Microsoft  BackOffice Small Business Server Version4.0日本語版

-------- 記者発表会レポート -------- 諸星 麻由

 

 2月12日,「Microsoft BackOffice Small Business Server Version 4.0」(以下SBS)日本語版の記者発表会が,全日空ホテル(赤坂)の鳳の間にて行われました.

 SBSは「Microsoft BackOffice」(以下BackOffice)を小規模オフィス環境に対応させた製品です.マイクロソフトのBackOffice戦略としては,BackOfficeスタンダード版を中核に据え,大規模方向にはEnterprise Edition,小規模方向にはSBSで,すべてのラインナップをそろえることが以前から発表されていましたが,その一翼を担うSBSが,米国に遅れること約4ヵ月で,やっと発売の運びとなったのです.

 米国でのSBSの売れ行きはなかなか好調なようです(昨年11月と12月で,販売数は約3万本).その背景には,ベンチャー企業が多いだとか,通信の回線コストが安いなどのお国柄も関係しているのでしょう.日本の状況は米国とは違いますが,中小企業の数は多いですし,コンピューター,LANの未踏の市場は大きく広がっています.また「手の届く」価格設定は,現在の堅実・節約型経済の時代にはぴったりとも言えるでしょう.マイクロソフトは,SBSの販売を力強く推進していく模様です.  これほどの市場を狙うのがマイクロソフトだけのはずはありません.ただ,各社とも,実際の企業や市場の反応を伺いながら,動きを定めていくつもりなのでしょう.このような虎視眈々とでもいうべき状況の中,マイクロソフトの発表会は始まりました.

●ターゲットは中小規模事業所

 当日は,常務取締役である大浦 博久氏が中小規模事業所マーケットの有望性について述べた後,加藤浩一氏がSBSの製品概要を,そして直接の担当者である松倉泉氏と鶉橋 研治氏が,デモを交えて機能の紹介を行いました.

 大浦氏は,日本の中小規模事業所(従業員10〜99人)においては,パソコンが導入されている割にLANの導入率が低いことを指摘し,LANによって情報システムを社内に導入することがいかに企業のメリットになるかを訴えました.また,この中小規模事業所マーケットがいかに膨大(昨年の総務庁統計によると120万事業所)であるかを説明し,それの情報武装に最適な製品としてSBSをアピールしました.

●SBSを分析する

 SBSは「専門知識不要」の「手頃」な「統合」製品と言われています.「BackOffice」としていったん世に出てブラッシュアップされた製品を,中小規模事業所向け,シングルサーバー環境向けにチューニング・最適化し,さらに小規模オフィスに必要な機能を統合し,価格も抑えています(別コラム参照).この価格なら,「出して出せない額ではない」のです.それによって得られるメリットを思えば,情報化を目指す企業には願ってもない製品と言えるでしょう.

 マイクロソフトが自信を持って「専任の管理者は不要」と言っている根拠は,統合インストールと管理コンソールにあります.統合インストールについては,入力する情報が少ないこと(それ以外はデフォルトで設定される)と,複数のソフトを1回の作業ですべてインストールできることを考えると納得がいきます.管理コンソールも,「直感的に分かる」ことを目指して設計されているのがわかります.…ただこれを見ると,つい昔を思い返して感慨に浸らずにはいられません.考えてみれば,「分かりやすいUI(ユーザーインターフェース)」は常に(DOSの時代においても)追求されていたのです.某社のマイツールメニュー,98ランチなど,その類のものはいくつもあります.そしてユーザーは,どこまでがOSで,どこからが管理ツールで,どこからがアプリケーションなのか意識せずに,コンピューターを使うことができるのです(そのような人にとっては,電源を付けて立ち上がるのが必要なアプリケーションであれば,その機械を使用していて起こるすべての現象は,そのアプリケーションのせいであり,サポート側は苦労するのだが…).  話が少々それましたが,つまるところユーザーが求めているのは迷わずに使える「分かりやすいUI」であり,Windows 95のスタートボタンも,Windows3.1の「プログラムマネージャ」に代わる「分かりやすいUI」として,世に広まってきたのです.そして今SBSも,その「管理コンソール」をひっさげて舞台に登場したのです.

●心に残った言葉

 機能紹介とデモで印象に残ったのは,Exchange ServerとSQL Serverの機能をうまく組み合わせて利用している,サードパーティーのアプリケーションの話でした.「こうして情報系のデータはExchangeに,業務系のデータはSQLに,と切り分けてあり,しかもユーザーはそれを意識する必要がないのです」.本当にそうなるべきだ,と深くうなずきました.今はまだ,パソコンが使えます,Wordが動きます,というのは特殊技能として評価される傾向が残っているようですが,それらはしょせん道具であり,テレビのリモコンを押したりチャンネルを切り替えるのと同じように,誰もが扱える存在になるべきなのです.SBSも,それを目指して果敢に取り組んでいるソフトウエアである,とはほめすぎでしょうか.

●シビアな空気

 ただ,これだけ発表が遅くなったSBSに対する,疑問や不透明感は拭いきれないようです.ソフトウエアの基本機能としては「BackOffice」と同じであるだけに,発表会の終盤の質疑応答では「SBS対応」(注1)の定義についてや,「BackOfficeロゴ」の有効性などについて,辛口の質問が飛び出していました.今まで「コンシューマー(消費者,一般ユーザー)向け」もしくは「エンタープライズ(企業)向け」の製品ばかりであったマイクロソフトの,中小企業向けという新しい分野への進出を,多くの人がさまざまな思惑で見守っていることが感じられる発表会でした.

●SBSは流れを作るか?

 発表会に合わせて,ソフトウエア/ハードウエア各社から,SBS対応の製品を出す旨の表明(ニュースリリース)がありました.現段階では,SBSで動くことを保証するレベルに過ぎないものが多いのですが,いずれは管理コンソールへの統合を含めた「SBS版」と呼ばれるものが増えてくるでしょう.そしてその動きの速度は,SBSの売れ行きにかかっているのでしょう.

<注1> SBSに対応している,という意味には,(1) SBS上で動作可能,(2) SBSに統合されている(インストールすると管理コンソール上に追加されるなど),の2つがある.現段階では,正式に呼び分けているわけではないが,後者を「SBS版」とでも呼ぶことになりそうである.


BackOffice Magazine 1998 May 1998年5月号掲載