CPU


copyright 岩村 益典 1996-1999

 CPUとは,Central Processing Unitの略で,中央演算処理装置と訳します.MPUともいわれます.コンピュータの中枢部分です.演算や周辺とのデータのやりとりなどを行います.種類としては,CISCタイプとRISCタイプとがあります.現在,この区別はほとんど意味がありません.CPUの速度は,CPUの種類によって異なり,同じCPUでは,クロック数が高いほど速くなります.
 PC/AT互換機では,Intel社の86系CPUを採用しています.また,最近では互換CPUにも注目が集まっています.また,i486やPentium CPU用にはアップグレート用のCPUとしてODPがありましたが,現在は市販されていません.従って,高速にしたい場合は,互換CPUを使います.


Intel CPUの変遷

 PC/ATにIntel社製の86系CPUが採用され,MS-DOSがこのCPUを前提として設計されているため,ほとんどのPC/AT互換機は,Intel社製のCPUやその互換CPUを採用しています.
 CPUは,8086-> 80286->386->486->Intel486DX4->Pentium ->Pentium Pro-> Pentium MMX-> PentiumII-> PentiumIIIと進化してきました.PentiumIIの時代に低価格版としてCeleronが出荷されています.
最初に出荷されたCeleronの266/300MHzはキャッシュが搭載されていなかったのですが,クロックアップができ450MHz〜500MHz付近まで動作したため,自作ユーザーに人気がありました.その後,300/333/366/400MHzのキャッシュが128KB搭載されたモデルが出荷されています.

クロック

 クロック(Clock)とは,ハードウェアが動作するのに必要な一定周期の信号のことです.普通は,CPUの動作クロックのことを指す場合が多いです.同じ種類のCPUならクロック数が高いほど高速になります.
 クロック周波数を上げると発熱も激しくなるので,Pentiumなどでは,CPU自体の動作電圧を3.3Vまで下げています.PentiumIIでは,さらに電圧が下がり,2.8Vや2.0Vが使われています.放熱にはクーラーやヒートシンクが使われます.

Pentium

 Intel社の86系32ビットCPUです.正式にはPentium Processorといいます.
 従来のi8086とのバイナリ互換を保ちつつ高速化しています.i486DX2に比べて約3倍の310万個のトランジスタを集積しています.内部処理は,32ビットですが,外部データバスは64bitです.スーパースカラ・アーキテクチャを採用し,パイプライン方式により二つの命令を並列に処理できるようになっています.
Pentiumの内部ブロック図

Pentium Pro

 Intel社のPentiumの本格的な32ビット用CPUです.集積度はPentiumの約2倍で,600万個のトランジスタを集積しています.設計上処理速度は,Pentium CPUの2倍から3倍あります.
 Pentiumのスーパースカラをさらに進化させ,ダイナミック・エグゼキューションという技術を採用しています.関連性(ペアリング)のない命令をも並列処理できるようになっています.
150/180/200MHzの3種類のCPUが出荷されました.主にサーバーに使われたCPUです.

ODP

 Over Drive Processorのことです.パソコンのアップグレード用に,Intel社が,一般向けに販売しています.CPUソケットやODPソケットに装着することによって,処理速度をアップさせようとするものです.機能アップ用のCPUといえます.i486用とPentium用ODPが発売されています.現在Intel社は生産を終えているので,入手は困難になっています.
 Pentium-ProのODPはアメリカでは発売されました.
 CPUを差し替えが簡単にできるように,ZIFソケットの採用をしているマザーボードが多くあります.

クーラーとヒートシンク

 CPUは,かなり発熱するので,熱を逃がす必要があります.この機能を持ったものがクーラーまたはヒートシンクです.自然空冷タイプと,ファンのついた強制空冷タイプがあります.Cyrix社の5x86に付いている緑色のアルミ板は自然空冷タイプです.

ZIFソケット

 Zero Insertion Force Socketのことで,レバーがついています.このレバーを倒すとチップが固定され,起こすと,まったく抵抗なくチップを取り外すことができます.

互換CPU

 あるCPUと同等の動作をする他社の開発したCPUのことです.DOS/Vは,Intel社の86系のCPUを使っているので,実際にはこの86系CPUと互換性のあるCPUを指しています.
 互換CPUのメーカーとしては,Cyrix,AMD,NexGen,IBM社などがあります.最近では,486互換の5x86/6x86AMDのK6-2などがよく利用されています.
6X86はMMX機能を搭載した後,M-IIと名称が変わり,233/266/300/333MHzなどが市販されています.
AMDのK6は233/266/300MHzが発売されましたが,すぐにベースクロック100MHzに対応すべくK6-2のシリーズに変更されています.現在,400MHzまであります.CPUのコア電圧は2.2Vです.
 インテル社は,CPUのスピードの比較にiCOMPという指標を作っています.
 また,X86系以外のCPUですが,PowerPCRISCチップとして有名です.

iCOMP

 Intel社が自社のCPUの性能の比較に使用している数値のことです.複数のベンチマークプログラムで計測して結果を数値化しています.
 i486SX/25MHzを100とした場合の相対値で示します.
その後3Dなどの能力を評価できるように,iCOMP2の規格に変更されています.

5x86

 5x86は,i486とピン互換のある互換CPUです.AMD社のものととCyrix社のものとがあります(名前は同じでも中身は異なる).486ピン互換のCPUで,Pentium75MHz以上の演算性能をもっています.互換CPUをいっても完全な互換性があるわけではないので,i486用マザーボードによっては使用できないものもあります.
Cyrix社は現在ナショナルセミコンダクター社の傘下にあります.i486の系統はMediaGXシリーズとして,コストパフォーマンス高いPCに採用されています.

6x86

 Cyrix社のPentium互換CPUのことです.分岐予測などの高速化技術により,同一のクロック周波数のPentium CPUよりも高速です.

RISC

 Reduced Instruction Set Computerのことで,「縮小命令セットコンピュータ」と訳します.基本的な命令を簡素化して,個数も少なく,処理速度を優先させた作りになっています.命令数が少ない分,ソフトウェアの負担が多くなり,高度な最適化を行えるコンパイラを利用する必要があります.
 これに対して,8086や486のような従来からあるコンピュータの流れをCISCと呼びます.ただし,Pentium ProはX86命令を実行するRISCタイプですから,アーキテクチャによる優劣の比較は無意味になってきています.

PowerPC

 IBMとMotorolaおよびApple社が共同で開発したRISC CPUです.Apple社のPower Macintoshなどに搭載されています.

Pentium II

 Slot1というエッジコネクタで登場しました.サーバーやワークステーション向きにはXeonというモデルがあり,2次キャッシュがCPUと同じスピードで動き,512K/1M/2MBのキャッシュのモデルがあります.

Pentium III

450/500MHzからスタートした,新命令セットKNI(Katmai New Instructions)を搭載したPentiumIIの後継CPUです.

Celeron

 1998年は1000ドル以下の低価格PCの出荷が多くなり,そのCPUにAMD製のK6-2が採用されました.そのIntel社の対抗製品です.最初の2機種を除き,CPUと同じクロックで動作する128Kバイトの2次キャッシュを積んでいます,
 PentiumIIよりいくらか遅いか,ベンチマークではほぼ同等の性能を持っています.基本的に,シングルCPUで使われます.
 1999年1月4日に366/400MHzのソケット370用が発表されました.それまではPentiumIIと同じSlot1でしたが,全面的に370に移行します.


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