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XBee ZB

ZigBee

1

節 

ZigBee

の歴史とその特長を知っておこう

 ZigBeeは,ZigBeeアライアンスが定めた無線通信
方式の規格です.1998年にIntel社やIBM社などが
設立したHomeRFワーキング・グループによって策
定されたHomeRF Lite規格が基となっています.当
時,Ericsson社もBluetooth SIGを設立してBluetooth
の規格化を進めており,さらに無線LANについても
CCK方式と呼ばれる22Mbpsの規格化が進められて
いた時代です.規格化競争の中,HomeRFと
Bluetooth,無線LANの3方式の比較が盛んでした.
 このような規格のデファクト化の競争の中で,
HomeRFから派生し,ZigBeeの原型であるHomeRF 
Liteの検討が始まりました.ZigBee方式では,パソ
コンをターゲットとした無線LANや,携帯電話を
ターゲットとしたBluetoothとの競争を避け,通信速
度を控える一方,表5-1に示すようなIoT

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デバイス

としての特長を目標とすることになりました.
 一戸建ての住宅内くらいをカバーする通信可能距離
や,65535台もの最大接続可能端末数,乾電池で2年
間は動作する超省電力,さらにチップ単価$2といっ
た特長から,家庭内のすべてのモノをワイヤレス接続
するようなアプリケーションを想定しました.家電,
充電池や乾電池で動作する小型機器だけでなく,電気
を使わなかったような物品など幅広い機器によるネッ
トワーク構築が考えられ,またZigBee用のインター
ネット・ゲートウェイを経由し,クラウド上で機器の
情報を共有したり,機器を制御したりすることが可能
になりました.
 実用的な応用例としては,家電機器に組み込んで

ホーム・オートメーション・システムを実現したり,
センサや警報器などによるホーム・セキュリティ・シ
ステムを構築したりすることが得意な規格です.
 ZigBee規格は,2004年12月にZigBee 2004(Ver. 
1.0)仕様が策定され,2006年12月にZigBee 2006,
そして2007年10月に通信の信頼性や効率性,秘匿性
などを向上させたZigBee PRO 2007が策定されまし
た.さらにエナジー・ハーベスト(環境発電)とよばれ
る自然エネルギーや,ドアノブの回転による発電など
の極めて小さな消費電力で動作するGreen Power対
応のZigBee PRO 2012や,インターネット標準の規
格化団体IETFが策定した6LoWPANを用いた
ZigBee IPも規格化されています.
 ZigBeeが注目され始めたのは,ホーム・オートメー
ション機能を応用した家庭内の機器のネットワーク技
術の実用化が始まったからです.また,2008年6月
には,ZigBee PRO 2007上に,ZigBee Smart Energy
プロファイルと呼ばれるアプリケーションが定義さ
れ,電力メータを中心にしたZigBeeネットワークも
展開されました.
 一方,前章に記載したとおり,Bluetooth SIG が規
格化したBLEが,ZigBeeと似たような用途を展開し
ようとしています.従来のBluetoothとの互換性はな
く,現実としてはあまり使われていないものの,デュ
アル・モードとして通常のBluetooth用ICに搭載さ
れ,搭載品の普及が進みつつあります.かつての
HomeRFの時代から,再びZigBeeの脅威となりまし
た.

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 IoT(Internet of Things):インターネットで情報共有したり制御することが可能な機器.

仕様 

特 長

通信可能距離 

約40m(Digi International社 XBee ZBの屋内通信距離) 

最大端末数

65535台

低消費電力 

乾電池2本で最大2年間の動作(ZigBee SIG目標値) 

低コスト 

LSI単価で$2(ZigBee SIG目標値)

表5-1 ZigBee方式の概要