実践
Windows Terminal Server
後藤 志磨子
 NTのマルチユーザー機能は,NT Serverの次期バージョン5.0では標準で組み込まれる予定です.この章では,7月末に公開されたWTSのベータ版「Windows NT Server 4.0[Terminal Server Edition]日本語プレリリース版」を使用して,その機能を実際に見てみます.



WTSのセットアップ
 まずはサーバーのセットアップですが,推奨されている通り,ドメイン内のメンバーサーバーとしてインストールします.

<図1> WTSをインストールしたPC
◆ 機種=DELL DIMENTION XPS H266
                 CPU:Pentium II 266MHz
                 RAM:128MB
◆ インストールした環境
      ドメイン:GOT(メンバーサーバーとして)
      コンピュータ名:BOM_GOTOH2
      (IPアドレスは,固有のものを設定)
 
 図1のPCにはすでにWindows 98が入っていますが,デュアルブートでWTSをインストールすることにしました.CD-ROMを挿入すると,自動的にプログラムが起動し,「サーバーセットアップ」「Win32クライアントセットアップ」などの選択肢が現れます.ここでは「サーバーセットアップ」を選択し,インストールを開始しました.
● インストールの実行
 インストール自体は,通常のNT Serverとほとんど変わらず,スムーズに行えました.
 気を付けた点は,ライセンスモードの選択の際に,「同時使用ユーザー数」ではなく「接続クライアント数」を選択することぐらいです(WTSでは,接続クライアント数を選択しなければいけないことになっている.このベータ版では,無効化されていなかった).次に,「Terminal Serverに接続するWindows Terminal Serverデスクトップ数」を指定するよう求められたので,10と入力しました.
● インストール後の再起動
 インストール中に,Administratorのパスワードを設定しましたが,それはこのメンバーサーバーのマシン自体にログオンする(ログオン時のダイアログボックスで,ドメインとしてコンピュータ名である「BOM_GOTOH2」を入力する)際のAdministratorです.そこで,GOTドメインにログオンする際のユーザーアカウントを,WTSを利用するために新たに作成しておきました(Administratorと同じ権限を持つユーザー「hydra」を作成).
※ユーザーアカウントを新規作成しなくとも,GOTドメインのAdministrator権限でログオンすれば済む問題ではありますが,操作を整理しやすくするために分けることにしました.
 再起動後,hydraアカウントでログオンします.背景が真っ黒の,Windows Terminal Server独特の雰囲気の画面が立ち上がりました.
 次に,「スタート」-「プログラム」-「管理ツール(共通)」-「Terminal Server管理ツール」を起動してみます(図2).この画面が,WTSの管理では中心となるものです.

<図2> WTSの壁紙と,Terminal Server管理ツール
図2-2.jpg (25625 バイト)

 

クライアントのセットアップ
● サーバーにて,クライアント用FDを作成
 さきほど見たように,CD-ROMからでもクライアントのインストールは行えそうですが,サーバー内のメニューにもクライアントセットアップ用FDを作成できる個所があります(これで,CD-ROMドライブがないPCもクライアントマシンにできる).
 「スタート」-「プログラム」-「管理ツール(共通)」-「Terminal Serverクライアントクリエータ」を選択すると,「インストールディスクセットの作成」が開きます(図3).ここで,Windows 95/NT Intel版,およびWindows NT Alpha版用にFDを作成することができます.さっそくIntel版のFDを作成しました(1枚).

<図3> Terminal Serverクラアントクリエータ
図2-3.jpg (19819 バイト)

● クライアントマシンにインストール
 作成したFDを,GOTドメイン内のPC(Windows NT Server 4.0)に挿入して,FD内のsetup.exeを実行します.
 簡単な手続きで,インストールは進みます.途中で図4のようなメッセージが出ましたが,ここでは「いいえ」を選択し,セットアップを進めました.

<図4> 1台目のクライアントインストール中に出た
図2-4.jpg (20578 バイト)

 セットアップが終了して,FDの中のファイルを見てみると,setup.ini(設定ファイル)に書き込みが加わっていました(タイムスタンプが変わっていた).
※2台目以降のクライアントのインストール時には,図4のメッセージは表示されませんでした.
● クライアントの起動
 「スタート」-「プログラム」-「Terminal Serverクライアント」-「Terminal Serverクライアント」を選択すると,接続先のサーバーを選択するダイアログが表示されます(図5).サーバーと解像度を選択し,「接続」を押すと,図6のログオン画面が表示されます.まずは,さきほどのhydraアカウントでログオンすると,WTSのデスクトップが,1つのウインドウ内にアプリケーションとして起動しました(当然,壁紙もhydraアカウントで設定していたものと同じ).ここで,ドメインユーザーマネージャを起動し,GOTドメインに新規で「ope」(オペレータの意)というユーザーアカウントを登録します.

