フジワラヒロタツの現場検証(70)

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OSぼやき放談
 技術者にとって,おさえておかねばならない新しい技術というものは数年に1回は出てくるのではないでしょうか.

 古くはマイクロプロセッサが出てきたとき,筆者など,こんなに面白くて簡単なのに(!?)どうしてみんな慌てて,マイコンを理解できないと取り残されるなどと騒ぐのだろうと思っていました.――しかし,今になってわかります.若い頃は,歳をとってからの苦労などわからないものですね.

 さて,ソフトウェア技術者にとってはOSの移り変わりといううものも,いつになっても気になるものです.

 OSは,その時々の流行というものがあり,そのたびに,不勉強な身にとっては落ち着かない気持ちにさせられます.

 OSによっては,勉強しても主流にならず,仕事に役立たずにそのまま廃れていくモノも多く,勉強する側としてはなかなかリスキーなものです(使われないOSなんてねぇ).

 実際に使うことになってから勉強すれば無駄にはならないのですが,そうなってからでは間に合わないことが多いですし,少なくとも最小限度の部分くらい――そのOSが目的に使えるかどうかなども,OS選定から始まるような仕事では必要になりますから――は知っておかなければならないでしょう(どうも,筆者の考えは,技術的貧乏性というものかもしれません.OSなんてわずかな違いだけで,みんな原理は同じだといって泰然とできる方もいらっしゃいます.しかし筆者はそのわずかの違いでずいぶん痛い目に遭っているので,少なくとも技術職とは名ばかりの管理職になるまではそういわないほうが無難そうですね).

 CP/Mなんてのから始まって,iRMX,OS/2,Windows 3.0,OS-9/68000,BeOS,NeXTSTEP,ITRON,UNIX(BSD),MacOS……ああもう嫌になります.なにより嫌になるのは,新しいOSが必ず新しい概念の理解を要求することです.その新しい概念も,少しはわかりやすく説明してくれればいいのに,われわれ多忙なエンジニアを精神的に痛めつけ,知的に服従させるためにわざわざ難解な回りくどい説明を行っているような気がします.ドライバの階層図なんて,OSのすべてがわかってからならわかるのですが,これから理解するためにはさっぱり役に立ちませんよね.

 OS設計というのは,いわば世界を設計するようなものですから,「権力志向の持ち主がデザインするからこんな文章になるんだ!」などと,自分の理解力を棚に上げて,マニュアルを読みながらぶつぶつと文句をいったりします.

 さて,最近の流行といえば,なんといってもLinuxですね.組み込み分野でもLinuxが俄然話題で,また新しいOSかい,とぶつぶつつぶやきながら,本誌のバックナンバーや解説書を読んでいらっしゃる読者諸賢も多くいらっしゃるのではとご同情いたします.考えてみればOSというのはどれも難物で,OSの枠にわれわれの頭とコードを合わせるように要求します.そういう意味で,Linuxのコード公開というのはやはりありがたいことではあります.ただし,だからといってすぐにコードを眺めて問題を解決できるわけではありませんけれどね.




藤原弘達 (株)JFP エンジニア,漫画家

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