フジワラヒロタツの現場検証(66)

目次 戻る 

歳を重ねるということ
 パタパタと仕事に追われているうちに夏も過ぎ,おや秋の気配と思っているうちに,もう初冬を思わせる寒さに身を震わせていたりします.筆者の会社は古いビルに入っていて,空調は真夏と真冬にしか効かないので,会社に居ながら季節感を感じることが容易という利点があります.たぶん,もう少しちゃんとしたオフィスビルに入ってらっしゃる方には,季節の移ろいはなかなか感じにくいものではないでしょうか.大きいビルは,人工都市みたいなものですし.

 もっとも,古くても新しくてもどちらも蛍光灯の下,ずっと人工光で暮らしていれば同じかもしれませんね.筆者も季節感を感じやすいビルなどといいつつ,ディスプレイに光が映り込まないように朝からブラインドをおろして仕事をしています.

 まあ,季節や昼夜を考えずに働いていても,自ずと歳はとるものですね.かつて読んだノンフィクションに「コンピュータ新人類の研究」という本があって,「こりゃまるで俺のことが書いてある!」などと感じた,いわゆる第1期マイコン少年の筆者も,とうとう不惑の年になってしまいました.

 で,年をとって感じるのは,若い頃にくらべて,ずいぶん自分がいいかげんになったという感慨です.
 良い意味でも悪い意味でもアバウトになってきて,以前は胃が痛くなったような仕事でも,それほど気に病まずにこなせるようになりました.もともと筆者はあまり緻密なアタマをもってはいないと自覚しているのですが,その割に神経質なところがあって,それがこのプログラマという商売にとってはうまく働いているようでした.けれども神経質というのは両刃の刃で,スケジュールの遅れや,自分ではどうしようもない不確定要因に,つい再帰呼び出しのように考えてしまい,すぐスタックオーバフローならぬ,潰瘍を悪くしてしまうのでした.

 しかし! ふと気づくといつの間にやら,考えてもどうしようもないことを考えないようになり,それにともない,潰瘍もいつの間にか,それほど痛まなくなりました.

 さらに,年をとると現場の技術にも疎くなります.まだまだ枯れてはいないつもりですが,すべての分野をカバーするがむしゃらな気力はありませんから,若いモノに任せます.ところがそれが暗礁に乗り上げ,連日の残業々々です.サア,以前なら一緒になってコードを追ったりしたものですが,さっぱりわからない分野のこと,「がんばって」と声をかけることくらいしかできません.

 ハハア,これだな,と思いました.自分はその分野で役に立たないと割り切っていますから,とても気が楽なのです.いままで自分が苦しんでいるときに声をかけてくれた管理職の上司の気持ちってこうだったんですね.

 何にでも首を突っ込んでパタパタしなくなってきたのは,歳を重ねて賢くなったというより,体力がなくなって根気が続かなくなったからなのかもしれませんが,なかなかいいことなのかもしれません.









藤原弘達 (株)JFP デバイスドライバエンジニア,漫画家

Copyright 2003 藤原弘達


Copyright 1997-2017 CQ Publishing Co.,Ltd.