<図5> 接続するサーバーを選択
図2-5.jpg (23692 バイト)

<図6> サーバーへのログオン画面がウインドウ内に出現
図2-6-500.JPG (34564 バイト)

 WTSのドメインユーザーマネージャを開くと,各ユーザーのプロパティとして,新しい項目が増えています.ユーザーのプロパティを開くと「構成」ボタンが追加されていますので,それを押すと,「ユーザー構成」が開きます(図7).ここで,WTSへの接続に関するユーザーの個別の設定を行うことができます.

<図7> ユーザーのプロパティとして新たに追加された
図2-7.JPG (36185 バイト)

 ログオフ後,新たに「ope」でログオンします.ope用の個人用設定が作成され,デフォルトの壁紙およびアイコンの並びで画面が起動します.今後の操作で分かりやすいように,壁紙などをope用に設定しました(図8).


<図8> 壁紙を設定し,わかりやすくする
図2-8.JPG (25649 バイト)
 

 クライアントのセットアップは,このようにあっという間に終了しました.

機能の確認
● 「ログオフ」と「切断」
 ログオンについては,通常のNTでのログオンとそう変わりありませんが,接続の終了に関しては,WTSシステムにおいては「ログオフ(log off)」と「切断(disconnect)」があります(図9).

<図9> 「ログオフ」と「切断」
図2-9.jpg (45239 バイト)

 日本語だけでは意味が取りにくいですが,ログオフが通常の終了の方法,すなわちNTのセッションを終了する方法なのに対し,「切断」は,現時点で突然接続を断ち切る方法です.「切断」を選んだ場合は,その時点で実行中のアプリケーションなどの状態が保存され,次回接続した際に,再びその続きから行うことができます.
 「スタート」-「ログオフ」を選択すると「ログオフ」となり,「スタート」-「切断」もしくは,右上の「×」をクリックしてWTSのウインドウを閉じると「切断」になります(図10).

<図10> 「切断」を実行
図2-10.jpg (49480 バイト)

 アプリケーションを実行していたときに,何らかの障害が起こり,サーバーとクライアント間の接続が断ち切られたときにも「切断」が適用されますので,便利な機能です.
 「切断」されたクライアントの情報は,「Terminal Server管理ツール」に「disc」として残っています(図11).

<図11> 「切断」ユーザーの情報は保持される
図2-11.jpg (31042 バイト)

 hydraとopeで,IMEの設定が別々になっていることを確認します.
 ここでは,「たくや」の漢字変換で,hydraでは「拓也」,opeでは「卓也」が優先的に変換されるように学習させ,それぞれが設定を保持していることを確認しました.
● アプリケーションへの接続の制限
 「スタート」-「プログラム」-「管理ツール(共通)」-「アプリケーションセキュリティ」で,クライアントがアクセスできるアプリケーションに制限をかけることができます(図12).デフォルトでは,「セキュリティ」が「無効」になっていますので,制限なしの状態です.これを「有効」にすると,クライアントはここに書き込んである以外のアプリケーションを使用することができなくなります(図13).

<図12> アプリケーションセキュリティの設定
図2-12正.jpg (67678 バイト)

<図13> 壁紙の編集さえできない
図2-13.jpg (22501 バイト)

● 接続を容易にする設定
 上記のように,接続→ログオン→アプリケーション起動,という方法以外にも,アイコンをクリックするだけでWTS上の特定アプリケーションに接続できるような設定が可能です.
 クライアント側で,「スタート」-「プログラム」-「Terminal Serverクライアント」-「クライアント接続マネージャ」を起動します(図14).「ファイル」-「新しい接続エントリ」で,接続エントリを作成することができます.図14では,すでに2つのエントリが作成されています.一度作成したエントリは,拡張子cnsのファイルとしてエクスポートすることができ,ほかのクライアントの「クライアント接続マネージャ」でその設定を読み込む(インポートする)ことができます.

<図14> クライアント接続マネージャ
図2-14.jpg (21092 バイト)

 「ファイル」-「新しい接続エントリ」を選択すると,図15のウィザード画面が現れ,あとはウィザードの通りに設定していきます.

 

<図15> エントリ作成のウィザード
図2-15.jpg (27722 バイト)

 作成した後に,設定を確認・変更したい場合には,エントリを右クリックして「プロパティ」を選択すると,図16のような設定が確認できます.

<図16(a)> エントリのプロパティ その1
図2-16a.jpg (28219 バイト)

<図16(b)> エントリのプロパティ その2
図2-16b.jpg (27064 バイト)

<図16(c)> エントリのプロパティ その3
図2-16c.jpg (31597 バイト)

 作成したエントリは,設定した任意のプログラムグループ(「スタート」-「プログラム」-「Terminal Serverクライアント」など)からアクセスできますし,デスクトップにショートカットを作成することもできます(図17).

<図17> エントリの起動方法
図2-17-500.JPG (23880 バイト)