ネットで学ぼうインターネット入門

連載 第9回  ドメイン名とDNS


 前回は,数字で表される煩雑なIPアドレスを覚えやすい文字列であるホスト名と対応づける方法について紹介しました.対応関係をhostsというファイルに書いておく方法,このファイルをネットワークで共有するNISという方法,そしてインターネットで使われているDNSという方法が有名です.
 hosts方式は,しくみが単純なため小規模LANには向いていますが,大規模LANになると管理コストが非常にかかります.また,NIS方式はhostsファイルだけではなく,様々な情報をLAN上で共有できて便利ですが,集中管理方式であるため,インターネットのような大規模なネットワークには適用できません.
 今回は,インターネットで用いられているDNSという方法にターゲットを絞ります.DNSで使われるドメイン名という,インターネット上でうまくコンピュータに名前をつける方法,そしてDNSのしくみについて解説します.


 ドメイン名のしくみ
 現在のインターネットプロトコルでは,IPアドレスが32ビットで表されますので,最大40億個のインターフェースを接続することができます.
 しかし,なんらかの取り決めもしないで,40億すべてのインターフェースに異なるホスト名を付けることは不可能でしょう.個人が勝手に好きな文字列を割り当てていけば,必ず同じ名前のホスト名が付けられてしまい,ホスト名からIPアドレスに変換するときに,混乱が生じます.
 そこで,DNSではドメイン名という階層構造を持ったホスト名を付けることになっています.
 ドメイン名は,図1のようにドメイン部とホスト部からなります.図1に示した例では,cqpub.co.jpがドメイン部,wwwがホスト部になります.
 ドメイン名の階層構造は,図2のようにちょうど住所の階層構造と同じしくみになっています.  CQ出版社の住所は,東京都豊島区巣鴨1-14-2ですが,これは東京都豊島区という地区の,巣鴨1-14-2という番地にあることを表しています.これは,図2に示すCQ出版社のWebサーバを例とすると,cqpub.co.jpという地区の,wwwというコンピュータということになります.
 “巣鴨”という地区の名前について考えてみましょう.日本には“巣鴨”という名前の場所がほかにもたくさんあるでしょう.しかし“東京都豊島区”の“巣鴨”という表現をすることで,日本中の“巣鴨”という地区からCQ出版社のある“巣鴨”を指し示すことができます.
 これは,“豊島区”や“東京都”に対しても同じことです.本来は住所の先頭に“日本”や,“地球”といった表現が必要なはずです.でないと,もし火星に東京都があった場合に,火星の東京都と地球の東京都を混乱してしまうからです.しかし,日本にいて“東京都”といえば,“地球の日本の東京都”であることが常識となっているため,通常は省略されていると考えることができます.

〔図1〕ドメイン名のしくみ

〔図1〕ドメイン名のしくみ

〔図2〕住所とドメイン名の階層構造

〔図2〕住所とドメイン名の階層構造

 サブドメイン
 ではもう一度,CQ出版社のWebサーバのドメイン名を見てみましょう.cqpubは,co.jpというドメインの中のドメインです.また,coも同様にjpというドメインの中のドメインです.巣鴨の例でいえば,東京都豊島区巣鴨というように,CQ出版社の場所の範囲を狭めていったように,jpの中のcoの中のcqpubというドメインであると場所の範囲を狭めています.このように,あるドメインの中のドメインを,サブドメインといいます.
 cqpub.co.jpは,co.jpのサブドメインですし,co.jpはjpのサブドメインとなります.また,jpのように最も広い範囲のドメインをトップレベルドメイン(TLD)といいます.
 jpのほかに,comやnetなど,さまざまなトップレベルドメインがあります(コラム参照 →).
 「ドメイン」という単語を日本語に訳すと「領土,領域,分野,勢力範囲」になります.つまりドメイン名はインターネットの“ある範囲”を表しています.そして,その“ある範囲”の中で,さらに細かくどこにいるのかを,サブドメインやホスト部によって指定します.
●トップレベルドメイン
 トップレベルドメインには,ccTLDとgTLDと呼ばれる2種類のTLDがあります.ccTLDは,国や地域名が付けられたトップレベルドメイン名で,jp(日本)やuk(イギリス)などがあります.本来はその地域で使われるトップレベルドメイン名ですが,一般に解放されているものとして,トンガのtoやツバルのtvが有名です.
 一方,gTLDは地域に関係なく世界中で使うことができるトップレベルドメイン名です.それぞれのドメイン名ごとに本来は使いかたが推奨されていますが,現在では自由に使われています.comは営利団体,orgは非営利団体,netはインターネットプロバイダなどがあります.このほかにも,ほとんどアメリカでのみ使われているgov,mil,eduや,最近新設されたbiz,info,proなどがあります.

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