アナリストに聞く:
データウエアハウジング

BY Nancy Cohen   翻訳 木元 美千代

略歴
Wayne Eckerson:Patricia Seybold Groupのビジネスインテリジェンスとデータウエアハウスサービスのディレクター.データウエアハウスとビジネスインテリジェンスに関して幅広い話題で執筆,講演している.彼のレポートは,データマート,OLAP,Webの探索ツール,データベースマーケティングシステムなどをカバーしている.IBM,Groupe Bull,Sybaseなどの大企業のコンサルタントも務めた.

Henry Morris:マサチューセッツ州FraminghamにあるInternational Data Corp.のデータウエアハウジングおよびアプリケーションのプログラムディレクター.データウエアハウジング市場とそれに関する企業向けアプリケーションの調査に従事.IDCに入る前は,Digital Equipment Corp.にてデータベースのアプリケーション関連の市場でイニシアチブをよく取っている.ユーザーグループやフォーラムでの発言多数.

Teresa Wingfield:Giga Information Groupの研究ディレクター.データウエアハウジング,データマイニングとOLAP,データ管理に従事.
 Gigaはマサチューセッツ州Cambridgeに本社があり,戦略的かつ戦術的ITの決定に関する情報,解析,アドバイスを提供する. GigaでのWingfieldの興味は,データウエアハウスのためのNet情報デリバリー戦略である.
 彼女はGigaの前はUnisysのシニアアナリストで,Charles Stark Draper Labでは分散メインフレームコンピューティングの先駆的プロジェクトチームの一員だった.MIT Sloan School of Management卒,ハーバード大学卒.

Q:企業がデータウエアハウジングやデータマート(編注:部門別のデータウエアハウジング)に興味を駆り立てられているビジネス上の理由は何ですか?

Wayne Eckerson:1990年代に入って,企業は情報をよりうまく使えば競争が有利になることに気付いたんだ.必然的に,情報は競争のための武器となったのさ.
Henry Morris:コントロールとチャンスという2つの理由に要約されるね.ここで大成功を収めているのは,財務・会計に携わる人や業務内容を決める管理者なんだ.彼らは外部からも内部からも情報を集め,異なる情報システムから持ち寄った情報を1つの情報としてまとめようとしている.コントロールとコスト削減のよりよい方法を模索している.例えば,適切なサービス業務や銀行業における相互販売活動を行うにあたって,自分たちの情報がうまく生かされるような良い見方はないかと求めているんだ.
Teresa Wingfield:注文書や会計書に使われていたフォーマットがデータアクセスに適していないことが分かって,需要が生まれたのね.要するに,複数のシステムを結合し,さまざまなソースからデータを集めるということが要求されているのよ.

Q:データウエアハウジングについて,現実に分かっている問題点には何があるのでしょうか?

Teresa:CIOクラスの人の中には,データウエアハウジングを率先して行うことの正当性を示すのは難しいと言う人もいるわ.実際に,それはCIOにとってスポンサーを獲得するための真の挑戦であり,大変なの.でも成功したときの成果も大きいのよ.

Q:リスク回避のためのポイントは?

Teresa:データウエアハウジングが難しいというのは事実だし,その性能には結果的に限界が生じるかもしれないわ.でも,複数の情報ソースへのアクセスというビジネスの要求から言えば,データウエアハウジングは必要なものでしょうね.さらに言うと,データウエアハウジングは費用がかかるわ.でも,私が言わんとしているのは,企業はデータウエアハウジングの提案をコスト面からだけ判断して捨て去るべきではないということよ.コストを正当化できるだけの利益を自ら放棄していないか自問自答すべきだわ.データウエアハウジングを成功させるもう1つの重要なキーは,企業が情報の共有と管理をどのように行っていくかにあるの.企業への私のアドバイスは,情報の共有を実行したければエンドユーザーと共に働け,ということね.私たちが知っているある会社は100通りのデータウエアハウジングを実現しているけれど,それら個々の成果を共有するための共通の手法は持っていないの.

Q:データマートvsデータウエアハウスの話題に移りましょう.データマートの方がより軽くて使いやすそうに見えます.また,一般的に,データウエアハウジングは巨大なものをまとめるためのものであるのに対して,データマートはより小規模なビジネス向けの実際的な方法だという認識があります.これについてはどう思いますか?また実際のところはどうなのでしょうか?

