専用端末WBT各社の戦略 後藤 志磨子
 1998年8月上旬の時点で,日本国内にて専用端末であるWBT(Windows-based Terminal)の出荷を表明しているのは,3社となります.ここで,それぞれの製品と各社の戦略を見てみましょう.

 

 

●NCD社

ThinSTAR

販売目標(1999年):30,000台

図5-1.jpg (11868 バイト)

名称:ThinSTAR 2000
サイズ:244(H)×45(W)×276(D)mm
重量:1.2kg
CPU:100MHz
メインメモリ:8MB(32MBまで拡張可能)
フラッシュROM:8MB
ネットワークインターフェース:10Base-T
インターフェース:シリアルポート,パラレルポート
対応プロトコル:RDP,ICA3,その他(オプション)
価格:オープン価格(日本国内)
   US$649〜674


 「ThinSTAR」は,1997年11月米国ラスベガスで開催されたComdex/Fall,および本年4月のComdex Japanにおいて,マイクロソフトのWTSの発表に併せ,マイクロソフトブースに出品されていました.
 NCDは,1988年の設立以来,シンクライアントのハードウェアメーカーとしてのビジネス実績を持ち,日本でもX-Windowの端末メーカーとして知られています.以前よりXプロトコル(X-Windowにアクセスするためのプロトコル)を組み込んだ,X端末「Explora」シリーズを開発・販売しており,「ThinSTAR」にも,オプションでXプロトコルが組み込めるようになっているとのことです.
 『弊社は各業界のリーダー会社との提携(Citrix,Microsoft, Intel,IBM)とともに,最新のテクノロジを取り込み,TCOの削減に役立つより良い製品を手がけていきます.他社との差別化としては,管理・運用のための機能をWBT内およびサーバー上で提供しています.具体的には,「ThinSTAR Management Suite」をサーバーにインストールすることにより,自動的にWBTのフラッシュメモリの内容を書き換えることができ,ネットワークを介してWBTのステータス情報の入手,リセットなどが行えるようになります.
 想定システムとしては,弊社が10年にわたるシンクライアントの普及活動で得たエンタープライズ内のデスクトップマーケット,およびダム端末,特定用途向けの端末のマーケットをターゲットにしています』
(NCD日本支社 奥村氏)
 同社はXプロトコルをMetaFrameに追加する「WinCenter for MetaFrame」というアドオンソフトウェアも開発・販売しています.WTSサーバーにMetaFrameとWinCenterをアドオンすることにより,Xプロトコルが組み込まれているクライアント(X端末・UNIXワークステーション)からも,アクセスが可能となります.

●(株)高岳製作所

WiNT

          販売目標: 初年度    15,000台
                        1999年度   100,000台

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名称:WiNT(ウィント)
サイズ:200(H)×35(W)×173(D)mm
CPU:サイリックス MediaGXm MMX対応 200MHz
メインメモリ:16MB(SDRAM) (16MB固定)
フラッシュROM:8MB
ネットワークインターフェース:10Base-T
インターフェース:シリアルポート,パラレルポート,オーディオ出力(ステレオミニジャック,モノラルスピーカ内蔵)
対応プロトコル:RDP(ICAは近日中に対応予定)
価格:98,000円(モニター,ICAプロトコルは含まない)


 「WiNT(ウィント)」は,日本語キーボードドライバを標準添付し,高速CPU搭載によるWBT上での高速描画を実現することにより,他社との差別化を図っています.また,国内メーカーならではの顧客への各種カスタマイズ(サポートプロトコル,アプリケーションポーティング,筐体の改造,コネクタの追加など)の相談にも応じるとのことです.
 「WBTであっても,搭載しているCPUの動作クロックやグラフィックチップにより,メーカーによって描画時間の差が生じてきます.また,グラフィックドライバのチューンアップなどにも依存します.その意味でも,弊社のWBTは,自信を持ってお勧めできます」(高岳製作所 システム事業部 岸氏)
 「WiNT」の具体的な想定用途としては,次のようなものを考えているとのことです.

◆企業,官公庁で大規模に導入されているPCの置き換え
◆金融,航空,ホテルなどの特化した業務アプリケーション端末の置き換え
◆SIベンダーとの協調販売
◆教育関連マーケットでのWindows教育用端末
◆PCメーカーへのOEM販売

 高岳製作所のシステム事業部は,1990年よりUNIXシステムにおけるX端末「X MiNT」の独自開発・製造・販売を行っています.
 また,自社開発とは別に,NCDのX端末についても1995年よりOEM契約を締結しており,「Explora」シリーズの販売は現在でも行っています.また,前述の「WinCenter」の販売も行うとのことです.

●ネクストネット(株)

WinTerm

  販売目標(1999年):20,000台       

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名称:3315SE
サイズ:226(H)×60(W)×174(D)mm
質量:5.5kg
ネットワークインターフェース:10Base-T
インターフェース:シリアルポート×2,パラレルポート,
  VGA用ビデオ出力,PCMCIA(TypeU),オーディオ
  入出力,モデム(オプション)
対応プロトコル:RDP,ICAほか
価格:98,000円

●ネクストネット(株)

Cessna

販売目標(1999年):
Cessna/View(本体およびイメージ図参照) 15,000台
Cessna/Scan(ハンディスキャナー型) 8,000台
Cessna/Panel(タッチパネル型) 1,500台
Cessna/Board(組み込みボード型) 2,000枚         

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 ネクストネットは,Wyse Technology社の日本ビジネスパートナーとして「WinTerm」シリーズの販売,および自社開発の「Cessna」シリーズ の開発・販売を行います.
 ネクストネットは,産業向けの専業端末機器メーカーとして,それぞれの業種業態に特化した製品のラインナップを持っているのが特徴です.流通向け端末,物流向け端末,FA(Factory Automation)向け端末,営業支援端末など企業内で想定されるあらゆる端末機器を,機能を特化した形でそろえています.
 「WinTerm」シリーズの具体的な想定用途としては,次のようなものを考えているとのことです.

 

◆SME(Small Multimedia Enter -prise) システム(企業内の情報検索端末)
◆伝票入力システム
◆会員情報や個人情報のシステム(データ持ち出しを防ぐ)

 同社の「Cessna」シリーズについては,SS無線LAN グラフィックターミナル「Cessna/View」のリリースが1999年3月に予定されています.従来流通業小売店舗では,事務所内で商品,売場分析をしていた業務や過去の膨大なPOS データ,TVコマーシャル情報が,実際の売場の商品棚の前で見ることができます.新たな店舗情報端末としての活躍を想定しています.
 『端末機は「1人に1台」作業現場に大量配備される特徴があります.無線LANとマルチユーザーOSのWindowsの出現により,ダウンロードおよびバッチ処理のないオンラインリアルタイムシステムが実現します.さらにソフトウェアのアップグレードもサーバーのみで済み,TCO削減の決め手になります.
 また,端末機は画面とキー情報だけを処理すればいいので,廉価な大量配置型のものを製造することができます.当社は,早くから無線LAN技術とサーバー技術に着目し,それらを「端末運用に適応させる」ことに特化していますので,サプライチェーンのさまざまなニーズを知っており,それに基づいて,1歩先を行く端末機を提供します』(ネクストネット 浅沼氏)