Interview
MetaFrameによる
シンクライアント/サーバーシステム
利用の実際

                                                                                    松永 晃

 

 MetaFrameのシステムは,具体的にはどう利用されるのでしょうか.
 シトリックスには,MetaFrameの前身と言うべき『WinFrame』という製品があり,すでにかなりの利用実績があります.ここでは,シトリックス・システムズ・ジャパン(株)の代表取締役・佐野 充氏,同社システムエンジニアリング部マネージャ・塩原 稔氏,同部エンジニア・小玉 孝氏に,WinFrameの事例も含め,主としてユーザーの導入・利用のあり方について伺いました.

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佐野氏  

塩原氏

■Windows NTのマルチユーザー化技術から生まれた
   MetaFrame

――MetaFrame開発の経緯を教えてください.
 MetaFrameの前に,私どもにはWinFrameという製品があります.これは,Windows NT 3.51にマルチユーザー機能を付加して,シンクライアント/サーバーシステムにしたものであり,開発にあたってはマイクロソフト社からNT 3.51のソースコードのライセンスを取得しています.
――WinFrameはMetaFrameのようなアドオンではなく,NT 3.51を含んだシステムということですね.
 そうです.マルチユーザー化する部分の技術をMultiWinと名付けていますが,NT 3.51の一部をMultiWinに変え,その上でシンクライアント/サーバーシステムとして役立つ機能を付加しています.クライアントとサーバーのやりとりには,MetaFrameと同様,ICAプロトコルを使用しています.
――そのWinFrameからMetaFrameが生まれたのですね.
 1997年5月に,マイクロソフト社と私どもで,今後のNTのマルチユーザー化に関して,共同で開発していくことを合意しました.その初めの成果がWTSです.WTSのマルチユーザー機能には,私どものMultiWinの技術が生かされています.
――そうすると,MetaFrameはWinFrameからOS以外の部分を切り出した製品ということですか?
 位置付けとしてはそう言えますが,さまざまな新機能が盛り込まれています.また,WinFrameは英語版だけですが,MetaFrameは日本語化されています.
■多様な既存ユーザーの利用分野
――WinFrameは,かなりの構築実績を持っているということですが….
 英語版のため,日本では外資系の企業で使われる程度ですが,世界的には,現在,10万サーバー,200万クライアントの実績があります.
――ユーザーはどのような分野が多いですか?
 多種多様ですね.金融機関あり,製造業あり,小売業あり,学校あり….使われているアプリケーションもさまざまです.一般の企業では,ERPなどの基幹業務で使われるケースもたくさんあります.主要なERPベンダーは,WinFrame,MetaFrameをサポートしてくださっていますから.また,コンビニエンスストアなどでは,POS端末のサーバーとして使用されています.
――英語版のMetaFrameはすでに発売されていますが,ユーザーへの導入はいかがですか?
 6月16日に販売を始めたばかりですが,すでに銀行や大学などに導入され,稼動しています.また,WinFrameのユーザーがアップグレードするケースもあります.もっとも,アップグレードしなくても,WinFrameサーバーとMetaFrameサーバーをサーバーファームとして一緒に使っていくこともできます.
■日本語版の発売スケジュール
――日本語版のMetaFrameの発売はいつですか?
 9月25日を予定しています.現在,いくつかのお客様と導入に向けて詰めの作業をしているところです.
――日本での導入先は,どういうところになりますか?
 まだ具体的にはお伝えできませんが,米国と同様に,金融機関や小売業,学校関係,販売関係などがあり得るでしょう.モバイルでの利用も含まれると思います.MetaFrameでは利用できるクライアントデバイスの種類が多いですから,さまざまな分野でご利用いただけると考えています.
■豊富なクライアントデバイス
――パソコン以外にも,さまざまなクライアントデバイスが予定されているそうですが….
 ええ,MetaFrameサーバーを利用するには,ICAプロトコルをサポートしていればいいのですが,世界の主要な端末メーカーはほとんどICAを組み込まれています.WBTはもちろんですが,NC(ネットワークコンピュータ),POS端末,ワイヤレス端末,キオスク端末,セットトップボックス,Java端末など,実にさまざまなクライアントが存在しています.
――NCにICAが組み込まれているということは,MetaFrameサーバーがあれば,NC上でWindowsアプリケーションが動くということですか?
 そうなりますね.
――日本語の端末はどうでしょうか?
