-Prologue-
画像処理システムの要素技術

● 産業用組み込みシステムにおける画像処理

 産業用組み込みシステムでは,多くの場所に画像処理機能が実装されています.たとえば,工業用コントローラ,ロボットアーム,不良品選別装置,自動計測・制御……などが挙げられます.ひとくちに画像処理といってもたいへん範囲が広く,さまざまな要素技術から成り立っています.

 画像処理の要素技術を紹介する前に,典型的な画像処理システムの例を図1に示します.画像センサおよびフロントエンドは,今回の特集では触れないので省略します.

〔図1〕典型的な画像処理システムの構成

 画像処理の要素技術を紹介する前に,典型的な画像処理システムの例を図1に示します.画像センサおよびフロントエンドは,今回の特集では触れないので省略します.

 また,画像処理の結果として最終的に何を取り出すのか,それはユーザーが実現しようとするアプリケーションによって大きく変わります.たとえば,たんにカメラが捉えた画像にエフェクトをかけて見てみたいというのであれば,出力はディスプレイということになります.形を抽出してリファレンスと比較することで物体の認識を自動的に行う――たとえばOCRなど――という目的であれば,出力はテキストファイルになります.そして,物体の移動量を画像として捉え,アクチュエータの動作にフィードバックしたいといった制御の目的では,画像処理システムの出力は制御量ということになります.

 さて,画像処理を少々むりやり分類すると,図2に示すような要素技術から構成されます.筆者は,便宜的に「画像処理にかぎらない一般的なコンピュータ技術」,「画像に特化したデータ処理技法」,そして「ユーザーアプリケーション(応用技術)」に分類してみました.

〔図2〕画像処理システムの要素技術

 「一般的なコンピュータ技術」という表現は身も蓋もない(!?)分類ですが,画像処理のように一般的に「データが大きい」とか「処理が重たい」といわれているシステムでは,適切な処理速度を実現するための工夫が必要になります.たとえば,データを転送するバスに何を選ぶのか――こういったことも設計上の重要な選択になります.最近注目される高速転送ができるバスとしてIEEE1394やUSB2.0などがあげられますが,本特集の第6章では,IEEE1394を使った動画像取り込みの例を解説します.

 「画像に特化したデータ処理技法」は,本特集でもっとも強調したい部分です.たとえば,画像処理システムにおいて重要な技術の一つに「画像圧縮」があります.

 いかに高速転送ができるバスを使うとはいえ,転送できるデータ量には限界があります.その限界を越えるような量のデータを送ろうとする場合,さらに高速なバスを採用するというのも一つの方法ですが,それではコストがかかってしまいます.すると,何らかの手段でデータを小さくするしか方法がありません.そのために画像圧縮という技術が注目されるわけです.

 現在,代表的な画像形式として,静止画だけでも圧縮形式,データ形式としてTIFF,GIF,JPEG,PNGなどがあげられます.動画まで範囲を広げると,MPEG-1,MPEG-2,MPEG-4,QuickTime,AVI,MotionJPEGなどがあげられます.それぞれの考え方で圧縮/伸張の方法が実装されていますが,これだけ多くの形式があることからも,画像圧縮がいかに注目されているのか,どれだけ重要な技術なのかがわかります.

 本特集の第1章〜第4章,そして第7章では,画像圧縮関連の技術を解説します.

 最後は「ユーザーアプリケーション」です.図2に示した位置決めや仕分け,文字認識,外観検査などの技術があげられます.本特集の第6章で取り上げている液晶配向膜評価装置の解説は,この分類に入るでしょう.

プロローグ
  ● 産業用組み込みシステムにおける画像処理
  ● 注目されるJPEG2000

第1章 JPEG2000を中心とした画像圧縮技術の新しい流れ

  はじめに
  1. JPEG2000の概要


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