シリコンバレーのスタート・アップでもっとも多いストック・オプションとは,株式上場(株式公開)する前の自社株をある設定された価格で,決められた株数を購入できる権利である.株数は勤務年月によって分割されて配布される.これは,特に決まった期間はないが,多くは4年から5年ぐらいになる.社員に長く残ってもらうためのインセンティブの一つだ.
多くのスタート・アップは,会社のキャッシュ・フローをコントロールするために大幅に給料を低く設定しているところが多い.そのため,ストック・オプションで金銭的なインセンティブを与えるのは当たり前とも考えられる.例を挙げると,株は5年勤めてすべての数量を引き受ける権利が与えられ,初めの12か月後に初めの5分の1が与えられ,その後は1か月ごとに増えて行くシステムが多い.一般的には,株価は入社した前後の会社の評価額で決まる.
実際の例を出して説明するとこうなる.6,000株を一株$0.25で買えるストック・オプションとなると,初めの12か月後には,1,200株行使できる権利を与えられ,その後は1か月ごとに(6,000株−1,200株)÷(4年×12か月)=100株与えられる.5年後満期になると5,000株すべて行使できる権利を引き受けることになる.買う権利を行使するには,6,000株×$0.25=$1,500を会社に支払い,実際の株を買うことになる.最近は株券は発行されず,証券会社の口座を通じてすべての取引が行われる.その後,会社が上場した際,株の額面が$20になっていると,6,000×$20−$1,500=$118,500,約1,000万円を丸儲けしたことになる.
スタート・アップが上場せず,ほかの会社に買収される例も存在する.同業者であるとか,同じ市場で存在する大手企業が買手になるわけだ.株式上場するには,市場関係者を納得させる材料が必要だが,スタート・アップで「研究開発のレベルは高いが,販路がまだ確立されていないケース」などの場合,大手企業に買収されたほうがさまざまな理由で有利な場合がある.この場合,ストック・オプションが買手企業の株に変換されるケースが多い.株を交換するほうが買収する企業のキャッシュ・フローには有利なケースが多いからだ.
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