 現在,日本の主要な端末メーカーと,ICAのOEMについて煮詰めさせていただいているところです.9月のMetaFrame正式発表の段階では,メーカー名を公表できると考えています.初めから十数社にはなるでしょう.
――ユーザーは,クライアントデバイスには何を選んでいますか?
 これもさまざまですね.新規に事業を起こしたり,特定用途のアプリケーションを開発したりというケースでは,WBTのようなクライアントを導入されることが多いようです.また,既存のクライアント/サーバーシステムから,シンクライアント/サーバーに移行する場合には,すでにあるパソコンにクライアントソフトウェアをインストールして利用するケースが多いですね.
■シンクライアント/システムを求めるユーザーのニーズ
――シンクライアント/サーバーは,TCOの削減が目的ですね.
 そういった面はもちろんあります.従来のクライアント/サーバーシステムでは,クライアントPCのコストもばかになりませんから.しかし,単にハード/ソフトのコストだけでなく,アプリケーションのバージョン管理という面からシンクライアント/サーバーシステムを求められるお客様もいらっしゃいます.実際,何百,何千という数のクライアントがあると,ワープロソフト1つとっても,さまざまなバージョンが混在して,文書ファイルが開けないということも多いのです.管理者からはこれを何とかしたいという希望がよく出されます.
――その点,シンクライアント/サーバーなら,サーバーのアプリケーションだけを管理すればいい….
 そうですね.また,支店にあるサーバーをなくしたい,というケースもあります.サーバーがあれば管理者を置かなければならないですから,そのコストがかなりのものになります.本社のサーバーに回線でアクセスする形にして,同時にシンクライアント/サーバーに……ということですね.
――MacやUNIXもクライアントにできますが,そのニーズはありますか?
 今,Windowsのビジネスアプリケーションを使いたいというニーズは,MacユーザーにもUNIXユーザーにもあります.しかし,既存のシステムを捨てて置き換えるのは大変です.その点,MetaFrameを導入すればシステムはそのままで,最新のWindowsアプリケーションを快適に利用できます.現在,いただいている引き合いの中にも,そういう例は少なくありません.また,少し前のDOSマシンを現在までお使いの企業もあります.Windows 95や98は走らないですからリプレースすることになるのですが,それもMetaFrameで活用することが可能です.
――さまざまなパソコンが混在している企業もありますね.
 そういった異機種コンピューティング環境には,MetaFrameはぴったりですね.いずれにしても,お客様が導入を決められる理由としては,いくつかの要因が合わさっているのが普通です.それらの問題に対するソリューションとしてMetaFrameがあるということです.
――お聞きしていると何にでも向くシステムのようですが,逆に不得意の分野はありますか?
 MetaFrameは,ビジネスアプリケーションのプラットフォームです.CADやグラフィックス,音楽制作などの目的には,あまり向いていないかもしれませんね.
■ユーザーの規模とサーバーの能力
――MetaFrameを導入するユーザーの規模はどのくらいですか?
 小さい方ではサーバー1台にクライアントが20台程度でしょう.大きなところでは,サーバー1,000台,クライアント6,000台といった規模まであります.MetaFrameには,スモールビジネスバージョンといって,同時5アクセスまでのライセンスの製品がありますが,同時に5クライアントがアクセスするというと,台数にしたら20台程度のクライアントの規模になるでしょう.この製品は好評ですね.
――サーバーの能力とクライアントの数については何か基準がありますか.
 そのあたりは,使用するアプリケーションやその使い方で違ってくるので,一概には言えませんが,例えば,4CPUのSMPのサーバーで100クライアント程度までは処理できるという話も聞きます.1接続に対して15MB程度のメモリが必要になりますから,その分を確保していただく必要はありますが.いずれにしても,MetaFrameは,サーバーの能力が不足すれば,サーバー自体を増設することで拡張できます.当面必要とする規模からスタートして,順次拡大していくという導入のスタイルも多いですね.
■日本での販売について
――日本での販売体制と売上予測を教えてください.
 私どもでは直販はしません.3社のディストリビュータを通してリセラーで販売する経路と,主に大手ハードメーカーがシステムインテグレータとして販売していく経路があります.売上としては,来年度40億円程度を見込んでいます.
――日本語版の価格はいくらですか?
 日本語版が,米ドルで5,795ドル(15同時アクセスライセンス)という価格は決まっています.日本円換算の価格は,現在検討中です*.
――ありがとうございました.
*:その後の発表によると,MetaFrame(日本語版)v1.0基本パック(MetaFrameサーバー本体+15同時ユーザーライセンス付き)の製品価格は985,000円