第2特集 急速な普及を始めたDVDの世界

第2章
大容量記録メディアとしての
DVD-RAMチェンジャ

(株)日立製作所 野呂 輝雄

 既にDVD-RAMドライブとメディアをチェンジャ装置に搭載した製品が,大容量記憶装置として発表・販売されています(表2-1参照).
 これらは,製品名としては,DVD-RAMチェンジャ,DVD-RAMライブラリあるいはDVDライブラリと称していますが,国産3社(日立・松下・東芝)の単体DVD-RAMドライブをチェンジャ用に改造し,メディアは片面ケースなしメディアか両面ケース入りメディアを使用しています.つまりチェンジャ搭載のための工夫はしているものの,使用しているドライブとメディアは一般向けに開発されたものを使用しており,価格面において量産効果の恩恵を得ています.

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 表2-1からわかるように,各製品の仕様には以下のような点で違いがあります.
◆ 装置
 (1) 収容メディア枚数/収容ドライブ数
 (2) メールスロット枚数
 (3) ピッカー数
 (4) ラメディア反転機構:あり/なし

◆ メディア
 (1) 片面使用 ←→ 両面使用
 (2) (ケース入りメディア) ←→ (ケースなしメディア+搬送トレー)

 上記の仕様差の中で,製品を特徴づけユーザーへの影響度も大きいのは,メディア収容形態です.現在は,(ケースなしメディア+搬送トレー)とケース入りメディアの2方式がありますが,2方式の長所短所を表2-2にまとめます.現在は優劣をつけがたいですが,収容容積メリットとROMメディアとの共存が容易であること,DVD-RWがケースなしメディアであることなどから,将来は両面のケースなしメディアが主流になると考えられます.

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● SOHO用ミニチェンジャ
 SOHO用のDVD-RAMチェンジャとしては,価格・容量・大きさから考えて5〜50枚のクラスが最適と考えられます.
 しかしながら,現状では100枚未満のJukeBoxタイプのチェンジャ製品は存在しないことから,このクラスでの選択肢は多くありません.
 このような中で,以下に紹介する日立製作所の小型DVDライブラリ装置「NETCABINETミニチェンジャ」は,必要になった時に順次増設が可能なので,初期投資額を抑えることができます.特徴は以下の通りです.

(1) DVD-RAMドライブとチェンジャを一体化し,低価格で可搬性に優れた小規模チェンジャを実現
(2) 専用カートリッジで,DVD-RAMメディアを5枚一括して,挿し込み・取り出しができる
(3) ボタン1つでカートリッジを交換できるため,多種のデータを取り扱うなど,メディア交換が多い場合でも手軽に利用可能

 5連装ミニチェンジャの透視図を,図2-1に示します.カートリッジには,5枚のDVD-RAM片面ケースなしメディアが,それぞれ搬送トレーに乗って収容されています.
 製品タイプとして,1台のみのシングルと,5台を積み上げたタワーがあります(写真2-1,写真2-2).
 なお,DVD-RAMカートリッジは,データを誤って消去しないために,DVD-RAM1枚ごとにライトプロテクトをかけることができます(図2-2).
 さて,この大容量記憶装置をどのように活用するかですが,「MOの代わりにファイル装置として使う」「DATの代わりにバックアップ装置として使う」方法について,それぞれ見ていきたいと思います.

ファイル装置として使う

● 見え方
 ファイル装置として使用する場合は,DVD-RAMの基本フォーマットであるUDFを使用しています.エクスプローラからの見え方は,図2-3のようになります.
 メディア1枚ごとにドライブ文字を使用するのではなく,任意のメディア枚数でドライブ文字を定義し(これを仮想ディレクトリと呼ぶ),各メディアをサブフォルダとして見せています.
 ユーザーは,現在何枚目のメディアがマウント中であるか意識する必要はありません.ユーザーが利用したい仮想フォルダをクリックしたときにそのメディアがマウントされていなければ,DVDライブラリが自動的にマウント中のメディアをカートリッジ内に戻し,指定されたメディアを新たにマウントします.

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● キャッシュ
 DVDライブラリは以下の2種類のキャッシュにより,仮想フォルダへのアクセスを高速化しています.
(1) ディレクトリキャッシュ
 DVDライブラリでは一度アクセスした仮想フォルダ(メディア)内のファイル名やサイズなどのディレクトリ情報をハードディスクに保持します.メディアのディレクトリ参照要求があった場合,ハードディスクに保持している情報を使用することにより,メディアをドライブに移動することなく高速にディレクトリ情報を表示することができます.
(2) データキャッシュ(タワー形のみサポート)
 DVDライブラリでは,仮想フォルダ(メディア)に対する書き込み要求データをいったんハードディスクに格納します.ハードディスクに格納されたデータは自動的にメディアに書き込まれますが,ハードディスクへの格納が完了した時点で(メディアへの書き込み完了前でも)書き込み要求元に対して書き込み完了を通知するので,見かけ上の書き込み速度が向上します.

バックアップ装置として使う

 ユニークな使い方として,DVDライブラリに日立が開発したDVD-RAMテープエミュレートドライバをあて,Windows NT 4.0に標準添付されているバックアップユーティリティ(以下NTBACKUP)を使って,テープイメージでデータのバックアップを行う「DVDライブラリバックアップシステム」として構成することができます.
 ユーザーは,テープへバックアップするのと同様に,バックアップ/リストアを実行することができます.また,テープへのバックアップと同様に,データをシーケンシャルにメディアに書き込むため,デバイスの書き込み性能をフルに生かすことができます.さらに,データ回復の際はダイレクトアクセスのため,クイックリカバリが可能です.
 図2-4はシステムの構成,図2-5は本ソフトウェアを実行する機器構成例です.

以下略


copyright 1999 野呂 輝雄