6.帯域制限によるシンボル間干渉(Inter Symbol Interference:ISI)

● オーバサンプリング・ロールオフフィルタ

 次に,ディジタル信号処理によるロールオフフィルタの実現について述べる.一般のシステムでは,シンボルレートfTとサンプルレートfs には,fs fT なる関係がある.この場合,単純に図10のようにシンボルをサンプルレートfsでサンプリングしてロールオフフィルタを通すとアイが開かない.

〔図10〕シンボルレート以上でサンプリングしたロールオフフィルタ

 そこで,図11に示すように零補間,すなわちアップサンプルしてフィルタリングするとアイが開く.これはちょうど,マルチレート信号処理におけるインタポレーションと同じ原理である.このように,インタポレーションを利用して実現するロールオフフィルタを,ディジタル通信の分野では一般にオーバサンプリング・ロールオフフィルタと呼んでいる.

クイズ1.3 オーバサンプリング・ロールオフフィルタ

 図10(a)に示すシンボルのサンプリング方法をとると,同図(b)のようにアイパターンとなることを説明しなさい.また,図11についても同様に説明しなさい.

〔図11〕インタポレータを用いたロールオフフィルタ

● ルートロールオフフィルタ

 通信システムでは,一般的に送信側ばかりでなく,受信側でも雑音除去の目的などのために,フィルタリングを行うことが一般的である.このように,送信・受信ともにフィルタにより帯域制限を行う場合は,それぞれのフィルタの振幅特性Mω)は,

  M (ω)=|H (ω)|1/2 (1.7)

となり,このようなフィルタをルートロールオフフィルタと呼んでいる.

 磁気記録システムなど,再生側にフィルタを有さない場合は,記録時にフルロールオフフィルタを通して帯域制限を行う場合もある.

以降の内容は本誌を参照ください

1. 特集執筆にあたって

-ディジタル信号の帯域制限-

2. データ伝送とディジタル通信システム
システムの概要,バイナリデータとシンボル

3. 帯域制限によるシンボル間干渉(Inter Symbol Interference:ISI)
パルス波形の周波数スペクトル,符号間干渉

4. 帯域制限によるシンボル間干渉(Inter Symbol Interference:ISI
ナイキスト基準とロールオフフィルタ,ナイキスト/ロールオフフィルタの振幅特性

5. 帯域制限によるシンボル間干渉(Inter Symbol Interference:ISI)
コサインロールオフフィルタ,コサインロールオフフィルタのインパルス応答

6. 帯域制限によるシンボル間干渉(Inter Symbol Interference:ISI)
オーバサンプリング・ロールオフフィルタ,ルートロールオフフィルタ


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