AOpen http://www.aopen.com.tw/
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 新規格VCメモリのサポートや,BXメインボードタイプRなど,ここ1,2年の間に急速に我が国で有名になってきたのがAOpen社です.今回はComputex Taipeiで知り合った日本エイサー(株)の葉さん,赤坂さん,石岡さんの薦めと,台湾AOpen本社のプロダクトマネージメント担当者のクリスさんの薦めもあり,6月中旬にAOpen本社を訪ねました.

 なお,AOpenという会社を皆さんよくご存じだと思いますが,もともとACER社のメインボード部門で,AOpen事業部と呼ばれていました.日本でAOpenという名前は,少なくとも3,4年前には知られていました.まず有名になったのは,(株)アイ・オー・データ機器の関連会社である(株)アイ・オー・ネットが代理店としてAOpen製の製品を扱い始めたからです.

 ただし,AOpenというのはあくまでもブランド名であって,メーカー名ではなかったということです.つまり,ACERのAOpen事業部からAOpenとして独立したのは,およそ2年前のことです.台湾ではAOpenという独立した会社になっています.なお,担当者クリスさんの話では,この2年間での台湾急成長グループの中にAOpen社は数えられているということで,「私たちは成長度No.1だ」というポスターを見せてくれました.AOpenは,PCを長くやっている人からすると比較的なじみのある会社なのですが,AOpenとして独立してからの日本市場へのマーケティングは非常に成功しているのではないかと思います.

 さて,話を戻します.AOpen本社は台北懸汐止にあるACERビルディングの中にあります.この中には,ACERの関連企業が多く入っています.これは汐止に新しくできた工業ビルで,道路を隔てた向かい側のビルにはTekram社などの本社があります.この汐止近辺には,Tekram社のほかDFI社,RISE社,SOLTEK社などがあります.このACERビルは非常に大きく,そして,ビルの最上部にACERと書かれているため,遠くからでもすぐに発見することができます.

 この汐止は,雨が降ると水があふれることで有名です.筆者が訪ねたときは曇り空でしたが,帰りは土砂降りになっていました.台湾の雨は日本のとは異なりスコール的なものが多く,急に降って急に止む,というかたちが多いです.さらに雨の粒が大きいため,体に当たると非常に痛いという印象があります.日本も最近よく土砂降りになりますが,台湾の場合は重たい雨が降ってくるという感じです.

 ACERのビルは高台に建っていますが,この日もAOpen社から次の訪問予定先であるDFI社に向かおうとしたところ(DFIの住所は鎮環河街で,字のごとく川の側であり,ACERビルのある丘からすると低地になる),DFI社自体は大丈夫でしたが,DFI社にまで行く道が膝まで水につかるほどであったためタクシーも行ってくれませんでした.

 さて,AOpen社は,ここ2年で少しずつ変わってきました.クリスさんのお話によると,AOpen社が日本で成功した1つの理由として,日本向けに商品を企画するということを積極的に行った,ということがいえるようです.たとえば,当初アイ・オー・ネット社と取り引きをする場合でも,きっちりとした技術力とサポート力のあるところと取り引きをするというポリシーを貫いたことがいえます.

 たしかに,前号でレポートしたComputex Taipeiを見ていると,いわゆる買い付けをするために日本からやってきている会社の中には技術力があるのかどうか不明で,単にメインボードを200枚くらい購入し,それをスポット的に販売して儲けようというようなところが実際にあるわけです.しかし,AOpen社はそういうところと付き合わないというポリシーを貫いています.

 これはどういうことかというと,日本語でサポートのできる会社,つまり,最低でも日本語マニュアルを作ったりできなければだめなのです.今回の,たとえば新製品「AX6BC ProタイプR Vスペック」などの開発に当たっても,日本人がどういう商品構成を好むのかということについてリサーチした結果を盛り込んでいます.たとえば,オーバークロックができるとか,BIOSでCPU関連の設定をする,といったことを実現することで成功していったのではないかとクリスさんは語ってくれました.

 同社の工場は,本社のある汐止から高速道路で中正国際機場(飛行場)のある方向へ40分ほど行ったところの龍潭にあります.次回は,工場見学レポートもできるでしょう.AOpen社では,オープンアーキテクチャ,オープンマインド,オープンビジネスという標語を掲げ,「オープン」をキーワードとしてビジネスを展開しています.オープンアーキテクチャという言葉から分かるように,AOpen社では互換性を非常に重視した作りをしているということで,R&Dチームの発想はかなり頑固なようです(*2).

 また,メインボード以外にもモデムカードやグラフィックスカードも作っており,そういう意味でオープンマインド,最新の技術を使った製品をお客様に供給するということ,そしてオープンビジネスということでワールドワイドに,そして長いつきあいのできる企業でありたい,ということを主張しているのです.もちろん,工場はISO9002を取得しISO9001も取得する方向です.

 富士通製のDeskPowerに収められているメインボードがACER製です.あるDeskPowerのモデルのメインボード上のジャンパーを1つ切り替えると,起動画面に「ACER」という文字が表示されます(これは,ACERのBIOSを使っているという意味).そして,ACER自体はこの業界の大手であるため,OEMのビジネスも古くから手がけていました.日本のいろいろなメーカー製システムの中にOEMとして組み込まれています.

 ところが,AOpen社にそのことを尋ねると,これはACER社のやっていることでAOpen社がやっていることではない,すなわちAOpen社は今のDeskPowerのようなOEMはしていないということでした.ディテールが基本で,あとはシステムインテグレータのようにパーツを出荷しているというかたちのようです.

 今回は最新の810Lを採用したもの,すなわちATA33でグラフィックス用のキヤッシュRAMを搭載していないメインボードを受け取りました.これは,実際のチップセットの値段から考えても,エンドユーザー価格は通常の100MHz対応版(810DC100など)に比べて数千円も変わるというわけにはいかないため,自作市場には流れない可能性はあります.しかし,コストを重視するシステムインテグレータには多く流れるのではないか,という予想はできます.

1999-9月号


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