Page ======= 2001-09-17 Vol.13
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□目次
はじめに
 これこそメインボードの匠の技:その1
 Intel対VIA:その2
あとがき
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#はじめに
 ナリという名前の台風が来たので今日は仕事も学校もお休みです。12時間以上暴
風雨が続いています。台北市内も水浸しです。ジュリアスの家付近はまだ被害が少
ないほうです。
 とはいえ、今日は家にいるしかないので、掃除でもすることにします。
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#これこそメインボードの匠の技:その1
 友人の鄭萬成さんをフリーテックに訪ねました。彼は、台湾に今や指の数しかい
ないというエンジニアのひとりです。このようなことを紹介できることこそが、ジ
ュリアス岩村の真骨頂であるといえるでしょう。今回はその前半を紹介します。
 なお写真はその1その2共通です。
 鄭さんは、2001年夏、秋現在、FREETECHというメインボードメーカーでエンジニ
アをしています:メーカーWebはhttp://www.freetech.com。
 FREETECHは1990年に設立された会社で、日本ではあまり有名ではありませんが、
知る人ぞ知る、というメーカーです。本社はアメリカのようですが、製造やマーケ
ティングは台湾のFREETECHで行っています。FREETECHは台北の内湖というところに
あります。内湖の南地域は、工業団地が作られ、AOpenやABIT、シャトルなどもこ
こに移転しているか、移転予定です。FREETECH製品は、2001年には日本でもよく見
かけるようになりました(理由は鄭さんのおかげだと筆者は密かに思っています)。
 FREETECHブランドではメインボードを販売していますが、2001年から日本でも発
売している小型ベアボーン:もちろん鄭さんのメインボードを使ったものは
FLEXUSというブランドで販売しています。
 鄭さんの最新作の2つを紹介します。じつは、この2つ以外にも、普通のATXメイ
ンボード、例えば、ソケット845のPentium4メインボードなどもありますが、今
回は、本書つまりメインボードの秘密という名称に適した小型メインボード、P6F
139とP6F 135を紹介します。
 まず、P6F 139は長方形のメインボードです。サイズは6インチ×8インチと非常
に小型です。鄭さんはこのメインボードを中身のない5インチCD-ROMドライブの
ケースに入れて、それを筐体の5インチベイに入れました。そのようなことが容易
に実装できる小型メインボードなのです。ソケット370メインボードで採用チップ
セットはIntel815EB2、すなわち、Bステッピングで、Tualatinサポートです。した
がって、1GBを越えるプロセッサも楽にサポートします。もちろん、内部AGPグラフ
ィックスを搭載し、AC97サウンドでサウンドもサポートします。なお、外部AGPス
ロットは搭載していません。ICH2を採用しているので、ATA100もサポートします。
オンボードでLANやIEEE1394も搭載しています。USBは当然搭載しています。シリア
ルポートも4つ搭載し、LPCも標準でサポートです。I/Oについてももう一組オンボ
ードで搭載されており、ケーブルと金具で拡張できるようです。工業用PCとしても
利用できるようになっているのです。
 拡張スロットはありませんが、PCIスロット端子を搭載しています。32ビットバ
スマスタPCIで、スロット自体はボードの小型化のためあえて搭載せず、端子だけ
必要に応じてコネクタケーブルやアドオンカードを利用して接続するようになって
います。プロセッサ関連では、クロックは最大150MHz、倍率は最大16倍までBIOS
で設定できます。
 バックパネルI/Oには、PS/2マウス、PS/2キーボード、USB、LAN、サウンド:
再生のみ端子があるようでその他はケーブルを使う、シリアル、パラレル、
グラフィックスのコネクタが配置されているので、拡張スロットは不要ともい
えます。
 二つ目P6F 135は、17センチ角のミニフレックスATXフォームファクタのメイン
ボードです。先のP6F 139と同じくチップセットは815EB2を採用しています。P6F 
139と異なり、シリアルポートなどの構成は通常のメインボードと同じです。PCIス
ロットをひとつ搭載し、バックパネル側が長くなった分、サウンド系もフルセット
でコネクタが配置されています。USBとグラフィックスがあれば、プリンタなどは
USBに取り付ければよいので、小型システムが容易に実現します。
 さて、以上、鄭さんの最新作を2つ見ていただきましたが、筆者が強調したいの
は、このメインボードが小型で高機能であることではありません。鄭さんのメイン
ボードは4層、つまり、通常のメインボードと同じ4層基板で構成されていることが
強調されなくてはなりません。
 6層や8層のPCBを使って、このサイズでこの機能を持たせることは容易ではあり
ませんが可能です。しかし、4層で実現させることに非常な困難があり、それを実
