Last Update 2004/04/14
創造するSE
IT時代を勝ち抜くSE活動の提案

上級SE教育研究会 編著
B6判 144ページ
定価1,650円(税込)
JAN9784789820097
2000年9月1日発行
[絶版2004.4.15] 創造するSE
大変恐縮ですが,こちらの商品は品切れ絶版となりました.

 本書の筆者らは,SEに求められる基盤能力を育成するために産学共同で始められた「上級SE教育研究会」のメンバーです.日頃から開発現場でSEの仕事ぶりに密着し,ともに悩み,助言し,成果を見続けてきた百戦錬磨の技術者たちでもあります.
 本書ではその筆者陣が持つ「SEとは創造する専門職である」という共通認識のもと,現実のSEの姿をあらゆる側面から考察し,このIT時代にあるべきSE像を明らかにしていきます.そして開発チームとしてどのように創造的な活動をしていくのか,事例を交えながら解説します.
 ソフトウェア・エンジニアが目標とする上級SE,そしてIT時代に圧倒的に不足する上級SE,これを志向している現場の方や指導的役割を担う方々には必読の書と言えるでしょう.


書評:『創造するSE』を推薦します

目次

第1章 SEと創造

第2章 提案・開発するSEに求められる人材像

第3章 創造的システム創りとチーム

第4章 創造的なチームづくり

第5章 開発各フェーズの創造的なSE活動

第6章 SEを取り巻く環境の変化とその対応

Appendix 基礎データ


書評 『創造するSE』を推薦します

清水光久(NTT東日本・文京支店長)

 SEを目指す人が,今後どんな専門知識を持って,どのような考え方で,どんな方向に歩んで行けぱ良いのかについて,現状だけでなく市場動向,技術動向を踏まえ近い将来のSEの有るべき姿まで含めて,かなり広範に渡って良く述べられており,SEを目指すものだけではなく,今現在SEとしての業務を淡々とこなしている技術者に向けた,一種の指導書としてみても良いのではないかと思います(実際にシステムを創って来た方達だからこそ言えるのであろう,実践向きの考え方を述べた文面が随所に見られ,特にこれからSEとして従事する技術者にとって指針になる本であろう).
 コラムは,長年SEとして活動してきた私も,思わずはっとするようなことが記述されており,とても勉強になった部分や,「うんうん,そうだ,ほんとうにそのとおりである!」と,思わずうなずいてしまう部分もあり,大変興味深く読ませていただきました.
 システム開発技術(ソフト/ハード),デジタル伝送技術,データ通信技術,ネットワーク系技術等々それぞれの専門技術は別の書で勉強する必要があるので,この本の読者の対象者は,前述の基礎技術知識,それぞれの分野におけるいずれかの専門技術知識,及びIT関連知識について,「ある程度以上のレベルを既得している技術者」であることが,本書の意図するところを本当に理解する上で望ましいと思います.また,一般的に技術屋が陥りがちな技術論だけにとらわれることなく,システムエンジニアでありかつセールスエンジニアでもあることの必要性について説かれてあることにも大いに共感を覚えました.
 実践面においてのノウハウと,そして,腕も上がりやがてSEのマネジメントをするようになったときに必要な,プロジェクトマネジメントのノウハウについても,丁ねいに説明されてあります.プロジェクトマネジャがSEに求める事柄,期待する事柄を,担当のSEが理解しているかいないかが,そのプロジェクトの業務品質に大きく影響するので,プロジェクトマネジャの気持ちを(何をしたいのかを)SEに知ってもらいたいと言う意味でも大切なことが述べられていたと思います.
 人材の育成面においては,どういう人材を育成するべきか,どういう方向で育てるべきかについて,実践から得られたノウハウが随所に見られ,後輩を育てるときの留意点などもよく理解することができます.
 これはSEという業務の分野を,どの範囲まで拡大解釈するか,というと問題になると思うのですが,本書では主にメインフレームの構築に関して主に述べられているように感じます.イントラネット,エクストラネット,インターネット等,オープン・コンピュータ・ネットワークを活用したソリューションビジネスを中心に考えたとき,ERP,SCM,CTI,SFA,CRMなど,今後のアプリケーション・プログラムの考え方や,コンサルテーション時の訴求点について,もう少し深く触れておいてもよいのではないかと感じました.特に情報通信システムが企業改革(業務改革)に及ぽす影響の範囲がどこまでなのか(SE及びSI業務を実施する上で,お客様コンサルテーションの対象とする範囲はどこまでと考えるのか--例えば,業務分析の際,経営管理に関わる分野までSE自身が手をつけるべきか否か等々)については,別分野の専門知識の必要性,手戻り,リスク,Customer Satisfaction等を考慮したとき様々な考え方があると思うので,理想と現実を勘案し,ある程度の解が見えれば,世の悩み多きSEの中で救われる方々も多く存在するのではないかなどと考えました.
 ノウハウの共有によって,更にSE全体の技術力,営業力等を向上させていくことについて,私の,数少ない経験ではありますが,今までの出来事や各種事象を勘案して考えてみると,確かにそのとおりだなと,つくづく思いました.まさに,ナレッジコミュニケーションの環境向上,活性化がSEの質の向上に大きく影響するのだと思います.私も若いSEを育てるときには,必ずそれをやって来たことにより,技術継承しにくいとされる,先輩のマル秘テクニック(隠れたノウハウ)が継承され,比較的早い時期に,「腕の立つSE」が育成されていたように思います.
 3章(創造的システム創りとチーム)については,実際に構築した経験があるからこそ,力強く言えるのだと思います.とてもインパクトがあり,説得力があります.
 お客様の要求仕様を聞き出す段階で,システムに求められる要求が,時代とともに変化してきていることを述べたイラストや,「SEは,どのような時代においても,周囲に付いていくのではなくて,絶えず先駆者にならなくては,次世代のSEを育てることは出来ない」(私の持論でもあるが)という精神面のところも記述しておいて貰いたいなあと思って読んでいきましたら,しっかりと6章に書かれてありました.
 私見では,今後のSEと呼ばれる技術者は,SIの機能も同時に持つ必要があると思うのです.最近は,SEと呼ばれる技術者に要求される範囲がとても拡大してきているように思います(あえてSEとSIに分けるのではなく).ネットワーク設計,システム設計は当然として,前述の各種パッケージソフトを作成するのもSE.各種パッケージをカスタマイズするのもSE.更には構築後の,ネットワークを含めたシステムの,システム管理,ネットワーク管理,アドミニストレータ的な役割を受け持つのもSEの範ちゅうになりつつあるように感じられます.
 お客様の要求を実現するために新たにシステムを創るまでのプロセスにおいて,コンサルティング,ネットワークを含めたシステム提案,設計,構築,そして設備保守(ハード/ソフト),運用管理,最後にネットワーク・セキュリティにかかわるところ,などなど,現状ではかなり広範にわたった分野をこのように呼んでいるようです(整理の仕方かもしれませんが……).その点についても,6章で述べられていましたので,安心しました.
 p.110に記述されている(1)〜(10)までの項目こついて,技術動向,市場動向等を踏まえて,どのように有るべきか,どのように考えればよいのかについて,今後を担うSEが,基本的に知っておかなければならない事項だと思いますので,もう少し詳細が述べられていても良いのかなあと感じました.
 冒頭で述べさせていただいたように,かなりのインパクトのある内容で,私自身にとって勉強になった一冊です.