(株)イナハラによる出荷システムの構築


 

● システムの概要

 出荷システムとは,契約をした会社の商品を預かり,必要な時に必要なだけ出荷する,という業務です.
 このようなシステムでは,特に速さと正確さが要求されます.
 オンラインで預け元の商店から届く商品出荷指示のデータを,時間を決めて受け,それをFTPで転送して,夜間にSQL Serverで在庫引き当て処理を行って出荷情報を作り,翌朝その出荷情報に基づいて出荷を行います.
 データ処理を行うSQL Serverマシンは2台用意し,万が一1台が落ちても,もう1台で処理をやり直すことができるようにしています.クラスタリングではないのですが,そのほうが顧客の感覚として理解しやすいということで,この方法を選択しています.今までのところバックアップであるもう1台を使ったことはないそうです.

● 3時間から20分へ

 従来は,この在庫引き当て処理を,オフコンで行っていましたが,データ受信から出荷情報を作るまで3時間かかっていました.この作業を,「何とか20分でできないだろうか」と相談を受けたのがそもそもの発端でした.データ処理を夜間に3時間かかって行っていると,もしその処理が失敗した場合,翌日スタッフが出社してきてさらに3時間かかってデータを作ることになり,翌日の午前中の業務が止まってしまい,1日全体に業務影響が出てしまいます.パートで雇っている人も手持ち無沙汰,運送のトラック手配にも影響するなど,大きな損害となります.
 契約している商店には「土日で商品が売れ,火曜日に補充のための出荷がかかる」などのリズムがあり,倉庫業者にはそれに応じてパート社員を雇う,などの流れがあるので,データ処理の失敗は,単なる処理の失敗にとどまらず,このリズムを大幅に狂わせることになり,大きな痛手となってしまうのです.
 もし,データの作成が20分で実現できたら,仮に1度失敗してやり直しをしても午前中20分だけの作業で全部リカバリできるのです.

● 改善を実現した要因

 オフコンからPCに変えるだけで最初から20分が実現したわけではなく,最初は1時間ほどかかっていましたが,SQL Serverのストアドプロシージャを工夫することにより,最終的に20分を実現しました.そして,出荷までの時間が短縮されて,大きなTCOの削減が実現したとのことです.
 また,今回のシステムが成功した理由は,システム構築を行ったイナハラ側の努力だけではなく,ユーザーのシステム担当者が,非常に協力的で,積極的に提案を行ってくれたのが,成功に結びついたとのことです.

● 今後の計画も進む

 システムを改善した結果,その業者の出荷は1日3万件から5万件に増え,1つの倉庫では対応しきれなくなって,今では近くのもう1つ倉庫と合わせて2つの倉庫で振り分けて処理しています.新しい倉庫のクライアントからもサーバーに直接データを取りに行けるように,2ヵ所をDA64で結んでいます.
 今回のシステムは,ほかの商店に関しても同様のシステムを構築していこうという動きもあるとのことです.

<図A> システムの構成図

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クライアントマシン(5台):Pentium 166MHz
メインサーバー:Pentium Pro 200MHz×2
 (Windows NT 4.0 + SQL Server 6.5)
バックアップサーバー(非常用):Pentium Pro 200MHz
 (Windows NT 4.0 + SQL Server 6.5)
処理量:1日5万件
データベースのサイズ:約2GB
トランザクション:約1GB

1999年1月号掲載

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