DVD“ソフト再生 VS ハード再生”の違い

ソフトでDVD再生!その実力

深 山 武


 300MHz以上の高速CPUの登場と低価格化,またDVD-ROMドライブのディスカウントが進み,パソコンでDVDを再生して容易に楽しめるようになりました.
 そこで,本稿ではDVD-Videoを楽しむ方法として,ハードウェアによる再生と,ソフトウェアのみでの再生の2種類の方法とその違いを解説し,DVDドライブ+ソフトウェア再生の場合のCPUへの依存度などを紹介します.

ハードウェアDVD再生

 DVDは,CD-ROMと同じく直径12cm,厚さ1.2mmの円盤状のメディアに,最大で17GBもの大容量のデータを収納でき,ここ数年注目されているドライブです.そのコンテンツとして,特に期待されている市場はDVD-Videoのジャンルです.そのため,ホームカラオケ,映画やアニメーションなど,そのタイトルも段々と豊富になってきています.
 DVD-Videoは,MPEG(Moving Picture Experts Group)という,動画を圧縮・伸張する方式を採用しており,身近なところでは,CATV放送や通信カラオケ,また最近開始された衛星デジタル放送などで,その技術が活用されています.このMPEGについての詳細はここでは触れませんが,要は圧縮された大量のデータを,瞬時に,順序よく解読(デコード)する必要があるのです.
 さて,ここでハードウェアによるDVD再生,ハードウェアでMPEGをデコードする際のデータの流れを図1に示します.

<図1>ハードウェアDVD再生はソフトウェアとデコーダカードで
処理を行うのでCPUへの負担が小さい
Sdvd1.jpg (23184 バイト)

 従来の処理の遅いCPUではMPEGをデコードするための十分な演算能力がなく,CPUの負荷が大きすぎて,再生できたとしてもコマ落ちや,時にはパソコン(以下PC)自体がフリーズしてしまうことがあります.
 そこで,MPEGのデコード専用にハードウェア,具体的にはMPEGデコーダカードを用意して,それを介すことにより,コマ落ちのない(少ない)スムースな再生画像を映し出すことが可能になります.
 実際の発色の良さなどは,グラフィックカード(カード)VGAに依存し,DVD-Videoのデータは直接デコーダカードに転送され,そこでデコードされたMPEGデータはオーバーレイ(上書き)されて,ディスプレイに表示されます.この方法で再生した場合,CPUの負荷は非常に小さく,あるデコーダカードのメーカーの推奨PC環境のスペックは,Pentium 133MHz以上,メモリ16MB以上としており,旧スペックのPCでもよく,再生可能なPCの幅は広がります.MMX命令対応である必要もありません.
 また,近年発売されているデコーダカードには,オーディオの再生において,ドルビーデジタル(AC-3)サラウンド対応となっており,それようのスピーカ,アンプを追加して,図2のようにスピーカを配置することで,いわゆる5.1ch(スピーカが6個)による映画館のような臨場感と迫力も再現できます.さらに放送用テレビへのビデオ出力やS-Video端子を持つものもあり,大画面にも対応することが可能です.
 このMPEGデコーダカードも,執筆時点ではアナログオーバーレイ方式のもので2万円前後,DVD-ROMドライブとのセットで販売されているものでも4万円程度で入手することができます.

ソフトウェアDVD再生

 CPUの能力がすさまじい勢いで増大し,また高性能CPUの出現によりCeleronなどそこそこの能力を持ったCPUが安価になっています.
 そこで,かつては専用ハードウェアが必要とされたMPEGのデコードをソフトウェアで処理するといった方式,つまり“ソフトウェア再生”が容易で身近な方法になってきました.また,Video-CDの再生機能(DirectShow 5.x)を標準で装備しているWindows 98の登場で,ソフトウェアによるMPEGデコードが一気に盛り上がり,この再生ソフトウェア商品も,ここ1年程度の間に数社から発売されています.現時点ではDVD-Videoの持ち味の1つであるAC-3サラウンド再生は未対応ですが,CPUにそれなりの処理能力さえあれば,もっとも簡単にDVD-Videoを再生できる手法です.
 ソフトウェアによるDVD再生でMPEGデータをデコードするときの処理の流れを図3に示します.ハードウェア再生のときのようにパソコン本体に手を加える必要もなく,DVD対応ドライブをPCに搭載すれば,再生用ソフトをインストールするだけでDVD-Videoが楽しめます.

<図3>ソフトウェアDVD再生はCPUとソフトウェアで
デコーダカードと同じ役割を果たすのでCPUへの負担が大きい
Sdvd2.jpg (22871 バイト)

 ただ,これらのソフトウェアは,概ねIntel社Celelon300A,Pentium II 266MHz,AMD社K6-2/300MHz以上のCPUを必要としており,最近発売されているメーカー製PCを購入されていれば,この方法で再生できるケースは少なくないでしょう.参考として表1に推奨CPUの例を示します.実際にはCPUの浮動小数点演算の能力が問われるので,もしCPUを新調する場合は,予算の許す範囲でより能力の高いものを選択することをお勧めします.

<表1>ソフトウェアDVDの再生に必要なCPU能力の一例
Sdvd3.jpg (49272 バイト)

 しかし,組み合わせて使用する(PCに搭載している)グラフィックカードによっては,再生に耐えられないものもあります.選択したソフトウェアがお持ちのグラフィックカードのチップ(RivaTNTやVoodoo Banseeなど)をサポートしているかチェックする必要があります.入手の際に,パッケージなどをよく見て確認してください.これらのソフトウェアは7千円前後で購入できます.

再生支援機能付きグラフィックカード

 MPEGのデコードをCPUに依存するソフトウェア再生方式で,より快適に,つまりコマ落ちやフリーズすることなく,安定動作を求める手段として,最近各メーカーから発売されている「DVD再生支援機能」の付いたグラフィックチップが搭載されたグラフィックカードを選ぶ方法もあります.
 この再生支援機能とは,MC(Motion Compensation:動き補償)や,IDCT(Inverse Discrete Cosine Transform:逆離散コサイン変換)といったMPEGのソフトウェアデコードを助ける機能をグラフィックチップが持っているものを指します.
 再生ソフトウェアのパッケージ上に記されている必要スペックのところに,注意書き的に書かれているのがこれに相当します.表1にある(*1)がその例です.この機能は,画面を表示するにあたり,グラフィックカードとして可能な範囲で手助けをしますが,CPUそのものの負荷を軽減するのではなく,あくまで“支援”するものです.
 この再生支援機能を持ったグラフィックチップとしては,ATI社RAGE128VR,nVIDIA社RivaTNT2,S3社Savage3Dなど,ごく最近発売されたやや高価なグラフィックカードには搭載されています.また,最新のグラフィックカードでは,この再生支援機能を持っていることがユーザーの趣向ということもあり,値段に幅はあるものの,多くのグラフィックカードに搭載されてきています(表2).

以下略


copyright 1999 深 山 武