第6章

OCNエコノミーへの接続

内容

 この章では、OCNエコノミーを利用したインターネット常時接続に挑戦してみようと思います。話は、NTサーバの構築からはちょっと離れ、MN128-SOHOというルータと格闘することになります。

OCNエコノミーはお得?

 インターネットに接続する方法は、大きく分けて、ダイアルアップIP接続専用線接続の2種類に分けられます。ダイアルアップIP接続は、インターネットを利用したいときに電話をかけて接続する方法です。通常、個人ユーザがインターネットを利用するときに使う、お手軽で割のいい方法と言えるでしょう。

 SOHO環境のような複数のスタッフがいる場合はどうでしょう。ひとりずつ、プロバイダと契約してインターネットアカウントを入手するのも考えられますが、折角のSOHO LANがあるのなら是非とも活かしたいものです。使い勝手を考えると、やはりSOHO環境とインターネットをシームレスに利用できるようにしたいですね。

 SOHOのインターネット接続は、ダイアルアップ接続では物足りないし、そうかと言って専用線常時接続ではコストがかさみ過ぎるしと、頭が痛いところです。そんなジレンマ的状況に華々しくデビューしたのが、NTT が提供する OCN エコノミーサービスです。

OCN エコノミーサービスの特徴

 OCN エコノミーサービスは、NTTがその計画を発表したときから、大変な衝撃を業界やインターネットユーザに与えました。NTTがインターネットビジネスに本格参入するだけでなく、唖然とするほどの低価格サービスを予定してからです。その骨組みは次の通りです。

 思い出してみれば、当時(1996年頃)の中小プロバイダの大半は、月数十万の維持費をかけて、128Kbpsでバックボーンに接続しているのが現状でした。それがこの低価格で専用接続できてしまうわけですから、OCN エコノミーはプロバイダつぶし、と物議をかもしてもしょうがなかったのです。しかし、OCNエコノミーには意外な落とし穴もあったのです。

価格が、 Best Effort

 OCNの計画が発表された頃、あるネットワーク管理者の集会で、講演者の方が、これは秘密ですが、と前置きしながら、OCN エコノミーの内情を話してくれる機会がありました。その話によると、NTT 128kbps 3万円台だけ先行させてしまって、実際の採算の見積もりが甘かったらしい。そこで、交換局内で128kbps ラインを24本まとめて、128kbpsの線でバックボーンに接続するという変な方法を用いることになった。だから、128kbpsの線で接続されていても、128kbpsの通信速度は保証されないのですよと。

 今となっては周知の事実ですが、当時はほとんど知られていなかったので、何だ詐欺じゃんという雰囲気が会場に広がったのを覚えています。多くの人が、OCNエコノミーに期待していたためでしょう。私もその時はがっかりしました。

 しかし、OCNエコノミーほどの低価格で常時接続を実現するサービスは以前には考えられなかったわけです。非常に高価で高速な専用線と個人向けのダイアルアップ接続の間に、低価格だけど通信速度は保証されないOCN エコノミータイプの専用線接続が登場したことは、それだけ選択肢が広がったことになります。多少スループットに目をつむれば、OCNは非常に魅力的なサービスだと言えるでしょう。実際に1年近く利用してみましたが、ダイヤルアップ接続に比べると、その使いやすさは素晴らしいの一言です。SOHO 環境には、OCNエコノミーはぴったりと言えます。

 ちなみに、そもそもインターネットとは通信品質が保証される環境ではありません。OCNエコノミーだけ特別に変わっているわけではないのです。例えば、ちょっと前なら、日本中の大学を結んだSINETの海外への接続も、回線が細すぎるのか、ルータの性能が悪いのか、パケットが落ちまくってひどいものでした。それでも、インターネットの通信環境は時間と共に徐々に改善されていくので、そのうち不満を感じなく利用できるようになっていきます。

OCN エコノミーに適した利用

 OCN エコノミーの転送レートは、運が悪いと6kpps(128kbps/24)程度にまで落ちる可能性があります。もっとも、こんなに気の滅入る値に陥ることはほとんどないようです。当たりハズレがありますが、モデムを利用したダイアルアップ接続(22.8kbps)程度は出るようです。それでも、使い方に工夫を凝らすべきでしょう。

1. メールを中心に

 通信にリアルタイム性を必要としない電子メールの利用は全くイライラすることがないはずです。(常時、メールの送受信ができるだけでもオフィス環境としては大きなメリットがあるでしょう。)ただし、やっぱりあまり大規模なメーリングリストは立ち上げない方が良さそうです。

2. Webは工夫を凝らして

 WebサーバやFTPサーバを立ち上げて、そのサイトが人気になると、自分の日常の利用もそれだけ遅くなることを覚悟しなければなりません。本格的なインターネットサイトを構築するためには、外部にレンタルサーバを借りるなど、工夫が必要かと思われます。また、逆にLAN内にキャッシュサーバ(プロキシーサーバ)を立ち上げ、できるだけ無駄なダウンロードを省けるように工夫したいところです。

OCNに関する情報を得るには?

