EDA TechnoFair'99 レポート



(7) 世界最速の国産EDAツールは1億2,000万円 (1月29日)

 セイコーインスツルメンツのスイート(招待客だけが入れるエリア)では,「世界最速」と銘打たれた論理エミュレータ「Reale(レアル)」が展示された.30分刻みで見学者が訪れるほどの盛況だったという.

 Realeはアスキー・ブイ・エムが開発し,セイコーインスツルメンツが販売する論理エミュレータである.10M〜50MHzのシステム・クロックで動作するという.スイートでは,カメラで取り込んだ映像をリアルタイムに画像処理するデモンストレーションを行っていた.高速化のため,この論理エミュレータはバンヤン・ツリー(Banyan-tree)と呼ぶアーキテクチャを採っている.これは大規模PLDの間を結ぶパスの遅延時間がつねに一定になる接続方式である.ASIC換算で最大100万ゲート以上の回路を実現できるという.

 Realeは「世界最速」というだけあって,価格も半端ではない.1台が1億2,000万円である(消費税だけで600万円!).これは国産のEDAツールの値段としては,おそらく最高額だろう.もちろん,既存の論理エミュレータと比較すると,納得できない価格ではない.また,Realeが技術的に興味深い製品であることも確かだ.しかし,今回のEDA TechnoFairの来場者の落ち込みを考えると,この価格ではビジネス的に苦しい滑り出しになるような気がするのだが…(ただし,欧米でも販売するというのであれば,話は別).

 さて,今回,Realeは展示会場には設置されず,スイートでのみのデモンストレーションとなった.これは,機密情報の漏洩を警戒してのことであるという.弊誌が,写真撮影を申し出たところ,「外観のみならOK,内部のボード類はダメ」ということだった.

 しかし,Realeと同じバンヤン・ツリー接続方式を採るアスキー製の論理エミュレータが,少なくとも2回,一般公開されていると筆者は記憶している.まず,1996年8月のPLD関連の展示会(おそらく,第4回FPGA/PLD Design Conference & Exhibit)でアスキーは「1920K」と呼ぶ論理エミュレータを展示した.動作周波数は最大10MHz,ゲート規模は最大64万だった.さらに1997年1月のEDA TechnoFairでは,「ALE-Fast」と呼ぶ機種を展示している.動作周波数は最大35MHz,ゲート規模は140万ゲートである(これでも十分に世界最速だった).

 今回のEDA TechnoFairで,突然,秘密主義に転じたのは,論理エミュレータ最大手であるQuickturn Design Systems社の買収騒ぎや,Quickturn社とMentor Graphics社の一連の特許係争などを考慮したため,と推測しているのだが…(あるいは,EDA業界でのビジネスの経験の長いセイコーインスツルメンツが代理店としてついたから,ガードがかたくなった?).

 なお,Realeは現在,2台稼働しているという.





・余談 その1
 Realeのスイートが盛況だった,というのは本当のようだ.筆者は最終日の開場時間が終わった直後(つまり,撤収の時間に),撮影のためにスイートに入れてもらったのだが,そのような時間になっても,何人かの国内の設計自動化研究の長老がたが見学に来ていた.それにしても,RealeがEDAの研究畑からではなく,アスキー・ブイ・エムのような設計現場から出てきたことは,少し皮肉な感じがした.

・余談 その2
 アスキー・ブイ・エムは,アスキーの傘下にある企業で,x86互換プロセッサ,画像処理LSI,PCMCIAのインターフェース・チップを開発・販売している.そう,x86互換チップを開発していたあのブイ・エム・テクノロジーである(4004の嶋正利氏が設立した会社).ただしマイクロプロセッサの開発部隊は,今はセイコーエプソンに移っている.

・余談 その3
 Quickturn社が日本での流通チャネルを直販のみに絞る前は,セイコーインスツルメンツ(当時はセイコー電子工業)がQuickturn製品の国内販売代理店だった.




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