エンタープライズ市場への対応と
SQL Server 7.0の新機能


 SQL Server 7.0の製品戦略と機能概要についての説明は「マイクロソフトのエンタープライズ市場への対応と,SQL Serverの新機能の解説 」と題して,マイクロソフトソリューション デベロッパー事業部ソリューションテクノロジー支援部SQL Serverプロダクトマネージャの北川裕康課長から行われました.
 製品の出荷状況についてWindows NTが160万サーバー/年,Exchange Serverが累計で1600万シート,SQL Serverは300万シート/年,累計で450万〜500万シートが出荷済みという説明がありました(編注:シートというのはクライアント数のこと).
 講義ではWindows NTの生みの親の1人であるDave Cutlerや,SQL Server 7.0でのコード書き直しに一役買ったJim GrayなどMicrosoftのアーキテクト達が,Windows NTやBackOffice製品の開発にどう関わったかという説明があり,話はここからSQL Server 7.0の内容に移っていきます.Microsoft全体では4年前と比べ3〜4倍の技術者がデータベース製品,TPC(トランザクションプロセスコントロール)製品に関わっているという話が印象に残りました.
◆ 新しい世代のデータベース
 Sybaseと共同開発したOS/2向けのSQL Server 4.2をWindows NT向けに移植した時から,SQL Serverの歴史が始まっています.しかしWindows NTや,最新のハードウェアに最適化していくためにストレージエンジン,クエリプロセッサを中心に,95%以上のプログラムを書き直したのがSQL Server 7.0です.
 ではその使命は?「Microsoftの統一的なデータベースエンジンになることです」AccessやVisual BasicのJET,ExchangeのJETがありますが,これからのSQL Server 7.0はBackOfficeのデータベースコンポーネントという位置付けではなく,Microsoftの統一データベースエンジンにするという予定があり,最終的にはJETの機能をSQL Serverに吸収していく方針であると説明されました.
 また,SQL Server 7.0の3つの柱(ポジショニング)については以下のような説明がありました.
・スケーラビリティと信頼性を確保する
・データウェアハウジングによる意思決定
・Office,Windowsファミリーとの完全な統合を図る
 スケーラビリティについては,既存システムをより上位のシステムに移行するためのスケールアップと,同じシステムをノートパソコンや部門サーバーに移すためのスケールダウンも提供されます.これはWindows 95/98向けのSQL Serverデスクトップで実現されます.
 もう1つのスケーラビリティとして,ERPについての説明がありました.SQL Server 7.0はERPベンダーであるSAP,BAAN,PeopleSoftの各製品で満足のいく性能が検証されるまではベータ版を出荷しない戦略にもとづき,テストを繰り返してきたとのことです(Microsoft自身は本年7月よりSAP R/3による自社システムの一部をSQL Server 7.0に移行済み).
 データウェアハウジングについては,エンドユーザーのデータ分析部分だけではなく,構築の部分から必要となる機能を提供することになります.また次期Excel2000では,データ分析用に直接OLAPサーバーに接続できるPTS (PivotTable Service)が提供されます.
 ここでは,このように見ていったときに「Microsoftの製品でSQL Serverと関係がないのはゲームなどのホーム製品だけになると思います」という話が印象に残りました.
◆ SQL Server 7.0をユーザーの目で体験してみる
 Microsoftがインターネット上で公開する全世界の地図情報TerraServer(http://terraserver.microsoft.com/)を散策してみるのはどうでしょうか.TerraServerはSQL Server 7.0を使ったシステムで,1TBを越える世界各地の衛星写真データを公開しています.オンライン地図情報とは言っても所詮はトランザクションを伴わないアーカイブですが,膨大な情報を管理しているシステムに実際にアクセスすることができます(図1).

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<図1> テラサーバーはSQL Server 7.0を使った全世界地図情報システム

 このシステムでは大量データのバックアップ,ローディングに関する貴重な情報が得られているとのことです.
◆ 改善されたアーキテクチャ
 SQL Server 7.0のアーキテクチャ上の改善点として,何項目かの説明がありました.その中でも今回のセミナーでは,Server 7.0の次期バージョンであるジャイロ(開発コード)でサポート予定の値ベースによるデータパーティショニングについての計画と,それに先立ちバージョン 7.0で導入されたファイルグループについての話が大変興味深いものでした.
 またリレーショナルデータベースへの問い合わせであるさまざまなクエリ(参照や更新)については,複雑なクエリをコストベースで処理させるためのオプティマイザや,従来の単一インデックスからマルチインデックスの評価,パラレルクエリ,ユニバーサルデータアクセスなどの説明が行われました.
 ロック管理についてはページレベル,テーブルレベル,行レベル.業務側のアクセスパターンが決まった時,どのレベルでロックするのが最適なのかはアクセスパターンごとに決まってくるものです.この意味において,SQL Server 7.0が動的に最適なロックレベルを決定するのは好ましいと言えます.ただし,開発者にロックレベルを明示できる方法も残しているのが重要だと思いました.
◆ シナリオベースの提案
 最後にBackOfficeとWindowsファミリーの統合に関する話がありました.「シナリオベースの提案」という言い方で,今後のMicrosoftはさまざまなソリューションごとに最適な製品を組み合わせて提案していくということになるようです(図2).これはトランザクションを伴う業務システムならばSQL ServerとMessage Queueを組み合わせた形での提案を行っていくということです.代表的なシナリオとしてはコラボレーション,知識管理(ナレッジマネジメント),トラッキング(ディスカッション,顧客クレームの蓄積など),データ分析(データウェアハウジング),業務システム,エレクトリックコマースなどが想定されているようです.

<池田 力也>


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<図2> シナリオベースの提案