第1章 JSPのしくみ(その1)

1.2.1 スクリプティング

 JSPでは,HTML上でJavaなどのプログラミング言語が利用できます(現在,JSPでサポートしている言語はJavaだけです).スクリプティングには,オブジェクトを生成,操作するものとして,(1)宣言,(2)スクリプトレット,(3)式,の三つの要素があります.宣言は,すべての他のスクリプティング要素で利用できるスクリプト言語コンストラクタを宣言するために使います.スクリプトレットは,あるリクエストに応答して実行するアクションを記述するために使います.は,スクリプト言語で評価される式です.結果は,文字列に変換され,出力ストリーム(HTMLファイル)に挿入されます.

1.2.2 タグの拡張

 タグを拡張することによって新しいアクションを追加できます.JSPページ内で利用可能な独自機能をアクションの集合としてカプセル化したものをタグライブラリと呼びます.このタグライブラリで提供されるタグハンドラ(独自のアクションを実現するオブジェクト)とJSPページ内のタグとの対応関係は,タグライブラリ記述ファイルに記述します.taglibディレクティブを用いてタグライブラリをインポートすることによって,taglibディレクティブで指定した接頭辞を使って独自のタグが利用できるようになります(詳細は「4章 ディレクティブ」を参照).

1.2.3 ディレクティブとアクション

 ディレクティブは,JSPページを出力する際の指示をJSPコンテナへ通知するメッセージです.ディレクティブの属性で指定した指示は,JSPページの変換時に,JSPページ実装クラスのソースコードへ埋め込まれます.ディレクティブは,<%@ ディレクティブ…%>形式の構文を用います.

 ディレクティブが,JSPページが受け取る特定のリクエストに依存しない情報を提供するのに対して,アクションは,JSPページが受け取る特定のリクエストに依存します.JSPはコンパイラやトランスレータを使って実装されると,アクションが以降のリクエストを処理する間,ディレクティブはコンパイル/変換のための情報を提供します.アクションは,いくつかのオブジェクトを作成することがあり,スクリプティング固有の変数を通してスクリプティング要素で利用できます.アクションは,以下のXML要素の構文,すなわち開始タグ,ボディ,終了タグという構文を用います.なお,JSPは,タグ名,有効な属性と意味を記述している要素型を持ちます.タグ名によってその型を参照します.

<タグ名 attr1="属性値 value" ...>

ボディ

</タグ名>

 

または空のタグ

<タグ名 attr1="属性値 value" .../>

 JSPには,以下の利点があります.

(1)コンポーネントベースの開発の促進

 JavaBeans,Enterprise JavaBeansなどのコンポーネント,さらにはタグの拡張機能(1.2.2参照)による独自タグによって,コンポーネントの再使用を促進できます 

(2)コンテンツの分離

 コンテンツを動的に変更される部分と,静的に表示する部分とに分離できます.つまり,ロジックと表示が分離できるということです.これは,たんにスクリプティングが可能なだけでなく,保守しやすくコードをまとめることができるということです.たとえば,ロジックの開発をプログラマが,表示部分の開発をデザイナが行うという分業が可能になり,技術的な問題とセンスの問題を別々に解決できるようになります.

(3)Write Once, Run Anywhere (一度書いて,どこでも実行)

 Javaファミリの一員であるため,プラットフォーム非依存です.つまり,いろいろなプラットフォーム上でJSPページを書くことができ,いろいろなWebサーバやアプリケーションサーバで実行でき,Javaに対応したWebブラウザからアクセスできます.ただし,これはJava同様にあらゆるプラットフォームではなく,あくまでもJavaが動作する環境という前提です.


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今野 睦/飯塚 富雄/杉野 博史/渡辺 康隆/佐藤 章

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