PCサーバーは基幹業務に耐えうる
パワーをつけた.そこで,これから
BOCCの役割は重要だ
 
下田 和正


 7月30日,「安心と信頼」と新経済企画庁長官に任命された日,堺屋 太一氏は発言しました.この言葉は,企業がコンピューターを使ったソリューションを構築するときにも重要です.この言葉に加えて,Pentium II Xeonの発表を受けて数々の新サーバーを発表したメーカー各社は「高い可用性」を付け加えてきました.
 サーバーは,企業のコンピューターシステムの中でも要となります.従って,Reliability(信頼性),Availability(可用性),Serviceability(保守性)の3つが常に求められてきました.それらを満たしていたのが長い間かかって企業の中枢に使われてきた汎用機,基幹業務に使われるUNIXサーバーです.
 各社温度差はありますが,インテルアーキテクチャーを使ったサーバーは,Windows NTがインストールされて業務に使われます.UnixWareやSolarisをサポートする会社もありますがインストール数ではNTが断然多いようです.
 けれども,ここでついて回るのが,「Windows NTで大丈夫なの」という声です.サーバーが止まってしまう原因には,
(1) ハードウエアおよびそのドライバー
(2) Windows NTというOS自体
(3) 開発した業務アプリケーション
の3つに分けて考えることができます.
 ハードウエアを販売しているメーカーは,(1)に責任を持ちます.ソリューションを構築するインテグレーターの責任囲はすべてにわたります.

●可用性が一回り上がってきている

 サーバーにUPSを使うのは常識的なレベルだとすれば,全体の中で一番故障率の高いハードディスクを単体ではなくRAID5の構成で使う機会は増えています.ミドルクラスのモデルRAID装着率は約30%,ハイエンドモデルではほぼ100%だというサーバーメーカーもあります.
 情報系としてPCサーバーの利用が活発化していますが,その中でもよく使われているメールサーバーは,現在止まってしまうと企業の活動が停止してしまう重要な位置づけになりました.どのメーカーも,メールサーバーの重要性を口々に語ります.仕事の打ち合わせから始まり,その返事を待って大きな仕事に取り掛かるというような重要な連絡までもがメールで行われるようになってきました.ほとんどこれは基幹系のシステムだという言い方も正しいかもしれません.
 そのために,クラスター接続のPCサーバーでシステムを組みたいという要望が上がっているそうです.新規メールサーバーの多くにNotesもしくはExchangeが採用されるようになってきた今,可用性はますます重要になってくるわけです.
 しかし,この可用性の技術を過信しすぎても問題が発生します.RAIDシステムは可用性を上げるために利用されるのに,現場レベルでは,ユーザーが独自に設定を行ったために,トラブルが発生してしまったような事例が報告されているそうです.
 また,新しい開発ツールを使ったがゆえに,メモリーリークを発生してしまい,連続運転ができなくなった事例もあるようです.従って,専用のミドルウエアをメーカーが用意し,それを使ったアプリケーション開発で動作を保証するというようなアプローチをするメーカーもあります.可用性というのは,マシンのダウンしている時間をできるだけ少なくしようという言葉ですから,業務アプリケーションの開発まで配慮しているメーカーは信頼できるといえるでしょう.
 また,UPSに付属していたユーティリティーを使ったら,1ヵ月後にOSが止まってしまったというような現象は,UPSを含めた可用性を保証したサーバーを利用することが大切になってきます.
 最終的には,マシンが止まらなければよいわけですから,PCサーバーでも,各ブロックを二重化し,トラブル発生時には瞬時に切り替えることで,マシンを止めない連続運転仕様のサーバーも発表されてきています.

●信頼性のさらなる向上


 可用性の分類に挙げられることもありますが,電源の二重化/冗長化/ホットプラグ対応,ファンの冗長化/ホットプラグ対応,筐体の熱設計,個々の部品の信頼性向上,厳しい社内基準によるハードディスクの信頼性評価,など,ミッドレンジ以上のサーバーには,基幹業務に対応できる信頼性が付加されてきています.
 冗長機構の採用については,メーカーによって温度差があります.最初から,3つの電源ユニットを搭載し,冗長化していたり,完全なオプション扱いのメーカーもあります.
 これは,冗長化にはコストが大変かかるが,マシン自体の性能にはほとんど寄与しないためで,導入する企業の判断を待つというメーカーと,信頼性を確保するためには絶対に必要だと考えるメーカーとの基準が異なるためにおこっています.
 従って,業務の内容に合わせてオプション装置を加えた形で見積もりを取らないと,メーカーの発表する価格だけでは参考にならないことがあります.

