ほんのむし


葉月の旬本 「こわ〜いおはなし」

 私は怖がりです.ということは以前「と・と・と月記」でも言いましたが,夏はその恐怖心がいちばん大きくなるときです.なぜなら,わたしにとっての3大恐怖がすべて出そろうからです.3大恐怖とは,

1.ゴキブリ
2.おばけ
3.…?
 
二つまでしか思い出せませんでした… 


 まず,ゴキブリ.もう,この文字を書くのさえもおぞましい!! 嫌いとか,なんとか言う前に,とにかくアレは恐怖です.それゆえ,殺すこともできず,逃げ回るだけです.「××ホイホイ」とか使えば? と言われますが,おそらくそれにアレがひっかかってたら,私はそのホイホイに触ることができないでしょう.

 だいたい,許せないのは,そういったアレ退治用製品には,何故アレの絵が描いてあるんだ(しかもムチャクチャリアルに)!! その絵のおかげで,その製品に触るのすらイヤになる….そう思いません?

 それから,おばけ.うん,こわい,ただただ,こわい.でも,わたし,どういうわけか霊感はゼロです.見たことないもん一度も.でも,こわい.


 で,霊感はないけど,わたし,しょっちゅうデ・ジャヴを体験します.つい最近は,デ・ジャヴかどうかわからないけど,同居人と同じ夢を見ていたらしい….

 その日の明け方,夢を見ました.たいして衝撃的な夢ではなかったので,ぼんやりしか覚えてません.たしか,引越しをして「あ〜けっこう良い部屋みつけたね.でもこの部屋,ベランダがないね」というような話を同居人としていたような夢だった….

 そして,その日の夜,同居人が言いました.

「あ,アンタの顔見たら思い出した.きょう,夢見たよ.このうち出て行かなきゃならなくて,引っ越す夢.それで,『あ〜,いい部屋だけどベランダないね』なんて話してたんだよね」

 …,なんか,ふしぎな気がしました.同じ夢を見てたのか,それとも同居人がこう言うことをすでに体験してたのかしら…?


 会社でもよくあるんですよ.「あっ,この場面,前にもあった.ここで,こういうふうに,この人に説教されてた…」.

 ははは,これは単にいつも同じような失敗をしてるだけか…



 
あっ,今月は旬の本とぜんぜん関係ない話になっちゃった….『幽霊たち』といっても,幽霊なんて出てこないんです.でも,それより,もっと怖いことが書いてあるんだけど…

■■このひと月で読んだ本■■
「幽霊たち」,ポール・オースター(柴田元幸訳),新潮文庫
「ムーン・パレス」,ポール・オースター(柴田元幸訳),新潮文庫
「MASTERキートン(3〜6) 」,勝鹿 北星 作,浦沢 直樹 画,小学館

「物陰に足拍子 (第3
,4巻)」,内田春菊,角川文庫



文月の旬本 「おばあちゃん子」


 小さいころの思い出は,おばあちゃん.

 その頃はきょうだいが多いにもかかわらず,あまり相手にされませんでした.その年頃ではよくあることで,上の姉たちは自分たちの年代で遊ぶことが楽しいわけで,私のような
ちっこいのがちょろちょろとまわりをうろつくのがイヤだったのでしょう.

 それはともかく,うちのおばあちゃんは最高の人だと,今もやっぱりそう思います.とても「やさしい人」だったとか「人格者」だったというわけではないのですが,強烈な個性で人をひきつける人だった.

そんな彼女は明治の女.群ようこの
「あなたみたいな明治の女(ひと)」を読んで,ふっ,とおばあちゃんが懐かしくなった私です.

 お酒もたしなみ,タバコものみ,コーヒーもアイスクリームも大好きで,怒るときには全身で怒り(なんか,やかん投げつけられた記憶があるような…),寂しいときには「さみしいんじゃぁ」と素直にことばにし,楽しいときには思いっきりはじける! 選挙カーが来ると必ず窓から手をふって,「ありがとう,おばあちゃん」という拡声器からの声に喜んだりするとこなんか,とてもかわいい.

