Nt_mark.gif (4583 バイト)

お帰りなさいNeXT

下田 和正

 6月25日,代理店の1つであるToo社からApple製Mac OS X Server日本語版が出荷されました.引き続き,代理店の大塚商会のショップであるαランドの店頭に置かれるようになりましたが,日本のアップル社のWebサイトのApple Storeでは扱われないという特殊な商品です.

P1a.jpg (37471 バイト) <写真1>
左 NeXT cube
右 G3マシン

NeXTプラットフォームが残したものには3つある
 今のWebのシステムはインターネットを一般のユーザーが使うためのからくりとして,一番利用されているものでしょうが,IPリーチャブルだったその昔(1994年前後)は,FTPが利用されるプロトコルの半分を占めていました.1990年,NeXTを操るTim Berners-Lee氏が文字ベースのハイパーリンクシステムをCERNで構築しました(参考:http://www.sugamo.linc.or.jp/~shigeko /oldnews/news0499.html).それに目を付けた学生が画像を追加して作ったのがMosaicです(1993年).SUN OS4.1.X用が最初に作られ,Mac用,2世代くらい遅れてWindows用が発表されていました.NetscapeやInternet Exploperもここから始まっています.
 Windows NT 4.0によって,マイクロソフト社の分散オブジェクト技術であるDCOMがスタートしました.その前から,NeXT社はOS自体がオブジェクト指向OSと呼ばれ,世の中の遅々として規格化が進まないCORBAをサポートし,実装を進めていました.EOF,WebObjectsなど,企業の使うRADツールとして,実務に使われ,現在では,枯れた技術になってきていますが,Apple社に戻ったJobsが自分の経営していたNeXT社をApple社に買い取らせるというかたちで,これらの技術を存続させ,Mac OS X Serverの発売で,再度,陽の目を見ることになりました.
 この数年の間,マイクロソフト社は,膨大な資金と人材をこの分野に投入したため,Windows NTがエンタープライズ用とのOSとして飛び立とうとしています.
 元Nextjapan社の比嘉氏は,NeXTSTEPはエンタープライズ用のOSにはならないと,ある講習会で説明していましたが,現在Apple社は,これこそエンタープライズ用のOSだといっています.
 もうひとつ,id Software社の存在です.現在Quakeなどのゲームメーカーで知られる会社ですが,最初にリリースしたのは,NeXT用(モトローラ製68040)Doomでした.3Dのゲームの先駆者的な会社で,NeXTを使って,高速なテクスチャマッピングのモデルを完成させたといわれています.

Mac OS X Serverとは
 開発者から見れば,Apple社のG3マシンで動くUNIX OS(BSD)で,NeXTSTEP(OPENSTEP)そのものです.G3以外のマシンでも動きます.Power PCの120MHz+ 96MBレベルで動きますが,実用にならないと思います.Windows 2000 Serverよりもリソースを要求しているようです.同社のマシンは1CPUで,メモリも1GBまでしか実装できません.
 管理者から見れば,たとえばiMacを40台まとめてネットブートし,管理できる便利なツールもついてきます.また,Sambaのパッケージをダウンロードしてくれば,Windows,Macのファイルサーバーとして,部門レベルでは十分に活用できそうです.

Linuxを使うのと何が違うのでしょうか
 NeXTSTEP3.3のころから,UNIX上にこれらの環境が第3者によって実装されるプロジェクト(GNUStepなど)が動き始めました.今のLinuxには,見てくれだけがNeXTSTEPのGUIがありますが,本質的には異なります.最近少しずつ成果が出始めたGNOMEプロジェクトが完成したころには,今のWindows NTと同じだけ重たいLinuxができあがるでしょう.
 GUI,操作性はLinuxの3〜5年先,開発環境やクライアント/サーバー,分散オブジェクト環境などは現在のWindowsのCOM+などと対等になるだろうと思われるのにLinuxなら5〜10年かかるが,すでにそれが使えるOSがMac OS X Serverである,と筆者は考えています.
 したがって,今,OS+G3マシンに26万円(ディスプレイ別)投資するだけで(iMacを使えば21万円ぐらい.NeXTは150万から300万円の価格をしていた.後期の開発ツール単体は約65万円),先の世代の技術を利用するノウハウを手に入れることができるのです.
 問題は,インターネットの商用プロバイダがサービスを開始した1994年ころからずっと,日本語の関連するドキュメントが極端に少ないことです.


copyright 1999 下田 和正