トラ技カルチャー
データ通信技術セミナー
ニュー・メディア時代のネットワーク技術を学ぶ
宮崎 誠一 著
A5判 212ページ
定価1,762円(税込)
JAN9784789830201
1988年10月10日発行
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通信の自由化によってデータ通信は急速な広がりを見せましたが,実際の広域通信システムを運用するにはプロトコルに関する広範な知識が必要になります.本書ではネットワーク通信においておよそ必要とされる各種通信プロトコルから異機種間でのネットワーク技術までを平易に解説しています.
目次
I.プロローグ
この本の導入部として,データ通信のあらましを紹介します.
1.ブロード通信とローカル通信
データ通信は,いろいろな立場から分類でき,まずブロード通信とローカル通信とに分けられます.ブロードは,NTTの電話回線などを利用した広域の通信です. ローカルは,事業所内やビルの中などを対象とした通信です.ブロードとローカルの違いは,距離や面積などではなく,ユーザから見た性格の違いです.
2.利用できる回線の概要
ブロードの通信では,ユーザが自分で自由に通信線路を引くことはできません.NTTなどが提供する回線の中から,自分に適した回線を選定し使用します.この章では,データ通信に利用できるブロードの回線の種類を,簡単に紹介します.
もっとも手軽で簡単に利用できるのは電話回線です.しかし,電話回線はもともと電話用のシステムですから,データ通信に利用する場合は各種の制約があります.たとえば,電話回線では高速の伝送はできません.また,大量の通信に対しては割高になります.データ通信専用の交換回線としてはディジタル交換網があります.また以上のほかに各種の回線があります.
II.中のしくみを探る
ブロードの通信の中のしくみが複雑です.中身については,ブラック・ボックスとして取り扱えば何も知らなくても利用できます.しかし,中のしくみを知ることも興味深いものです.
3.電話と電話回線のしくみ
データ通信に利用されるブロードの回線の中で最も多く使用されているのは,電話回線です.データ通信では電話機は使用しませんが,電話回線のしくみを理解するには,まず電話機を知る必要があります.ここでは,電話機自体と交換機や中継回路のしくみを説明します.
電話はアナログの音声信号を伝えます.したがって電話網の中では,アナログの信号を取り扱います.しかし,最近はすべての分野でアナログ信号をディジタル化して取り扱う傾向があります.電話網も,システムの内部ではアナログの音声信号をディジタル化して,取り扱う方式が多くなっています.
3.1 電話のしくみ
3.2 交換のしくみ
3.3 電話回線のしくみと音声信号のディジタル化
3.4 中継のしくみ
4.代表的な回線
データ通信に利用できるブロードの回線の中で代表的な回線について説明します.さらに電話網については,第3章で説明している以外のことについて触れます.
電話網以外で多く使用されているものにディジタル交換網があります.電話網では能力が不足し,または料金が嵩み過ぎる場合に使用します.
ディジタル交換網は,回線交換網とパケット交換網との2種類があります.回線交換網は電話の交換と同様な方式です.これに対してパケット交換網は,データ通信 に固有の交換方式で多くの特徴を持っています.特に長距離のオンラインでき電話回線利用に比べて,大幅に安くなります.
現在の通信サービスは,電話網とデータ通信網とは別々のシステムです.しかし,将来は電話網は完全にディジタル化され,データ通信と統合された総合サービスであるISDNに切り換ります.これは昭和63年4月からサービスが開始されました.
4.1 電話網
4.2 ディジタル交換網
4.3 国際回線
4.4 ISDN
III.インターフェース
システムを使いこなすための第1はインターフェースを理解することです.この編 はデータ通信とのインターフェースについて説明します.
5.RS-232CとRS-422
電話網をデータ通信に利用するにはモデムが必要です.モデムと,モデムを利用して通信を行う機器とのインターフェース規格がRS-232Cです.
RS-232Cはまた,モデムとのインターフェースとしてだけだはなく,広く汎用インターフェースとしても利用されていますが,この場合は一般に規格以外の使い方が必要となります.
一方,ディジタル通信網においてはモデムの代わりに,DSU(ディジタル・サー ビス・ユニット)を使用します.DSUとのインターフェースや高速の伝送には,RS-422/423が用いられます
5.1 RS-232C
5.2 高速用インターフェース
6.モデムとNCU
長距離のデータ通信を行うためには伝送固有の技術を必要とし,最近はディジタル技術を利用することが多くなっています.アナログ技術である変調も用いられていま す.片復調を行う機器がモデムです.
電話網を利用する場合は,電話回線はアナログ信号しか通しませんので,モデムを使用する必要があります.これが音声帯域用モデムです.
モデムと同じ用途に使われるものに音響カプラがあります.これは次第に使われなく傾向にありますが,ポータブル機器には使用されています.
電話網を利用する場合は,まずダイヤルして相手とつなぎます.モデムと組み合わせて使用するダイヤル装置がNCUです.音声帯域モデムは一般に交換網に使用されるので,NCUを内蔵した製品が多くなっています.電話機とモデムが一体化したモデム内蔵電話機も製品化されています.
6.1 モデム
6.2 音響カプラ
6.3 NCU(ネットワーク・コントロール・ユニット)
6.4 モデム内蔵形多機能電話機
IV.通信プロトコル
データ通信を行うには,定められた手順や約束事を守ることが必要です.この手順,約束事を通信プロトコル,伝送プロトコル,または略して単にプロトコル(手順)と言います.これはデータ通信にとって極めて重要な概念です.
