兵庫県全域および東京，大阪を活動エリアとして業務を行っている(株)イナハラは，中小企業の多い神戸にあって，顧客のニーズにあったシステム構築を得意としています．

■ 一貫して引き受けます

――会社の特徴を教えてください．
　単なる販売店ではなく，特に主力製品に関してはシステム導入から保守態勢まで一貫して引き受ける，という形態が特徴と言えますね．

――もともと，コンピュータを扱っていたのですか？
　いいえ，会社の創立当時はタイプライタを扱っていました．その後，計算機を扱うようになり，コピー機からコンピュータ，FAXと業務を拡大してきました．コンピュータについては，約25年前のオフコンの時代から，伝票発行機などを扱っていたのですが，今から5，6年前にPCを主流に切り替えました．

――PCのネットワーク関連業務に関わるスタッフは，何人くらいですか？
　店頭要員や事務，経理などを除くと，実働員が約200名ほどなのですが，このうち，技術者とセールスマンが約半数ずつとなっています．例えばコピー機では，サービスマンが本社だけで約25名，営業マンも約25名です．
　PCによるネットワーク関連業務は，主としてシステム営業部が行っています．システム営業部はここ西神本部にあり，東京，大阪，本社にはメンテナンス商品を一部置いていますが，LANの構築やトラブル時の対応，オリジナルソフトウェア作成といった業務はこちらで行います．内訳はエンジニア系が11名，営業が8名，事務が2名，責任者を含め，合計22名です．もちろん，この人数ではすべて消化できませんので，協力会社も数社あります．

――中小規模の企業を得意とされているそうですが？
　顧客の企業規模は，川崎重工や三菱重工などの大手から中小までと広く，三宮の小売店などでは個人の方も対象としています．会社の数からいうと，必然的に中小企業が多くなりますね．兵庫県だけで約2万社くらいの取り引きがあります．
　大手企業に対しては，ライセンス販売が中心となり，中小企業に対してはパッケージ販売が中心です．
　パッケージについては，ソフトウェアの公認インストラクタの資格を持った者が社内にいますので，必要に応じて手取り足取りのお手伝いをすることも可能です．オフコンでソフトウェアを手作りで作ってきたという実績がありますので，そのあたりのノウハウも活用しています．

■ SBS，そしてExchange Server

――SBS(Small Business Server)にぴったりな顧客層をお持ちなのでは？
　ええ，最近ではSBSをベースにした業務パッケージなども多いですし．

――SBSについては，どうお考えですか？
　中小企業に対するソリューションとして，非常に良いものだと思いますね．例えば，中小企業にとっては，社内メールなどには興味があるものの，価格的に不透明であるためになかなか導入に踏み切れないということがあるのですが，SBSなら「これだけでこれができます」という，何ができるかが明確にしやすいですし，SBSの紹介記事なども多いので，売るほうにとっても導入するほうにとってもメリットは大きいのです．
　6月に，ある企業の，社長を含めた役員の方々十数名に集まっていただき，Exchange Serverの説明会を開催したのですが，われわれの社内メールを中心に，インターネットへの接続や，営業マンの見積もりファイルの処理などの実際の操作を見てもらい，具体的に何ができるのかを，決裁権を持つ方々に理解していただくことができました．
　実際に，顧客に見てもらい，触ってもらってお勧めすることができるのは大きいです．この社内システムを使って営業活動を始めてから，Exchange Serverをメールシステムに採用する顧客が増えてきています．最も有益な営業的資料と言えますね．

――社内メールにExchange Serverを入れているのは，マイクロソフト製品に特化しているということですか？
　弊社は，メーカーの指導のもとに業務を行うのではなく，あくまでもユーザーのニーズにあったソリューションを見いだしていくという方針を採っています．
　けれども，開発ロスやトラブルロス，アフターケアのロスを省くためには，OSから作っているマイクロソフト製品がよいだろう，という考えはあります．とは言っても，マイクロソフトに特化しているわけではなく，ジャストシステムや，ロータスの製品も扱っていますよ．