現できるエンジニアが台湾の少ないのです。もちろん、時間をかければ実現できる
エンジニヤもいるかもしれません。しかし、現在のPCビジネスでは、時間をかけて
設計していると正式のリリースが遅れる一方です。実際には、4週間や50日程度以
内で設計を終了しなくてはなりません。そうしなければ、実際プロとしてやってい
けないのです。
#Intel対VIA:その2
 P4X266はPentium4用のインテル845+DDRといった性能の互換チップセットです。
つまり、互換ですから、元の許諾がないとリリースできないわけです。筆者が見た
ところ、スペック的にP4X266は845よりも性能は上です。DDRをサポートするチップ
セットをインテルがリリースするのは2001年末ということですから、RDRAMがいく
ら安くなったとはいえ、やはり、DDRにはかなわず、P4X266メインボードは普及す
る素地があります。
 前回紹介したように、P4X266についてインテルがVIAやS3を訴え、VIAも反撃する
という事態になっています。VIAはインテルに対し相当に怒っています。民國
90:2001年9月7日の日付で、VIAの陳社長が社員に宛てたメールでは、怒ってはいる
ものの、VIAチップセットは、結局Pentium4の普及に貢献するのだから、授権しな
いのはおかしいと、Intelの態度は合理的ではない、といった印象です。このメー
ルは内部資料であり現時点での公表は不可能です。
 この訴訟が表面化してきた2001年9月10日前後、すでにVIAはP4X266の出荷を相当
数行っており、当然製品は台湾にいっぱいあるのです。
 さて、問題は、インテルがVIAの出荷を止めるように裁判所に申請し、それが認
められたら、どのメインボードメーカーもP4X266チップセットのメインボードを出
荷することはできません。しかし、それがまだなら、P4X266メインボードの出荷を
しても法律上の問題が大きくのしかかることはないでしょう。
 それなら、どんどん出荷すればよいではないか、という意見もあり得ます。しか
し、もしそんなことをすればインテルが怒ることは確実であり、インテルが怒った
らそのメーカーに対し、チップセットを売ってくれなくなる可能性があります。理
由は何とでもつけることができます。
 そういうことで、多くのメインボードメーカーは、インテルとの関係もよくした
いし、かといってVIAを無視できないことも当然ですし、もっと無視できないの
は、倉庫にあるチップセットやメインボードの在庫なのです。特に、インテルから
直接購入しているASUSTeK、ギガバイト、MSIは、P4X266メインボードの出荷をしな
い、リリースするかどうかは状況を見て判断する、という対応です。また、その他
のメーカーもリリースについては状況を見て判断し、出荷は待つ、というのが対応
のようです。もちろん出版社に対しても、何も情報は出さないということになりま
す。
 さて、台湾のあるメーカーで、P4X266のメインボードを日本に向けて出荷する
が、独自ブランドパッケージにするか、白箱にするかを日本の代理店と相談してい
ました。状況を見て判断するということではあるけれど、実際には日本からのオー
ダーがすでにあり、出荷することになりそうなのです。しかし、公式には延期とい
っておきながらの出荷ですから、問題は大きいです。
 そこで、日本の代理店は白箱での出荷を検討し始めました。白箱で売ると、メー
カーの名前はパッケージには出ません。もちろん調べればわかるのですが。。。
-筆者の友人:日本人「日本の代理店は台湾メーカーのことを大事にしているんです
ね」
-筆者「必ずしもそれだけとは限らないよ。どうして白箱で出すのか、その理由は、
白箱だと発覚したときに「これはOEM用のやつが流れてきたのであって、当社と
メーカーとでやったことではないのです」と言って逃げる準備をしているのかもし
れないだろ。要するに、いろいろな思惑が混在している複雑な状況なのですよ。意
外とこれが真実だったりして」
-友人「たいへんなことなのですね」
-筆者「いや、大変なのは日本の代理店サイドではないかな。怪しかったら売らなけ
ればよいのだけれど、売れるとわかっているから売りたいのが商売人だし、かとい
って、しかられるのもいやだし、という訳です。台湾サイドはもっとクールでしょ
う」
-友人「OEM用と言って逃げ道を作っておくのですか、さすがジュリアスは法学部で
すね」
-筆者「(明日があるさ、の曲で)SiSもあるし、Aliもある、VIA以外にもいっぱいあ
る。インテルでなくてもいいさ、VIAでなくてもいいさ、SiSもAliもある・・・」
-友人「そのように気軽に行けばよいんだけれど、在庫もあるし、なるようにしかな
らないね」
-筆者「マイクロンもnVIDIAもATIもあるよ・・・」
-友人「そういう問題ではないでしょ」
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#あとがき
 台湾に戻ったので、企業訪問の機会が増えそうです。次回は水曜日か木曜日を予
定しています。鄭さん訪問記その2を予定しています。DFI訪問記なども準備中で
す。
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