手軽に旧パソコンの速度アップが期待できる

ゲタ不要!!アップグレードCPU
WinChip2 Rev.A-266

吉田 功

WinChipとはどんなCPUか

 Socket5など90〜200MHzのシングルボルテージ用Pentium機のCPUをグレードアップするには,CPU“ゲタ”と呼ばれるCPUソケットのアダプタを使うのが一般的です.しかし,このゲタも5,000円くらいします.最近ではCPU自体が5,000〜20,000円程度と安くなったので,こうしてみるとゲタの値段は安いといえません.また,ゲタを履かせても,遅いマシンはそれなりに速くなるものの,最新のマシンと肩をならべる高速性は期待できません.アップグレードの投資は最低金額でしたいものです.
 そこで,登場するのが,IDT製のWinChipです(写真1).これは,Socket5(シングルボルテージ)対応のCPUでありながら,ちょっとだけ速い266MHz(相当)ですし,MMXや3D Now!にも対応しています.おまけに,CPUの販売価格もCPUゲタとあまり変わらない値段という興味深いCPUなのです.

<写真1>旧Pentiumと差し替えて使用できるIDTのWinChip2 Rev.A-266
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ターゲットマシンと選択

 今回は,いにしえのNEC PC-9821AnというPentium 90MHz搭載のパソコンがターゲットです(写真2).古いパソコンですが,原稿執筆や,テキストメールの読み書き,パソコン通信,簡単なプログラムの制作などは,みなこれで行っています.さすがにWindowsを走らすことはありません(別にCeleron300A・450MHz動作のパソコンをWindows用に使っている).MS-DOS専用機なら,このパワーがあれば困りませんでした.とはいえ,WinChip2はまったくの無改造で搭載できるうえ,少しの投資でグレードアップでき面白そうなので取り替えてみました.
 入手したのは,最高性能が出せる266版です.もちろん,Pentium90MHzと同じ3.3V版を選択しました.PC-9821Anを無改造で使う場合は,210MHzしか出ませんが,市販されているWinChipは,200版と266版だけで210MHzでの動作が保証されるのは266版だけのようです.
 さらに,別のDOS/VマシンでIDT製のCPUがどの程度オーバークロックに耐えるのか評価したかったというのも理由の1つです.

WinChipの種類

 現在,WinChipには3種類あります.最初に登場したWinChip C6,そして,WinChip2,さらに,この5月に発表されたWinChip2 Rev.Aです.すべてSocket5対応のCPUです.C6とWinChip2は200〜240版がラインナップされています.WinChip2からは,AMDのK6-2でおなじみの3D Now!にも対応しています.WinChip2 Rev.Aからは,266版が登場しました.100MHzの外部バスクロック(FSB)に対応したり,クロック倍率の設定数も増えました.製造プロセスも0.25μmになり高速化が見込めます(表1).

<表1>WinChipのラインナップ
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 CPU単体で店頭売りされているC6やWinChip2のラインナップは3.52V版が多く,3.3V版は200版のみです.旧Pentium(P54C)は3.3Vですから,3.52V版では電圧不足です.しかし,最近登場したWinChip2 Rev.Aは,266版も3.3V版があり魅力ある製品になりました.それにクロック倍率のメニューも増えていろいろな倍率で使うことができるようになりました.これは外部バスクロックが100MHzに対応できるようになったためですが,2.66倍や3.33倍と特有の倍率もあり面白いです(表2).

<表2>WinChipの倍率設定
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WinChip2のパフォーマンス

 今回入手した266版は,100×2.33で使うのがデフォルトのようです.つまり実クロックは233MHzということです.実際に限界テストをしても266MHzでは安定動作しませんでした.ただし,263MHz程度まで動作しました.この辺が限界なようです.お勧めできませんが,無理して3.3Vでなく3.52Vにすると僅かに限界が上がる感じです(大差はない).
 製造プロセスが0.25μmのわりにはちょっと根性がないかなあ,といった感想です.WinChip2の266版は,推薦値どおりに外部バスクロックを100MHz,クロック倍率を×2.33で233MHzで使えば,P54Cタイプの266MHz相当ということなのかもしれません.
 表3は,限界テストの結果です.テストしたパソコンはASUSTeK製P/I-P55T2P4というマザーボードを積んだ自作機です.マザーボードを改造してあり,クロック設定を自由に可変できるので,限界測定に使っています.
 ベンチマークプログラムを走らせてみると気になるテスト結果が得られました.普段,AMD K6-2-266を使っているので,それとの比較になりますが,同一クロックでもWinChipのほうが遅いのです.
 表4はHDBENCHでの結果です(筆者のK6-2-266は300MHzでも動いていますから,その差は大きくなる).もっともWinChipはP54Cの対抗馬的なモノであってK6と比べるものではないのかもしれません(表5).

<表4>HDBENCHで比較結果
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NEC PC-9821Anに取り付ける

 PC-9821Anは,外部バスクロックが60MHz,クロック倍率が1.5倍で固定されています.これを変更するにはマザーボードの改造を要します.改造したところで,大して速くなるわけでもありませんし,メインマシンとして使っているので改造して壊れると困ります.そこで,このままの設定で動作させるとどうなるか考えてみました.
 Pentiumにおける1.5倍設定で,WinChip C6なら4倍の240MHzで動作します.しかし,240MHzで3.3Vのタイプは売られていないのでNGです.
 また,WinChip2では1.5倍の倍率が未定義なので不安です.WinChip2 Rev.Aなら表3にあるように3.5倍,つまり210MHz(60×3.5)で動きそうです.
 PC-9821AnのCPUは,ケースの端に付いていてゲタを使うとケースの金具にぶつかってしまい,使いたくても使えない構造です(写真3).しかし,WinChipならCPUを取り替えるだけでOKです(写真4).また,もう1つの期待はCPUの省電力化です.特に,最初から使われていたP54Cは古いタイプで消費電力が多そうです.発熱も凄いようで,付属のCPUファンは購入当初から賑やかな音を立てる強力なものが付いていました.このファンを小型化,または削除して消音化が図れないか,もう1つの課題です.この辺は,室温が高い時に連続運転でもしてみないと何とも言えませんが,大型のヒートシンクを入手できればファンレス化も可能かもしれません.

以下略.


copyright 1999 吉田 功