SQL Serverの
OLAP機能について

---Panorama社,
Microsoft社の企業戦略へ参加--
BY Nancy Cohen 翻訳 三重野 研一

 Platoというコードネームで呼ばれるMicrosoft社の新しいオンラインアナリティックプロセッシング(OLAP)サーバーに関する記事が,新聞・雑誌を大いに賑わせている.これは,SQL Serverに対する高い関心を示すものだ.
 Platoというコードネームが付けられたこのOLAPサーバーは,データウエアハウス分野でSQL Serverに重要な機能をもたらすものとなる.
 アナリストは,このOLAPサーバーを,データウエアハウスを必要とする企業経営者に強烈なインパクトを与えるものと評価している.データウエアハウスを構築する上で,高いスケーラビリティーを有し,かつ手頃な投資で実現できる方法を求めているからである.

MicrosoftにOLAPのテクノロジーを売った Panorama Software Systems Ltd.

 誰がPlatoを支えているのであろうか.答えは,Tel Avivに本拠を置くPanorama Software Systems Ltd.という会社にまでさかのぼる.
 1996年10月,Panorama社はMicrosoftに同社のOLAPのテクノロジーを売った.Panoramaの開発チームのうち6名がMicrosoftの社員としてRedmondに移り住み,SQL Server 7.0向けOLAPサーバーエンジン開発グループの中核メンバーとなった.
 PanoramaのCEO(最高経営責任者)はRony Ross氏である.同氏は,Israeli市場でビジネスインテリジェンス製品の開発元・販売元の最大手となったPanoramaの経営の任に就いている.
 「当社の主要な分野は,ビジネスインテリジェンス,意思決定支援システム,経営管理情報システム,OLAP,多次元データベース,データウエアハウスだ」とRoss氏は語る.  OLAPテクノロジーにおけるPanoramaの高い評価は,使いやすさと手頃な費用で実現できることにあると言えよう.経営管理情報システム(EIS:Executive Information Systems)や意思決定支援システム(DSS:Decision Support Systems)を構築する際には,初心者にとっては開発努力は最小のもので済む.OLAPソリューションはすぐに実現できるわけだ.このような場合には通常,MIS部門の支援を受ける必要もないしMIS部門に頼る必要もないのである.

プログラミング不要への取り組み

 Panoramaが設立されて間もない頃,Ross氏はある予兆に気付いた.その予兆を同氏は次のように語る.「我々が話す機会を得た経営者は皆等しく,企業データベースに隠れてしまった情報をいかに取り出し,いかに活用するかという問題を抱えていた.通常の管理職クラスであれトップ経営陣であれ,同様のことが言えた.表現こそ違え,関心事は皆同じであった.例えば,データを利用できない,役に立たないインターフェースをなんとかしなくてはいけない,統合されていない,あるいは情報へのアクセスに時間がかかるといった言い方である.言い方がどうであれ,企業データの有効活用に対する企業のニーズがかなり強いことは間違いなかった」.
 この問題をPanoramaは取り上げ,ソリューションに取り組んだのである:こうした環境にツールを提供するにはどのようにすればよいのか.「我々は,プログラミング不要の方法を生み出したかった」とRoss氏は言う.

Platoで加速するデータウエアハウスの構築

 MicrosoftのPlatoが企業に与える最終的なインパクトについて,Ross氏は次のようにまとめている:「MicrosoftのPlatoを利用すれば,大企業のみならずすべての企業が,簡単にかつ費用効率高く,多次元のデータウエアハウスやデータマートを構築することができるようになる」
 Platoにより,Microsoftはかつてないほど多くのユーザーにデータウエアハウスの能力を提供することになるであろう.こうしたユーザーの多くは,データウエアハウスの構築に果敢に挑むことをためらっていたのである.「ためらっていたというのは,単に感覚的な問題だったというわけではない.データウエアハウスの構築は,実際に複雑で費用のかかるものだった.経営者が,ハードウエアのコストやデータウエアハウスを所有することに要するコストのことを気にしていたのは当然のことだ.データウエアハウスの設計や導入や日常的な活用のための適切なソリューションを,Microsoft社はPlatoで提供できるようになる」とRoss氏は説明する.
 Panoramaの計画はどうなっているのであろう:「現在我々は,質の高いソリューションを提供するために,MicrosoftのOLAP Serverと密接に連携し,クライアント側で稼働する独自の製品を開発中だ.本製品は,OLAP Serverの使用を最も効果的にするものとなるだろう」

