EDS Fair 2001 現地レポート
(4) 日立製作所エンタープライズサーバ事業部が設計サービス事業に参入,論理最適化ツールも外販
メインフレームやサーバ,ネットワーク機器などを開発している
日立製作所エンタープライズサーバ事業部
は,テスト設計サービスの提供と論理最適化ツールの外販を開始した.メインフレームなどの開発で蓄積したノウハウをもとに,顧客企業のシステムLSIのテスト設計を支援する.また,社内で実績を積んだ自社開発のEDAツールを外販する.設計自動化技術や実装技術,テスト技術などについては,大型コンピュータ開発の過程で生まれた技術が,何年か後に,一般の産業機器や民生機器,半導体の開発に転用されるケースが多い.たとえば,米国IBM社も
テスト設計サービスの提供
やEDAツールの外販を行っている.「事業モデルは,IBM社の利用技術外販の考え方に近い」(日立製作所エンタープライズサーバ事業部 DA開発部).
テスト設計サービスについて,同事業部は
米国Logic Vision社
と提携した.まず,Logic Vision社のBIST(built-in self-test)を導入する顧客を中心にテスト設計サービスを提供する.具体的には,BIST導入時の評価(BISTの組み込みと故障検出率の算出),テスト設計フローの構築,BIST用ライブラリの作成と検証,テスト設計の代行,テスト・ポイント挿入技術の提供,テストを考慮したタイミング設計などのサービスを行う.
同事業部では,1995年ころ,テスト設計をスキャン設計中心から自社開発のロジックBIST中心に切り替えて成果を上げたという.今回,自社開発のBIST技術を提供するのではなく,Logic Vision社と提携した理由は,いくつかある.すなわち,@Logic Vision社が他のIPベンダやEDAベンダよりBIST技術で先行していたため,A同事業部内では,スキャン回路について,現在多くの半導体メーカが採用しているMAXスキャンと異なる方式を採用しており,同事業部の技術をそのまま顧客に受け入れてもらうのがむずかしいためなどである.ただし,スキャン回路の方式は異なるが,それ以外のBISTの利用技術(たとえばテスト・ポイント挿入など)については,同事業部のノウハウをそのまま生かせるという.サービス内容にもよるが,費用は数100万円から.テスト設計サービスの問い合わせ窓口は,Logic Vision社の国内代理店である
パシフィック・デザイン
が担当する.
同事業部が外販を始める論理最適化ツール「BN-1」は,論理構造(ロジック・コーン)に含まれる各パスの伝播遅延時間ができるだけ均一になるように調整して,論理全体の遅延時間を短縮するソフトウェアである.既存の論理合成ツール(Design Compilerなど)と組み合わせて使用する.こうした技術を同社では「RTLモーフィング」と呼んでいる.
論理構造の逐次改善を重ねる従来の論理合成アルゴリズムでは,ロジック・コーンに含まれる各パスの伝播遅延時間にバラツキが生じ,ロジック・コーン全体の遅延時間が短縮しないことが多かったという.同事業部が開発した手法では,あらかじめ論理構造を解析してどの程度の遅延時間になるかを見積もっておき,その見積もり値を目標に論理回路の最適化を進める.なお,テクノロジ・マッピングの機能は含まれていない(既存の論理合成ツールの機能を使用する).
現在,論理合成ツールに与えるタイミング制約は,要求仕様にもとづいて決められることが多く,詳細な論理構造の特性などはあまり考慮されていない.つまり,その要求仕様を実現可能かどうかは,論理合成を行ってみないとわからない.一方で,与えるタイミング制約が厳しすぎると,適切な回路が生成されないという問題がある.そのため,与えるタイミング制約のさじ加減が論理合成ツール運用のノウハウの一つになっている.BN-1を利用すると,こうした問題を緩和できると思われる.
BN-1の価格は1,380万円.販売は
セイコーインスツルメンツ
が担当する.
同事業部では,このほかにも社内開発のツールの外販を計画しているという.
日立製作所エンタープライズサーバ事業部が発売する論理最適化ツール「BN-1」
日立製作所エンタープライズサーバ事業部 DA開発部 部長の長尾葉介氏
同部グループリーダ 主任技師の中島裕之氏
同部 技師の河野安志氏
同部グループリーダ 主任技師の檜山徹氏
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