 おばあちゃんみたいになれるとも思っていないけど,一つだけ見習いたいこと.それは,

「90歳になっても新しいモノをどんどん取り入れてたこと」

 周囲の雑音に惑わされることなく,アタシも興味のあること新しいことをガンガン自分の中に入れていきたいもんだ!!
(と,異常に気合が入っているのは先月ついに三十路に突入したからかしら…イヤン)


■■このひと月で読んだ本■■
「あなたみたいな明治の女(ひと)」,群ようこ,朝日文庫
「アトランティスのこころ(下)」,スティーブン・キング,新潮文庫
「日本語を反省してみませんか」,金田一春彦,角川書店
「ホンモノの日本語を話していますか? 」,金田一春彦,角川書店
「ポーの一族」,萩尾望都,小学館
「物陰に足拍子 (第1,2巻)」,内田春菊,角川文庫




水無月の旬本 「原点にカエル」


 むかしは,なにかにつけて反抗的でした.先生や両親はもちろん,日本という国に対しても,わけもわからず反抗していたようです.そんな私は,オリンピックなどで日本なんか応援しませんでした.日本が負ければ「やっぱり日本なんてね…」と考え,勝てば勝ったで「は,まぐれじゃん」と思っていました(はぁ,つくづくいやなガキ…).

 そんな私が今では,日本大好き人間.ワールドカップでも絶対日本応援するし,オリンピックでヤワラちゃんが優勝したときなんか,感動してウルウルしてしまった.はて,なんて変わりよう・・・?

 この転機は,高校生くらいのときに起こりました.今でもはっきり覚えています.なにげに読んだ1冊の本
「父,こんなこと」.幸田露伴の娘の幸田文が,露伴の最期とそれまでの思い出を綴った随筆です.で,この本によって私の中の何が変わったかっていうと,

「あ〜,こんなきれいなことばのわかる人間に生まれて,あたしったらなんて幸せ」

ってな具合です.きれいなことばとは,つまり日本語.

 今回,改めて読み直してみると,幸田文の文章はありゃ江戸弁だな.つきはなしたような,とぎすまされたような,それでいてそのことばの後ろに切なさがある.『凛』ということばが良く似合う.

 まっ,そういうこと.本1冊で人生観ががらりと変わるなんて,あたしったらなんて単純.

 そういえば,ちいさいころはテレビとか漫画とか見るたびに将来なりたいものが変わってたなぁ.
「エースをねらえ」を見ては「テニス・プレーヤになる!」
「白のファルーカ」を読めば「ダンス・スケートの選手になる!」
近藤真彦を見ては「マッチのお嫁さんになる!(うわっ,今思うとはずかしっ!)」



■■このひと月で読んだ本■■
「父,こんなこと」,幸田文,新潮文庫
「猫ばっか」,佐野洋子,講談社
「アトランティスのこころ(上)」,スティーブン・キング,新潮文庫



皐月の旬本 「ばかぼん?」

 旅行にでかけて,電車の中で読む本がないことに気が付き,着いた駅の近くの本屋に駆け込んで何気に手にしたのが「バカのための読書術」という本でした.最近,技術書の内容がさっぱり頭に入らないので,もしかしたらなにか良いヒントがあるかもしれないと思って購入したのです.が,結局,な〜んにも役に立ちませんでした.これは,何が言いたい本だったんだろう.筆者が読書家でちょびっと頭がよろしい,ということが言いたかったのだろうか? それにしても,「バカのための…」と言いながら,出だしにけっこう小難しいことを述べているのは,彼が言うところの「バカ」には読ませたくない内容なのかもしれない.

 そんなわけで今月は「ばか」ということばがわたしの旬となりました.次に手にしたのが
「まれに見るバカ」.これは,けっこうおもしろかったです.最初っから「わたしはバカが嫌いだ」というように,とてもわかりやすい導入.バカをこきおろしている本です.ここでいう「バカ」はお勉強ができるできないではなく,人間的な「バカ」を指しているので,わたしも頷くことが多かった.「そうそう,こういうバカいるよねぇ」という風に.

 で,結局「人間てのはバカな生き物だ」というようなオチになり,じゃぁ,人間ってなんなのさ? ということで手にしたのが
「人間とはなにか」という本です.これは,マーク・トウェインが書いたもので,その主題は「人間も一つの機械にすぎない」という,彼ならではのpessimismが爆発していました.pessimisticとはいうものの,的を射ていることも多々あります(あ〜,でも「トムソーヤの冒険」をテレビで見ていたころは,彼がこんなにもペシミストだとは思っていなかった…).

 まぁ,なんにしても,「バカ本」は売れる.なぜなら,人間は決して自分が「バカ」だとは思わないから,「バカの事例」を見て,頷いたり,笑ったり,もしもその事例が自分にあてはまろうものなら,「この本がバカだ」なんて具合に怒ったりできて,単純に楽しめるからです.って思ってるのはわたしだけ?

■■このひと月で読んだ本■■
「バカのための読書術」,小谷野敦,ちくま新書,ISBN 448005880X
「まれに見るバカ」,勢古 浩爾,洋泉社,ISBN 4896916018
「人間とはなにか」,マーク・トウェイン,岩波文庫,ISBN 4003231139


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