●WindowsNTが動く環境下での信頼性


 Pentium II Xeonの4Way/8Wayのシステムが発表されたことによって,それまでのサーバーより,約1.5倍から2倍ちかいパフォーマンスの向上が見込めます.もちろん,価格は低く抑えられていますから,導入コストは低いままです.しかし,Windows NTのバージョンは4.0のままです.
 そのため,ミッションクリティカルな用途にWindows NTを利用するとき,ソリューションを提供するインテグレーターは,どこまでは問題無く,もし問題があればそれをどのように回避できるか提案ができなければなりません.さらに,実際の開発や運用時にも始めてわかるトラブルというものもあります.このようなトラブルに対して迅速に対応できるインテグレーターの存在が,Windows NTとBackOfficeを使ったソリューションの普及を促進すると言えます.
 そのための組織がBOCCです.

●信頼性は汎用機に絶対に及ばないのか


 約20年前,数十MIPSという,今では考えられないくらいCPUパワーとしては低い値のコンピューターが金融のオンラインに使われていました.電算室を見学すれば,プロセッサーよりも大きな発電システムを見せられたりもしました.当時汎用機メーカーのビルの前にはタクシーが長く列を作り,何かあると,真夜中でも高速を走って駆けつけるとうわさされていました.
 論理回路は発熱が大きく,新製品の発表会では,いかに効率良く冷却するかという点ばかりが強調されました.
 オンラインソフトは一番バグの発生しやすいアセンブラで記述されていました.
 この十年を見てもコンピューター専門誌に汎用機の止まった話はたくさん掲載されています.
 では,信頼性というのは,どういう意味を持つのでしょうか.
 汎用機の信頼性というのは,発生するトラブルの数が少ないのではなく,プロセッサーとその周辺を全部含め,サポート体制ができあがっており,トラブルがあれば全力でOSのソースコードレベルから解析をして解決をしてくれるというところがポイントだと言えます.
 もしそうであれば,Windows NTおよびBackOfficeを使ったソリューションを提案するインテグレーターの中でそのようなサービスを提供する専門組織を構築しはじめれば,PCサーバーも信頼性というレベルには大きな前進が見られると言えます.

●BOCCのねらい


 BOCCは,BackOffice製品群に関する豊富なスキルと経験を持ち,マイクロソフト社と連携しながら企業ユーザーに対してBackOfficeをベースにしたソリューションやコンサルティング,教育などのサービスを提供する役割・機能を果たします.
 現在11社が運営しており,その会社独自の体制やサービスの提供があるため,同じ顔を持っていません.コンピューターを使ったソリューションの中で,BackOfficeを使うチャンスは急速に増加していますが,まだまだそれ以外の解決法も多いのです.

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 図1(a)のように,BOCCは単独で企業ユーザーに対してサービスを提供したり,インテグレートを行うが,業種別社内営業やSEの後方支援も行うというタイプ,図(b)のように,企業ユーザーおよび販社に対してもサービスを提供するタイプ,図(c)のように,BOCCは新バージョンのデモンストレーションなどを除き後方支援に徹しているタイプがあります.いずれもマイクロソフト社と密接なつながりをもち,問題解決をできるだけ短時間に対応するような体制になっています.
 どのような形態であろうとも,BOCCは後方支援のためには重要な組織だということが言えます.常に新しい製品情報を持ち,検証を行うことは重要ですし,社内のたくさんの部署から集まるトラブルシューティングをストック・整理することで,企業ユーザーからのトラブル対応の1次防衛線になるわけです.従って,ほとんどのトラブルはこのBOCCが対応できるようになっているようです.また,BOCCのある組織には,他社のオープン系のサポート要員も在籍している場合が多く,インテグレーターの技術的バックボーンとしての重要な組織になっています.
 このような組織があることで,前線の営業部員は安心してBackOfficeのソリューションを提案できるわけです.