本章では,制御用コンピュータの位置付け,制御の具体例などをビギナ向けに解説します.すでにZ80などを使いこなしている方は,本章を読み飛ばして第2章から読んでください. なお,本書ではCPU(Central Processing Unit),MPU(Micro Processing Unit)とコンピュータを次のように使い分けています.
(1) CPU
(2) MPU
(3) コンピュータ
(4) マイクロコンピュータ 組み込み型制御用コンピュータの位置付け 現代人は,驚くほどの数のコンピュータと同居生活しています. 朝の目覚まし時計から始まり,テレビ受像器のリモコン,炊飯器や掃除機など,コンピュータの組み込まれていない家電品はありません.車に乗ってもコンピュータ制御,パチンコ台もコンピュータ,パソコンを使えばもちろんコンピュータです. このように,コンピュータはありとあらゆるものに使われていますが,使用目的によって少し扱いが変わってきます. 例えば,コンピュータを組み込んだパソコンはやはりコンピュータですが,コンピュータを組み込んだパチンコ台はコンピュータではなくパチンコ台です. このコンピュータと呼ばれないコンピュータが,今回,本書で紹介する組み込み型制御用コンピュータです.生産数も,このコンピュータと呼ばれないコンピュータが大多数です. 図1-1に,使用目的別にマイクロコンピュータを分類したものを示します.この図は分類を説明するためのもので,メーカも型式も一部のものしか掲載していません.
また,パフォーマンスもMIPS値順に分類しているだけで実際は命令系も処理バス幅も異なるので単純な比較はできません.しかし,この図から同じマイクロコンピュータでもパフォーマンスと価格に大きな差があり,製品コストおよび開発コストを考慮した選択の必要性は理解してもらえると思います. 本書で紹介するコンピュータは,制御用CISCチップのTLCS-900/HとTLCS-900/H2です. このCPUは,ザイログ社製Z80との上位互換性を考慮して設計した?東芝のオリジナルCPUです. パフォーマンスは,国産制御用CISCチップの最上位に位置するものをもっており,Z80との互換使用で比較すれば,あり余るパワーが実感できます. マイクロコンピュータのしくみ Z80など,ほかのCPUからTLCS-900への移行を考えて本書を手にしている方であれば「こんな話をいまさら」と思うことでしょうが,やはりコンピュータの話はこのあたりから始めたいと思います. コンピュータとは,メモリ内にある命令(プログラム)を読んで,それを実行する機械です. 図1-2で説明するもっとも基本的なプログラムの実行は,
(1) フェッチ・サイクル
(2) デコード・サイクル
(3) 実行サイクル の手順で行われます.
命令によっては,(2)と(3)の間にメモリからデータを読み出す処理(データ・リード・サイクル)が追加されることもあります.またEI,DI,HALTなどの制御命令は(1)と(2)で終了します. このように,メモリからプログラムを読み出し,それを実行するシステムがコンピュータです. Copyright 2000 武下 博彦 |
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