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TimeQuestによるタイミング解析の基本概念 365

● はじめに

 論理設計においては,その動作周波数や入出力遅延
時間などのタイミング設計が不可欠です.アルテラ社
のFPGA開発ツールQuartus Primeには,設計した
回路のタイミング解析ツールとしてTimeQuest 
Timing Analyzer(以下,TimeQuestと略す)が組み
込まれており,簡単にその強力な機能を使うことがで
きるようになっています.本書のこれまでの章でも
TimeQuestの使い方をいくつか紹介してきました.
 本章ではあらためてTimeQuestによるタイミング解
析の基本と,タイミング制約SDC(Synopsys Design 
Constraint)の書き方を詳しく解説します.本章を理
解することで,安定に動作するロバストな(堅牢な)論
理回路を設計できるようになるでしょう.さらに,
SDCの書き方は業界標準であり,他のFPGAやSoC
設計にも適用できる内容がほとんどです.ここで学ん
でおいても損はしません.

TimeQuestによるタイミング解析

の基本概念

● TimeQuestによるタイミング解析は静的かつ

網羅的

 TimeQuestは,設計対象の下記のタイミングを網
羅的に解析します.

 レジスタ(D-F/F)とレジスタ(D-F/F)の間
 入力信号経路
 出力信号経路
 非同期リセット信号経路

 このためにTimeQuestは,データ必要時刻(Data 
Required Time),データ到達時刻(Data Arrival 
Time),クロック到達時刻(Clock Arrival Time)を
使って,設計対象のタイミング違反や性能を,静的

(static)に解析します.静的解析という意味は,論理

シミュレーションのように信号を動的(dynamic)に動
作させずに,回路の接続構造(トポロジー)だけを見て
解析するということです.動的解析よりも網羅的な解
析ができる特長があります.静的なタイミング解析の
ことをSTA(Static Timing Analysis)と呼びます.
 このタイミング解析には,FPGA内のロジック・
アレイ,メモリ,配線などの物理的な回路要素の遅延
情報をもったライブラリを,内部的に参照します.こ
うしたタイミング解析用のライブラリは,FPGAベ
ンダやSoCベンダ,あるいは半導体製造のファウン
ダリから提供されています.

●TimeQuest解析の用語

 TimeQuest解析で使われる用語が,いくつか定義
されています.表1にその内容をまとめておきます.

用 語

定義内容

和文

英文

ノード

node

タイミング・ネットリストの基本単位.ポート,ピン,レジスタを表す

セル

cell

LUT(Look Up Table),レジスタ,DSP(Digital Signal Processor),メモリ・ブロック,入出力要素など

ピン

pin

セルの入力または出力

ネット

net

ピン間の結線

ポート

port

モジュールの最上位階層の入力または出力(例:デバイスの端子)

クロック

clock

設計対象の内部または外部に置かれるクロック・ドメイン(領域)を表す抽象オブジェクト

経路

path

信号が伝搬する経路

送信エッジ

launch edgeレジスタ出力を変化させるクロック・エッジ

受信エッジ

latch edge

レジスタ入力をラッチするクロック・エッジ

表1 TimeQuest解析の用語

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タイミング解析の基礎を学び,

SDCファイルを自在に書けるようになろう

TimeQuestTimingAnalyzer

によるタイミング解析とSDCファイル