フジワラヒロタツの現場検証(62)

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雑用三昧
 今日もまた,朝から一日会議です.見積もりをこなし,伝票を書きます.あ,売り上げ報告も書かなくちゃ.

 ある程度の年齢になると,会社員というモノはだいたい中間管理職というものにさせられます.ポストやらそのほかの事情で中間管理職にならないとしても,ジョブリーダーのような役割を任せられ,すると途端にさまざまな書類仕事が増えていきます.

 さらには,書類仕事だけではなく,関係各部門との調整としての会議,メール,協力会社との折衝,チームの進捗管理など,ありとあらゆる管理業務,補助業務が増えていきます.

 これらはだいたい一語で表現されますね.いわく「雑用」というわけです.

 いったい,製品を開発するためにはなんと多くの「雑用」が必要になることでしょう!  若い奴らは開発にだけ集中できていいなあと思いながら,雑用の合間に,本来の開発業務をこなさなければなりません.

 この「雑用」というやつ,よく考えてみると,その大部分はさまざまな相手とのさまざまな「コミュニケーション」ではないでしょうか.

 見積りをしたり,請求書を書いたりするのも,お客さんとのコミュニケーションですし,進捗が遅れに遅れるおもな原因は,社内コミュニケーションがうまくとれず,適切な対策を怠って火が大きくなってしまうためです.

 仕事を進めるには,社内外とあらゆる調整が必要になってしまうというわけであり,それが「雑用」と呼ばれるわけですね.

 ところが筆者などは,どうもコミュニケーションがおっくうで仕方がありません.筆者ばかりではなく,大抵のソフト屋さんは,コミュニケーションがへただったり,苦手な人が多いのではないでしょうか.

 計算機相手だと,OKかNGか,実行すればすぐ結果が出るわけですが,人間相手だとすぐにOK/NGが決まる場合はあまりなく,何回も同じような話を繰り返してネゴシエーションをしながら結論に向かう場合がほとんどでしょう.

 相手の判断能力や判断基準,知識スキームにもばらつきがあることを承知しつつ,相手が望むことはなにかということを考え,適切な対応をするには,相当想像力を働かせなければなりますまい.

 「雑用」がコミュニケーションの問題ならば,効率が悪いことも仕方がないと納得できそうですね.ただでさえ通信手順はエラー処理が膨大になるものですから,相手が人間だったり,その集合体である「組織」であるのなら,なおさらです.

 タイムアウトしたり,IPでいうところのパケットの生存時間(TTL)が各部署のたらい回しで0になって消えてしまったり,ノイズをひろってしまったり……というわけです.

 さて,「雑用」の非効率性を納得できましたから,心安らかに開発に励むとしましょう.どおりで開発は,コミュニケーションが一段落ついた,残業時間と休出にしか集中できないわけですよね.

藤原弘達 (株)JFP デバイスドライバエンジニア,漫画家

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