7.簡易プロトコル
複雑なバッチリしたプロトコルが必要です.しかし用途によっては,簡単なプロトコルでも十分に間に合います.
このうち無手順は,最も簡単なプロトコルで,パソコン通信などに多く使用されています.しかし伝送速度が速くなると,文字が化けるなどの問題が生じます.最近は伝送速度が速くなる傾向にあり,文字化けなどの問題を解決した簡単なプロトコルを使用するようになってきました.
7.1 通信プロトコルとは
7.2 無手順
7.3 簡単な手順
8.ベーシック手順
バッチリとしたプロトコルの代表例がベーシック手順です.しかし,これも概要を規定した規格なので,用途や目的に応じて細部プロトコルが異なった多くのプロトコルが存在します.ベーシック手順のIBM版がバイシンク(BSC)です.
ベーシック手順は通信の基本部分のプロトコルで,上位の応用的なプロトコルを含んでいません.応用的なプロトコルは,応用分野によって異なります.全銀協プロトコルは銀行取り引き業務の,JCA手順は商品取り引き業務の,応用分野における上位プロトコルの代表的例です.
8.1 ベーシック手順の概要
8.2 バイシンク
8.3 上位のプロトコル
9.ハイ・レベル手順
ベーシック手順は,現在多く使用されているすぐれたプロトコルです.しかし若干の欠点があり,よりすぐれたプロトコルがハイ・レベル手順です.これはベーシック手順に比べて信頼性がより高く,かつ自由度も高い効率の良いプロトコルです.ハイ・レベル手順の国際規格がHDLCです.またハイ・レベル手順のIBMはハイ・レベル手順が次第に多くなるものと予想されます.
9.1 HDLC
9.2 SDLC
V.異機種ネットワークとパソコン通信
この第V編以降はネットワーク通信を取り扱います.データ通信においては,互いのプロトコルが等しくないと通信できません.ところが,実際には極めて多くのプロトコルが存在します.コンピュータの種類が異なると一般にプロトコルが異なります.しかし,プロトコルが異なる異機種間通信が強く要求されています.
10.異機種ネットワークとプロトコル変換
プロトコルが互いに異なる機種でデータ通信を行う場合の手段として,プロトコル変換があります.ちょうど日本語と英語を相互に翻訳するのと同じことです.
VAN(付加価値通信)は単純な通信だけでなく,それに付加価値を付けた通信です.つまり,一般に付加価値を付けるサービスを行い,それに対する対価を受ける商売をVANと呼んでいます.付加価値の内容としては通信の範囲内での付加価値と,通信の範囲外のデータ処理サービスとがあります.通信の範囲内での付加価値の代表例がプロトコル変換です.
10.1 異機種ネットワークの問題点
10.2 プロトコル変換
10.3 プロトコル変換の構造
10.4 プロトコルの階層化
10.5 プロトコル変換とVAN
11.オープン・システム
ネットワーク通信は,オープン・システムとクローズ・システムとに分けられています.クローズ・システムはネットワークに参加するものを制限しますが,オープン・システムは参加したい者,誰もが参加できるシステムです.ただし,オープン/ク ローズは白か黒かではなく各種の灰色があります.
ブロード通信はできるだけ多くの者に参加してほしいわけで,この意味ではオープン・システムです.しかし,ブロードがすべての真の意味のオープン・システムなのではありません.
11.1 オープン・システムとクローズ・システム
11.2 オープン・システムへの対応
12.パソコン通信
パソコン通信は,特定のユーザのコンピュータ・システムとしても用いられます.しかし,より汎用的な用途として郵便やFAX(ファクシミリ)などと並ぶ通信媒体として用いられます.この場合,高度のオープン性が要求されます.この立場から,オープン・システムの代表例としてのパソコン通信を取り上げます.具体的には,電子メールやBBS(電子掲示板)などに利用されます.
12.1 パソコン通信の用途
12.2 電子メールとBBS
12.3 パソコンのOS
12.4 通信ソフトとパソコンOS
VI.OSIとその実例
オープン・システムを実現する手段として,プロトコル変換が使用されます.しかし単なるプロトコル変換では不十分です.真のオープン・システムを構築する手段としてOSIがあります.
13.OSI(開放型システム相互間接続)
オープン・システムを実現する方法としては,極めて汎用性の高い統一プロトコルを採用する方法があります.この目的を達成するためのプロトコルがOSIです.
OSIは高い汎用性を実現するために,非常に大規模で複雑なプロトコルとなっています.具体的には7つの層からなる階層化されたプロトコルです.したがって単一の規模ではカバーされず,多数の規格からなる規格体系です.OSIについては,ごく概要だけを示します.
13.1 概要
13.2 プロトコル構造
13.3 プロトコルの実行
13.4 階層の概要
14.郵政省推奨方式パソコン・ネットワーク
新しい汎用媒体としてパソコン・ネットワークがありますが,これは当然高いオープン性が要求されます.OSIに従ったパソコン・ネットワーク用の下位レベルのプロトコル規格が,郵政省推奨方式パソコン・ネットワーク(JUST PC)です.
OSIの具体例として,OSIの理解を深める意味も兼ねて解説します.
なお,JUST PCは,テレマティック・サービスと呼ばれる総合的プロトコル の一環として作られています.
14.1 概要
14.2 テレマティック・サービス
14.3 システム構成
14.4 アダプタとインターフェース
14.5 アダプタ間接続処理
14.6 セッション層接続
14.7 データのやり取りと切断
14.8 上位のプロトコル
字句/構文解析の原理