SBS担当者直撃インタビュー
マイクロソフト(株) ビジネスシステム製品統括部
松倉 泉 BackOfficeグループプロダクトマネジャーに聞く

文/編集部

-本日は,お忙しい中どうもありがとうございます.まずは,すでにあちこちに発表されているとは思いますが,あらためてSBSの概要を説明してください.

 ひとことで言うと,小規模オフィスに必要なあらゆる機能を最適化し統合したビジネスサーバーです.小規模オフィスの定義については,従業員数10人から99人としておりますが,より大切なのは規模ではなく,情報システム化が進んでいない所,専任の管理者を置けない所がターゲットという点です.20人規模でも情報システム化が進んでいる所もあれば,100人を超える規模でも進んでいない所もあるわけですね.  そのような市場を考慮した結果,SBSはクライアントプログラムのインストールを自動化する作成機能や日常的な運用管理を容易にする管理ツール(「サーバーの管理」)を備えています.この管理ツールがSBSの最も大きな特徴と言えるでしょう.専任の管理者がいない事業所では,運用管理をどうするかが,大きな問題となっていたわけです.

<「25」の謎>

-ターゲット層については,クライアント数の制限が最大25であることとも関連があるように思えますが?

 そうですね.25という数字は物理的に接続できる数であり,必ずしも,企業規模を表現しているとは言い切れません.例えば,300人規模の事業所でも,PCと直接関わるオフィスワーカーが数人という所もあるわけです.  通常,そのような事業所が目的とするシステムでは,シングルサーバーで接続数が最大25であるSBSを選択することも可能になるわけです.

-例えば,会社の1事業所でクライアントが25以内などの場合にも導入できるのではないですか?

 SBSはシングルサーバーに限定した製品ですので,完全に閉じた,独立の組織として運用するなら適用できるとは思いますが,支社として会社全体でドメイン管理をする可能性があるところは,ターゲットとして想定していません.

-クライアント数の制限が最大25となった経緯は?

 米国のスモールビジネスで所有されているPCの平均的な台数が約25台なのです.この米国でスモールビジネスと呼ばれている分野というのが,日本では中小規模事業所と呼ばれる10人から99人の規模に相当します.

 しかし,それ以上に大きな理由が,専任の管理者のいない環境で,かつ1台のサーバーで運用できるもっとも妥当なクライアント台数,という点です.

<SBS,需要と供給>

-現実に,それほどまでに中小規模事業所の情報化投資への関心は高まっているのでしょうか?

 情報システム化というものは,企業規模にはとらわれないものだと思います.現に,調べたところによると,日本における中小規模事業所のうち少なくとも84%が,情報システム化を重要だと考えています.

 しかし,中小規模事業所に対して,あらゆる点で適した製品,トータルなソリューションは,これまで提供されてこなかったと思います.SBSは,これらの目的に適した最初の製品だと考えています.

-すでに,NT Serverを導入して,SQL ServerやIISを利用されている中小規模事業所もあれば,新規導入の中小規模事業所もあると思います.どちらがSBSのターゲットなのでしょうか?

 すでに,SQL Serverなどを利用しているところは,SBSのターゲットではありません.誤解していただきたくないことは,マイクロソフトはすべての中小規模事業所をSBSでまかなおうとしているわけではない,ということです.すでに,NT ServerをベースにBackOffice製品群でシステムを構築されているようなスキルのある所,あるいはサーバーの機能に自由度を求める所は,SBSを選ぶ必要はないのです.

-よく,SQL Serverのデータ容量制限が1GBというのは小さすぎないかと言われていますが?

 1GBのとらえ方はさまざまですので,一概には言えないと思います.ただ,SBSはあくまで1GBのデータベースを扱うシングルサーバー専用の製品であると考えていただきたいのです.1サーバー25クライアント,という規模も,FAXやモデムの上限もそうですが,すべてのサイズを,SBSを選択されるターゲットに絞り込んで最適化しているのです.1GBというサイズがチューニングをそれほど必要としないということもありますし,SBSが小規模向けの最適化・統合製品であると認識されていれば,SQL Serverの1GBを制限とは捉えられないかと思います.

