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表紙

情報系SOHOのすすめ

はじめに

 私は5年前,39歳のときに技術コンサルタントとして独立開業をはたしました.私と妻だけで元祖?独立系“SOHO(ソーホー)”をスタートしたのです.
 サラリーマンをやめ,企業の外から技術者とおつきあいするようになってはじめて“見えて”きたことがあります.それは新しい技術の修得もさることながら,社員ひとりひとりの“独立性”というものが,いま強く求められているということでした.
 ここ数年,確かに社会は変わりました.よりどころとしていた会社から切り捨てられるという不安も現実のものとなりました.このままではいけないと,会社に対して“自立”できる自分をめざすサラリーマンも増えています.
 むかしのように会社で先輩が手とリ足とり教えてくれるという時代は終わりました.斬新なアイディアは,合議制からは決して生まれないでしょう.ひとりひとりが“自分の個性をよく知り”,“自分を活かし”,“ガテンがいく仕事”ができたら,どんなにかすばらしいことでしょう.

   マルチメディア,オープン・システム,インターネットと,ここ数年のコンピュータ技術のダイナミックな変化は,プロでさえも追いつくのに精いっぱいといわれています.SE・プログラマはこのままで大丈夫なのか? これからのエンジニアに求められるものは何なのか? 専門家でさえも,いま大きな変革を迫られています.
  SEやプログラマといった情報系の仕事は個人の技量によるところが大きいので,自分のアイデアを思う存分発揮できる,数少ない職種のひとつです.私自身もSEとして10年以上,さまざまなシステムの設計にたずさわってきました.そして経験を積み,システムの分析や技術コンサルティングの機会が増えるにつれて,いつしか独立開業したいと思うようになりました.

   オープン・システムが定着しつつあるいま,企業や公官庁,学校でさえもコンピュータ・ネットワークに明るい人が求められています.また専門外の人も,身の回りのネットワークを世話しなければならない時代になってきました.おりからのマルチメディアやオープン・システムの急激なニーズも,私の独立にとって大きな追い風になりました.

 本書は,私が行ってきた情報系の仕事を主な題材にした「体験的SOHO入門」です.
 まとめるにあたっては,大きく2つの目的を考えました.1つは,独立開業に迷っている方々のために,私自身の体験から得たノウハウを知ってもらい,夢実現の手がかりとしてもらうことです.またもう1つは,不透明な時代にあっても,しっかりと“自立”できる自分をめざすサラリーマンの方々に,その具体的な処方箋を見つけてもらうことです.

 SOHOの職場は都会のオフィスビルとは限りません.私は自宅を事務所として使っていますし,客先にパソコンを持ちこめば,携帯電話でいつでも事務所とパイプがつながります.ネットワーク・インフラを活用することなしに情報系SOHOは成り立ちません.まずはこういったネットワークを駆使したSOHOのテレワーク環境を見ていきます(第1章).
 あたりまえのことですが,独立すると何でも自分ひとりで判断しなければなりません.このためSOHOとしての私の時間割もけっこう詰まっていますが,日々の情報インプットは欠かせません(第2章).私のSOHOの仕事ぶりをご紹介して,「元祖SOHOへの道」へとご案内します(第3章).
 情報系にかぎらず,SOHOにはコンピュータネットワーク技術を十分活用することが求められます.身のまわりに拡がるネットワーク(第4章)を知り,何が変わり(第5章)何が変わらないのか(第6章)をしっかりつかめば,いたずらにあわてることはありません.
 いよいよ開業となると,自分の事務所に思い通りのLANを敷き(第7章),SOHOのヒト・モノ・カネをきちんとマネジメントすることにより(第8章),アイディア勝負のビジネスがさらに大きく展開できます.
 私のようなちっぽけなSOHOは,この時代の大きな変革に翻弄されながら生きて行かざるを得ません.目まぐるしく変化するビジネス・トレンドを正しく読み(第9章),レベルアップとスキルアップを続ければ(第10章),われわれSOHOにとってこんな楽しい時代はまたとないでしょう.

 私の父は45歳で独立開業しましたが,彼が事務所を開いたときの設備費は,コピー機ひとつをとっても当時大きな負担だったそうです.私が父よりも若くして独立できたのは,パソコンなどの設備が安価になったことも要因のひとつです.またネットワーク技術の大衆化はテレワークを現実のものとし,家庭に居ながらにして仕事ができる究極のSOHOも,もはや夢ではなくなりました.
 福沢諭吉の『学問のす丶め』(1873)に,「独立とは,自分にて自分の身を支配し,他に依りすがる心なきを言う...」とあります.
 これからはほとんどの社員がSOHO化する企業も現れるでしょう.大きな変革の世に生きるわれわれには,企業人でさえも「他人に依らず自ら物事の理非を弁別して処理を誤ることなき者」(同),つまり“知的独立者”であることが求められています.

 21世紀に向け,最もクリエイティブなワークスタイルである“SOHO”.
本書は,新しい時代の基幹産業を支える,すべての“知的独立者”にささげる『SOHOのす丶め』です. 

1997年(独立開業5周年に)

小暮技術士事務所 所長 小暮裕明(技術士・情報工学部門)   


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