まず,日本で一般的にいう技術者系に多い「オタク」に似た意味をもつ「Nerd」という言葉があります.ようするに,人間と接するよりコンピュータや機械と接するほうが好き,技術的(専門的)な話しかできないといったイメージです.しかし,日本にくらべてシリコンバレーのエンジニアのほうが,エンジニアリング以外にいろいろな趣味をもっていたり,おしゃべりが好きな人が多いように感じます.
理由は,さまざまなところにあるかと思います.まず,アメリカの大学に入って勉強を続けるには,かなりの数の論文を執筆し,また発表を頻繁に行うことになります.たとえエンジニアリングの勉強をしていても,自分の考えを適確に伝えるという能力がアメリカでは重視されるわけです.つまり,たとえ理工系の勉強ができても卒業が可能ということではないのです.
次に,シリコンバレーの企業のほとんどは個人評価なので,自分の成果を上司にしっかりと訴えられることがたいせつです.アメリカのエンジニアはいかなる規模の会社でも,自分でやりたい仕事をはっきりと伝えられるということが肝要なので,さらにコミュニケーション能力が必要になると考えられます.
最後に,「行儀が悪い」について…….また一般的な話になりますが,アメリカ西海岸の文化からいうと,日本で一般的に理解されている「行儀」は堅苦しいとイメージされているように思います.たとえば筆者は,シリコンバレーのエンジニアたちに向けた,日本人とのビジネスでの付き合い方に関する手引書をシリコンバレーの会社の依頼で作ったことがあります.みんながもっとも興味(ほとんど好奇心)をもったのは,?名刺交換の正しいやり方,?上座下座の区別,?商談で食事に行ったときの心得……などでした.はじめはおもしろがって学ぼうとするものの,基本的なところでは「堅苦しい」と感じているのかもしれません.
なので,たとえばシリコンバレーエンジニアと商談で食事に行っても,まわりにおかまいなしに食べ始めたりすることがあるかもしれません.日本人からすると行儀が悪い(気遣いがない)ように見えますが,アメリカ人からすると,お腹が空いているし食べ物が来た順番から冷めないうちに食べていくほうが合理的であると考えるようです.
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