――社内メールシステムについて，詳しく教えてください．
　もともと，弊社ではネットワークもMacintoshを主に使っており，最初のメールシステムとして導入したのは，cc:Mailでした．しかし，ある時からPCとExchange Serverを使った処理に切り替えました．メールシステムはごく普通の構成で，特別な工夫をしているわけではありませんが，十分実用的です．
　具体的には，12の拠点にまたがったシステムに，メールサーバーとしてExchange Server 5.5を12台，クライアントとしてWindows 95にOutlook 97を載せたものが169台．ネットワークには，Macintoshも82台つながっています．また，接続なども，その拠点の使用頻度に従って，専用線，ダイヤルアップ接続などを使い分けています．

――Exchange Serverを選択された理由は何ですか？
　まずは，初期導入の時間的コストや設定コストが安いことです．一元的に管理でき，まずは小さく導入を始め，全体を見ながらシステムを大きくしていくことができますので，導入しやすいのです．

■ 不況でも売れるためには

――今は物が売れない時代と言われていますが？
　バブルの時期など，営業マンが動かなくても，顧客から見積もりの依頼が来るような時代もありました．現在，その時と同じような動きをしていると，当然顧客から声はかからないのです．お金を持っている企業でも，今は銀行の貸し渋りなどいろいろありますので，なかなかシステム導入に投資しようとはされないのです．だから，こういう風に使えますよ，と具体的な説明をしているのです．
　中小企業も，導入したいソリューションはかなりあるのです．本当に使えるのかな，と思っている方も多いのです．ただ新しい言葉が多すぎ，顧客がそれに振り回されすぎている，それを営業マンがかみ砕いてお客様に説明し，メールはどう便利なのか，掲示板の部分はどう利用できるのか，といったことをなるほどなと思っていただければ，不況といっても結構売れるのです．そのためには，われわれが最新情報を身につけ，顧客にアピールしていくことが大切です．

――BackOffice製品については，どのように感じていますか？
　BackOfficeには，いろいろな機能が揃っていますので，「Internetもしたいし，メールもしたい」などの顧客のニーズに応えやすいですね．また，希望される内容によってSBSを勧めることもあります．SBSは，システム導入の取っかかりとして，中小規模の企業に勧めやすいソリューションです．

■「顧客のためになる」ことを

――サポートなどはどう対応していますか？
　SBSなどの導入やパッケージソフトウェアの導入などにも広く対応できるよう，弊社では社員教育にも力を入れています．また，顧客に対するサポートも，顧客のスキルを上げていただけるようなサポートをしていこうと考えています．
　オフコン時代の顧客は，作業全部を外部に任せてしまうのが当然，といった理解をしているところが多いのですが，そうするとシステム変更時などに多くの経費がかかってしまい，そのためにシステム変更ができずにいる，という顧客もあります．メンテナンスを顧客サイドで行えるようにすることで，TCOも削減できるのですよ，という，本当に顧客サイドに立ったソリューションを提唱しています．
　システム導入については，専門用語で説明しても，決裁権を持つ方々には理解しがたいこともありますし，またソリューション側にも，何でもできそうで何もできないアプリケーションが多いとか，ブラウザにも細かい仕様の違いがあるなど，今のコンピュータの現状そのものが，問題を抱えているという感じがします．それに対し，「不況だから，TCOの削減が重要です」と言っても，実際に顧客に理解していただける説明ができなければ，顧客は納得しません．そのためには，相手のニーズをつかむ必要があります．説明においても，単に売る商品についての知識だけではなく，相手のニーズを事前に把握したうえで，理解していただけるように説明する，という姿勢が重要なのです．
　最近では，コピー機の営業部隊の社員も，コンピュータ関連のサポートや，ソフトウェアの設定などを始めるようになってきました．
――今や，そういう時代になってきたということですね．
　ありがとうございました．

(インタビュ/岩村 益典)

1999年1月号掲載

「事例紹介：(株)イナハラによる出荷システムの構築」へ　

「まかせて安心 あなたの街のMCSP トップページ」へ戻る