2003年暮れの国勢調査によるとシリコン・バレーの中心部であるサンタクララ郡の所得調査は,70,240ドルだった.メディアン値で,アメリカの都市で一番だったそうだ.二番目がアンカレッジ,アラスカ州,そして三番目がサンフランシスコだった.ちなみにこのときのアメリカでの平均が43,000ドルである.平均値を取ると,シリコン・バレーが51,859ドル,そして全米平均が32,808ドルという結果になった.それでもやはり突出して稼いでいる人が多いということを表していると思う.2000年ピークの値を入れなくてもきれいに右上がりのカーブとなっている.実際にシリコン・バレーが落ち込んでいるという状況よりも,バブルであまりにも突出しすぎたというイメージが大きい.
突出して所得が多くなると,それなりの苦労が重なる.一般のエンジニア達がストック・オプションを手にすると,それを担保に大きな住宅ローンを組むことができる.これで日本円にすると楽に1億円を越える住宅を買うのだが,これが当たり前のように行われていたのがバブルの時期だった.
しかし,ストック・オプションの税法的な処理は個人レベルでは非常に難しい.まずは,行使する時期のペーパ・ゲインが大幅なAlternative Minimum Tax(AMT)と呼ばれる枠で計算され,税率は30%で高い税率だ.問題は,ペーパ・ゲインなのでまた行使したエンジニアは現金化していない場合が多いことだ.現金化しないでそのまま持っておいて,さらなるゲインを求めようとしたり,会社の規定ですぐ売却できない場合があるからだ.
アメリカの国税局は,とにかく行使した日から計算して,納税を現金で求める.たとえば20億円のペーパ・ゲインだと,6億円近く納めるシナリオになりかねない.これで,自社株が市場で大幅に落ちていたりすると泣きっ面に蜂になる.納税をするために家や車を手離したりするのが当たり前となっていた.これで新婚だとか,子供が生まれたばかりとか,親が病気をした…などでほとんどの財産を失いかけたエンジニアがいる.
上述のような悲惨なケースがすべてでもなく,株などからの資産はうまく流用されているのが現実で,多くはシリコン・バレーの住宅や不動産に投資されていると推測されている.住宅の平均値がサンタクララ郡で615,000ドルとなっており,下がる気配が一向にないからだ.やっぱりシリコン・バレーはお金持ちが集まるようだ.
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