OCNエコノミーについて詳しい情報を得たい場合は、OCNのホームページを参考にしてください。特に、次のサービス早見表にはどの地域が接続可能なのか調べられるようになっています。

 http://www.ocn.ne.jp/

 http://www.ocn.ad.jp/

 http://www.ocn.ne.jp/ocn/in/eco/numbers-1.html OCNエコノミーサービス早見表)

 OCNエコノミー利用者の生の声や情報を得たい場合は、次のOCN研究会のホームページもお勧めです。

 http://village.infoweb.or.jp/~fwga3175/shinya/ocn.html

 また日本テレコムでは、ODNエコノミーというやはり低価格の常時接続サービスを提供しています。比較検討してみるのもいいかも知れません。

 http://www.odn.ad.jp/

OCNで実際に接続するまで

 OCNエコノミーを利用してインターネット接続するまでを説明しておきましょう。長くて2ヶ月、普通なら1ヶ月程度で、夢のインターネット常時接続が実現できます。

ネットワーク計画とOCN接続

 最初にちゃんとやらなければならないのが、ネットワーク計画です。これは、一体何を始めにやるべきかわかりにくいものです。

配線について

 まず、配線からみていきましょう。OCNエコノミーを利用したインターネット接続は、基本的に次のように配線することになります。

 前章までに、あらかじめSOHO LAN を構築してきたので、HUBより右側はすでに存在していることになります。残りは、DSU ISDN ルータを購入することになります。

 DSU(Digital Service Unit)は、屋内配線(2芯メタル・ケーブル)と4芯メタルケーブルをそれぞれ接続するコネクタを持ち、デジタル通信に必要な同期、速度の変換、過電圧保護などの役割を果たします。

 DSUの入手方法は、NTTからレンタルや買い上げ、他社製品を別途に購入などがあるようですが、DSU 内蔵ルータを買ってしまうのが便利だと思います。(今回、紹介するMN128-SOHODSU内蔵タイプを使用。)ただし、DSU内臓タイプのルータは、DSUが壊れた場合、ルータ本体も買い替えることになります。

 ルータは、文字どおりパケットをルーティング(経路制御)する装置です。OCNネットワークとSOHO LANの間に入って、ネットワークの交通整理をしているおまわりさんと理解しておけばいいと思います。( ルータは、2つ以上のネットワークの接点になり、正しくパケットを中継するだけ。) 最近は、パケットフィルタリングの機能も持って、パケットのポート番号ごとに通信をカットすることができるルータが一般的です。

 もちろん、OCNエコノミーでも TA に接続したPCをデュアルポートゲートウェイにして、専用ルータ代わりに使っても構いません。でも、それくらいなら最初から、ISDN ルータを導入してしまった方が楽なのです。OCNエコノミーの回線には、アナログ電話もFAXも接続しませんから.. (実際、ISDN ルータもデジタル信号を変換しているのだから、TAの一種。)

IPアドレスはどうするの?

 ネットワーク配線まではお決まりのパターンができています。次は、IPアドレスの割り当てを考えてみましょう。

 ゼロからOCNエコノミーを用いてインターネットに接続されたLAN環境を構築する場合、NTTから割り当てられたIPアドレスをそのまま使うことができます。ところが、本書のようにあらかじめプライベートアドレスを使ってLAN環境を構築した後、インターネット接続をしようとすると、ちょっと問題が発生します。

 例えば、TRY! PC誌の連載では、最初からあまり考えず、192.168.111/24 ゾーンのプライベートアドレスを利用してきました。しかし、プライベートIPをそのまま使い続けては、ルータで物理的にインターネット接続されたとしても、正しく通信できません。そのため、ちょっと工夫が必要になります。

方法 1 -- IPアドレスの付け替え

 OCNエコノミーでは、816個のグローバルIPアドレスが割り当てられます。一番楽な方法は、このIPアドレスを素直に使うことになります。幸い、SOHO LAN に接続されているPCの数はそんなに多くないので、慎重に作業すれば、半日もかからずIPの付け替えは終わるでしょう。

 


以下省略.出版されている内容とは少し異なります.Copyright1998 Kuramitsu Kimio


「WindowsNTによる手作りSOHO」に戻る