加速するSQL Serverの普及

 Microsoftの社員として,Redmondに移住したPanoramaの6名のデータベース開発メンバーは,価格面においてもパフォーマンス面においても,SQL Serverが今まで以上により多くの人により多くの物を提供すべく,まさにエネルギーを注いでいるのである.
 「SQL Serverの勢いは一気に増した.目を見張るものがあった.弾みがついた要因は,企業が低コストでデータベースシステムを構築しようとしていることにある.SQL Serverに関して言えば,導入には非専任のDBA(Database Administrator)が1人いれば十分であるということが理解されるようになるだろう.SQL Serverの導入に専任のDBAが2人も要るなどということはない.SQL Serverは,WebやBackOffice製品との相性も実にいい」と,MicrosoftのSQL Serverプロダクトマネジャー,Steve Murchie氏は述べている.

データウエアハウスと データマートの構築

 データマートとデータウエアハウスに関してはいろいろと議論されてきたが,データウエアハウスは大企業にとっての適切なソリューション,データマートは中小企業にとっての適切なソリューションという理解がされている.Murchie氏は,企業にとっての適切さという問題を,データマートかデータウエアハウスかの二者択一の問題とは見ていない.むしろ,データマートもデータウエアハウスも両方とも活用できるものととらえている.「データウエアハウスの構築は単に難しく,複雑で,お金のかかるものであったという点に注目してもらいたい.Microsoftは,こうした問題点の解決のために努力しているのだ.複雑さの度合いを下げ,SQL Serverをより一層使いやすい製品にすることがMicrosoftの意図するところだ」
 Microsoftは,テクノロジーが実際に展開されていくにつれ,認識は変わると予測している.「SQL Serverを導入し展開する上で複雑さの度合いが下がり費用が安く済めば,データウエアハウスの構築は大企業にだけ有利になるといった認識はなくなるだろう」とMurchie氏は言う.
 データウエアハウス分野で新たな機能が提供できるようになれば,柔軟性という最も重要な企業のニーズに応じられることになるとMurchie氏は語る.「常に,スケーラビリティーのことが徹底して議論される.実際,多くの企業では大量のデータを扱うためにスケールアップだけが求められているのではない.比較的小規模なデータを扱うために,スケールダウンも求められているのだ」投資金額が少なくて済むという理由でデータマートを構築する傾向を示しながら,統合的なデータウエアハウスの考え方に適合するための戦略の必要性も企業は認識していると,Murchie氏は指摘している.
 「より適切な分析情報を得るためには,テクノロジーをどう使えばいいのか」という極めて重要な疑問を有している企業にとって,SQL Server/OLAPの将来は概して明るいものとなるだろうと,Murchie氏は述べている.

会社紹介
会社名:Panorama Software Systems Ltd.
製品:ビジネスインテリジェンスソフトウエア,経営管理情報システム,意思決定支援システム,データウエアハウス,オンラインアナリティックプロセッシングシステム(OLAP),リレーショナルOLAPシステム(ROLAP)
戦略:全社的なデータウエアハウスの構築・保守・最適化という企業のニーズに対するセールス活動
CEO(最高経営責任者):Rony Ross

出典 BackOffice Magazine March 1998, pp.76-77.
ゥ1997 BACKOFFICE MAGAZINE by PennWell Publishing Company.