Wayne:データマートの利点は,理論的にはより安価で高速だということだね.だが,この単純性は得てして過大評価されやすい.どんな製品でも,企業が当初予想していたよりも多くの作業が必要になる場合がほとんどだよ.
Henry:データマートの利点で目立つところは,ROI(投資利益率)がすばやく上がることと導入するときのハードルが低いことだね.データマートの方が注目を浴びているが,しかし,我々は本当に二者択一の状況下にあるのだろうか?人々が認識している以上に,両者は実際には似ているんだ.事実,ビジネスは両方のやり方を要求している.データマートから始めて,それを自らのデータウエアハウジングの戦略に統合する道を探求しているんだ.ビジネス界では,特殊な用途に適していると同時に,企業レベルの資産に向けても拡張できるような技術が模索されているよ.

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「デ「データマートか,データウエアハウジングか,って?ビジネスにはどちらも必要だよ.」

 

WHenry Morris:International Data Corp

Teresa:データマートの簡便性という利点は過大評価されてきたわね.いまだに,データマートは多くの要求に答えなければならない意志決定支援ツールに過ぎないのよ.アドバイスとしては,ROIがあればデータマートを当面のソリューションとして使いなさい,ということになるでしょうね.そうするうちに,自然とデータウエアハウスの技術を使い始めることになるの.私は,二者択一のマーケティング戦争という見方が有効だとは思わないわ.
 データマートとデータウエアハウジングの両者は,企業の中で共存すべきものになりつつあるというのが事実ね.

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Q:Windows NTはデータウエアハウジングの環境には向いていない,という意見についてどう思われますか?

Wayne:Microsoftはデータウエアハウジングを克服する準備ができている.現在の,あるいは来年のNTは,膨大な数のユーザーをサポートするのには適していないよ.だが,Microsoftはこの問題について目をつぶっているわけじゃないよ.Windows NTは昔からデータマートを構築するのに適した環境だ.つまり,NTプラットホームはデータマート用に作られているんだ.
 ここでの唯一の問題は,もしデータマートが成功したらあっと言う間に人気が出て,文字通り成長してしまうということ.
 ユーザーは,より詳細なデータやデータから導かれる内容を次々に知りたがる.データベース管理者は索引やバックアップを追加しなければならず,ついにはデータマートが雪だるま式に増大してあっと言う間に巨大な岩石になってしまう.

WEckerson.JPG (6830 バイト) 「データは成長していくのに,NTはどうか?大丈夫,NTのスケーラビリティーはどんどん向上している.」

 

Wayne Eckerson:Patricia Seybold Group

 ここで出てくる疑問は,データは成長していくのに,NTもそれに合わせてスケールアップするのだろうか,ということだが,NTのスケーラビリティーはどんどん向上している.NTは現在はデータマートに適したプラットホームだけど,もしかしたら今は,50〜250GBの範囲の小〜中規模のデータウエアハウスにも適しているかもしれないね.
Henry:NTがデータマート用の望ましいプラットホームだということは明らかになりつつあるね.データウエアハウジングに関しては,データベースの大きさとNTプラットホームの成熟度が論点となるが,その他に,管理サポートについて考える必要がある.1998年現在,人々は重要なビジネスに際してデータウエアハウジングに大きく頼っている.データウエアハウジングがビジネスの遂行に大きく影響を及ぼすようになると,いつでもどこでも使用できる簡便性とサポートのための支援体制が必要になる.この観点から,OLTPシステムの特性を考慮すべきだね.利用性と支援体制に関する同様な考え方は,データウエアハウジングシステムにも当てはまる.

Q:データウエアハウジング市場におけるベンダーのアクティビティーは?

Teresa:競争は激しいわね.データウエアハウジングツールの市場には何十どころか何百以上ものベンダーがいて,マーケットリーダーを特定するのは難しいわ.まさにニッチ産業主導の市場ね.特定の分野で優れたベンダーはいくつかあるの.製品のトレンドとしては,一般的なツールセットよりも特殊な産業に的を絞った縦の関係のツールセットが多く見られるわね.


出典 BackOffice Magazine April 1998, pp.88-92.
(c)1998BACKOFFICE MAGAZINE by PennWell Publishing Company.

1998年8月号掲載