第1章 波形と電圧との関係

 オシロスコープは電圧の変化をブラウン管に波形として描き観測するための測定器です。まず、電気信号としての直流と交流の違い、次に波形について代表的なものをここで説明しています。

■直流電圧と交流電圧

 直流といえば乾電池があります。電流が+電極から負荷を通って−電極へ向けて流れ、図のように時間の経過と共に電圧は少しずつ下がっていきます。この直流電圧はテスターや直流電圧計で簡単に測れます。

 一方、交流は図のように電流の流れる方向が交互に入れ替わり、身近では家庭で使用される商用電源100V(50 Hz/60 Hz)がそれにあたります。

 通常、テスターや交流電圧計で100 Vと測っていますが、実は瞬間瞬間で電圧が変わるこの交流電圧をエネルギー的に等価な直流電圧に置き換え、その電圧値を実効値と定義し、その値を読みとっています。

■代表的な波形

 波形は通常ランダムに変化していますが、ここでは測定時に基準となる正弦波やノコギリ波、方形波、パルス波を説明しています。

■正弦波

 最も一般的で、しかも他の波形との比較などにおいて基準となるベーシックな波形です。電圧としての単位は実効値で、図のように、電圧が最大になる点を最大値といい、実効値との間に以下の関係があります。

「最大値」=「実効値」×1.414

 実は、通常100 V(実効値)と言われている交流電圧は、波形的に見れば最大値が約141Vの交流であることがわかります。

■ノコギリ波

 鋸の歯に似た形で三角波の一種ですがオシロスコープでは輝点を左右に移動させる掃引用の信号として使われます。

■方形波

 四角な形の波形で高調波成分が多く周波数応答などの測定に用いられています。

■パルス波

 間欠的に発生する信号で、デジタル回路ではお馴染みの波形です。

■交流電圧計の限界

 交流電圧計は正弦波の実効値で目盛ってあり、正弦波であればそのまま目盛から数値を読み取れば実効値が測れます。

 しかし、正弦波以外はこの限りではありません。交流電圧計の指針は、測定している交流電圧をエネルギー的に平均化した電圧として振れ、その量的な大小はわかっても、示している目盛の数値に信憑性はありません。

 しかも、機構的なパーツで構成されている交流電圧計では、その構造上、常にその電圧値が高速で変化している高周波の瞬間の値を測ることは不可能です。

 交流電圧が時間の経過と共に変化していく様子を目に見えるようにしない限り正しい測定結果を得ることができません。そこで交流電圧計に代わって登場したのがオシロスコープなのです。


Copyright 2000 田中 新治

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