パワーMOSFETは並列接続が容易である(2) パワー・トランジスタの並列接続 VBE のばらつきはパワーMOSFETのVGS のばらつきに対して少ないのですが,図7に示すようにVCE(sat)は温度上昇に対して負の温度特性(IC ≦10A)を示します.したがって電流のアンバランスが生じると,任意の素子に電流つまり熱が集中してしまいます.
また,電流アンバランスが生じて接合温度Tjが上がると,VBE は負の温度係数をもつためVBE が小さくなります(図8).もしベース電流用のバイアス電源電圧が低いと,このVBE の減少がベース電流の増大を招き,さらにコレクタ電流が増加して電流集中が起きることがあります.
パワーMOSFETは逆方向にもドレイン電流を流すことができる パワーMOSFETは,構造上ソースからドレインに向かって(ドレイン側にカソード)寄生ダイオードがありますが,ゲートを基準に考えるとドレインとソースは構造が対照的です. ソースを基準にゲートに正バイアスを加えれば,ドレインの電源電圧VDD が正であっても負であってもチャネルが開かれるため,両方向とも等しいドレイン−ソース間抵抗値が得られます.図9にパワーMOSFETの逆方向のVDS−ID特性を示します.このようにパワーMOSFETのドレイン−ソース間は順方向だけでなく逆方向にも使えます.逆方向に電流が流れるルートには二つあります.一つは寄生ダイオード,もう一つはドレイン−ソース間のチャネルです.
パワーMOSFETの寄生ダイオードを利用した応用例 たとえばフル・ブリッジ出力のモータ駆動回路があります.ただしモータの制御方法によっては寄生ダイオードに高速性が求められます.そのときは高速ダイオード内蔵のパワーMOSFETを選びます. ドレイン−ソース間の逆特性を利用した応用例 たとえば同期整流方式のDC−DCコンバータがあります. パワー・トランジスタも構造的にはベースを基準にコレクタとエミッタが対照的です.しかしベースとエミッタ間,ベースとコレクタ間のhFE や耐圧などが対照ではありません.たとえば,逆方向のhFE は0.1〜3とたいへん小さい値です.また,逆方向のVCEO はVEBO と等しく約5V程度しかありません.したがってパワー・トランジスタは多くの場合,逆方向には使うことができません. Copyright 2000 トランジスタ技術編集部 編 |
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