 導入の段階で,大規模のデータベースを扱われるようなところであれば,既存のBackOfficeという選択肢がありますし,SBSを選択されて,その後1GBより大きいデータベースを扱う必要が出てきた場合のために,BackOfficeへのパスも用意することで規模の拡張にも応えられるわけです.

-それでは,SBSは一生使い続ける,というような製品ではないのですね?

 もちろんです.企業が拡大していくに従って,情報化投資も増えていくでしょうし,導入はSBSでも,そこからどんどん拡張していただきたいと考えております.そして,SBSで蓄えた資源をBackOfficeへの移行によって,そのまま生かせるということがSBSの大きなメリットでもあります.

<使いやすい「サーバーの管理」ツール>

-管理ツールが搭載されたことによって,全面的にシステムの運用管理をエンドユーザーが行うことになるのでしょうか?

 日常の運用管理,例えばユーザーの追加やプリンターの追加などは行えるようになるでしょう.しかし,すべての運用管理をユーザーでまかなえるようにはならないと思います.その運用管理については,MCSP(Microsoft Certified Solution Provider)をはじめとする弊社のパートナーなどとサポート契約を結ぶ,ということになるでしょうね.

-使いやすい管理ツールは「ユーザーフレンドリー」,つまりエンドユーザーに対して,是非使ってください,と勧めているものではないのですか?

 SBSは,あくまでサーバー製品ですので,デスクトップアプリケーションとは意味合いが違います.「管理者フレンドリー」とでも言えばいいのでしょうか(笑).この「使いやすさ」は,管理者,そしてサポートする側の両方に貢献するものだと考えています.  また,使いやすさについては,オンラインガイドなども用語の説明などわかりやすく,ユーザーが学んでいけるようなものになっています.

<販売について>

-SBSパッケージの店頭売りはされますか?

 はい.Windows NT Serverなども店頭売りをしております.SBSの場合はインストールや管理ツールが容易になっていますから,今まで手が出なかったユーザー層にも,広がっていくものと思われます.ただ,結局ユーザーが求めるのはSBSというよりは,その上で動くアプリケーションであると思いますので,SBS単体ではなく,アプリケーションと共に,という形で売れていくかと思います.

-目標出荷本数とワールドワイドでの累積出荷本数は?

 初年度の目標出荷本数は,プリインストールを含めて30,000サーバーです.ワールドワイドでは,1997年11月に発売以来すでに30,000サーバー以上を出荷しています.この3月からは,ワールドワイドでもIE4に対応したSBSが出荷されます(編注:昨年11月発売のものはIE4には未対応だった.もちろん今回の日本語版はIE4に対応している).

<将来展望>

-NT5.0ベースのSBSの予定はどのようになっていますか?

 NT5.0が出た後に,NT5.0に最適化したSBSが出る予定です.

-マイクロソフト社は,ここのところエンタープライズ向け(大規模向け)の製品に力を入れてきたように見受けられましたが?NT5.0も,ディレクトリーサービスなどの提供も行う,エンタープライズ向けのOSなのではないですか?そして,SBSはマイクロソフト製品としては,異質なものではないのですか?

 そういう意味では,だからこそSBSという製品が出てきたと言えます.NT5.0を単体で見ると,拡張された機能を見てエンタープライズ向けと,とらえる人もいると思いますが,マイクロソフトは小規模向けも重要視しています.SBSによって,NTがどんな規模のシステムにも対応できるネットワークOSであることを認識していただけるかと思います.

-SBS対応のアプリケーションをマイクロソフト社が発表する予定はありますか?

 サーバープラットホーム以上のアプリケーションを発表する予定は,現時点ではありません.SBS市場が活性化すれば,SBSに特化したアプリケーションがどんどん出てくると思いますので,マイクロソフトはそれをバックアップしていくような形をとりたいと思います.

-アプリケーションをインストールすれば,管理ツールに組み込まれるようにできるということですが?

 そのためのSBS SDK(Software Development kit)が,1998年1月のMSDNに含まれています.そのほかにも,SBSのクライアント側のインストールの時に,SBSのクライアントアプリケーションと同様に自動インストールを可能にするSDKもあります.

-ありがとうございました.


BackOffice Magazine 1998 May 1998年5月号掲載