Julius Iwamura Hardware Page ======= 2001-09-20 Vol.14
登録/変更/退会は http://www.cqpub.co.jp/julius/
------------------------------------------------------------
□目次
はじめに
 これこそメインボードの匠の技:その2
あとがき
------------------------------------------------------------
#はじめに
 台湾をおそったナリという名前の台風は、大きな被害をもたらしました。台北市
内では地下鉄が止まり、復旧まで6ヵ月といわれています。19日の台北では各所
で、店の掃除や、浸水して水に浸かった商品の安売り風景などが見られました。
 台湾メーカーの出荷も今週はありません。
  写真 http://www.cqpub.co.jp/julius/2001c/0920/index.htm
#これこそメインボードの匠の技:その2
 前回のFREETECH訪問記の第2弾です。写真は前回:その1のものを参照してくださ
い。写真 http://www.cqpub.co.jp/julius/2001c/0917/index.htm
 4層基板から6層、8層と厚くなるに従い、製造のコストが高くなるということが
いえます。これは単なる材料代だけではありません。PCBに穴を空ける穿孔ドリル
の刃を研ぐ回数も増えます。PCBの不良率も高くなりますが、製品全体となると不
良率は最高30パーセントにまで達する場合があるそうです。6層以上のPCBではダブ
ルSMTといって、一度SMTを通したPCBを裏向けてもう一度SMTラインの最初に戻し
て、異なったパーツを取り付けるという方式をとります。裏にパーツを取り付ける
必要がない程度なら、6層以上にする必要はない、といってもよいくらいです。不
良率が高くなるのも理解できますし、人件費も含めてコストが高くつくのも当然と
いえます。
 小型メインボードを使ったシステムや持ち運び可能システムが日本でも販売され
ていますが、これらで使われているメインボードは工業用か、もしくは6層以上の
PCBを使っているのでコストが高く、従って、システムの価格が高いのも理解でき
るのです。 4層基板で実現できるというのは、メーカーにとって本当にありがた
いのです。特に不良率が低いということは非常に大切なことなのです。4層基板で
はSMTは1回で製造行程も短く、その結果製造時間も短縮できます。メーカーにとっ
てもオーダーを受け手から出荷までの日数も少なくなるのです。また、4層基板製
品では、不良率は5パーセント以下に抑えるのも容易ということです。
 今回は、FREETECH社内で、鄭さんとFREETECHのセールス責任者と、3人で話をし
ました。その結果、筆者が得た印象は、目の前の2人だけで、台湾内OEM:本書台湾
内OEMの箇所を参照、ではない立派なメインボードメーカーが作れるではないか、
ということでした。R&D製造担当、セールス/マーケティング担当というわけです。
経理などは、奥さんに頼めばよいのです。あくまでも印象にすぎませんが、目の前
の二人はそれほどすごいのです。でもセールス/マーケティング担当者について
は、本書の趣旨とは関係ないため実名はさけておきます。実は、筆者はFREETECHで
本書内容とは、すこし離れた会話もしたのです。そのことは、別の機械に紹介しま
す。
 鄭さんのようなエンジニアになるにはどうすればよいのか。DFIでも同じことを
尋ねましたが、やはり、帰ってきた答えは同じでした。それは、学校での勉強は基
礎だけのこと、メーカーで実践することがすべて、というのです。もちろん、鄭さ
んのようなエンジニアになるには、適性も必要でしょうが。。。
 さて、鄭さんのキャリアは14年以上で、メインボードに関しては286プロセッ
サの時代からメインボードの設計に携わっているそうです。ここで、ひとつ強調し
ておきたいことがあります。それは、鄭さんはP6F 139・P6F 135などの、回路設計
を手がけただけではなく、PCBレイアウトも自分で自ら行い、しかも、サンプリン
グ/デバッグまで自分で行ってしまうのです。
 鄭さんによると、新製品に関しては、オレンジブックやイエローブックを勉強し
なくてはなりませんから、その分の時間も必要です。結局、回路設計に2週間、レ
イアウトに4週間を必要とするようです。P6F 139とP6F 135などの小型4層メイン
ボードがこの程度の時間で設計できるのはすごい、といったところ。時間がかかり
すぎたら、忘れてしまうだけ、という返事がありました。
 鄭さんの製品でPCBは、2カット:カットというのはPCBを作ることを意味する業
界用語、で完成します。試作は1カットだけなのだそうです。試作を2度3度行う
メーカーもあるくらいですから、このスピードはすごいです。ただし、バグがあっ
てはどうしようもありませんが、鄭さんの場合は問題ないです。というよりは、回
路設計からデバッグまで、参考として他者に見てもらうことはあっても、基本的に
鄭さんひとりでするのですから、確かに2カットというのも理解できるわけです。
 なお、回路設計からレイアウト、デバッグまでひとりで行うことには大きなメリ
ットもありますが、デメリットも当然あります。鄭さんが病気になったりしたら、
作業が止まりますし、同時に複数の製品を設計するといったこともできません。し
かし、鄭さんのメインボードは、小型で4層という特別なものであるため、問題は
少ないと思います。ただし、DFIなどの大規模メーカーでは、設計やレイアウトな
どは別のスタッフが分担し、作業工程を製品ごとに定められたマネージャが管理す
る、という方法を採用しているのです。
 鄭さんは、P6F 139用の拡張LANドーターボードを見せてくれましたが、2時間で
回路設計やレイアウトを終えたそうです。AMRカードなどは1時間で設計できるそう
です。AMRカードなどの小型PCBは、複数を組み合わせてPCBを作ります。それを、
折り目に従って割っていきます。鄭さんは、そのPCBを割りながら恥ずかしげに、
「日本などで作るチップはすばらしい性能です。私はそれらを組み合わせて新しい
価値を創造するのです」と鄭さんは思いを語ってくれました。
 この、私は設計者である、という意味あいには、台湾はメーカーである、という
意味も含まれています。つまり、顧客の方から、こんな製品が欲しいから作って欲
しい、という要望があれば、それを実現できるよう努力するのみ、という職人的パ
ワーが含まれているのです。私たちも積極的にアイデアを提供していきたいです。
------------------------------------------------------------
#あとがき
 実は、台湾で購入したいと思っている周辺機器があるのですが、協会に行ったら
お店が浸水で閉まっていました。次回をご期待ください。週末にもう一つ出せそう
です。
============================================================
◆Julius Iwamura Hardware Page 
登録/変更/退会は http://www.cqpub.co.jp/julius/
メールアドレス:iwamura@cqpub.co.jp
直接の返事は書けませんが、記事内容に反映していきます。直接の返事が必要とな
るメールはご遠慮ください。
著作権は岩村益典にあります。無断転載をお断りします。
[EOF]