DesignWave笑劇場
No.11

IT野球
作・岸本陸一

レポーター:
監督,見事な逃げ切り勝利おめでとうございます.8回までの大量10点リード,まさにIT野球の勝利と言えるでしょう.首位チームに3連勝し,これで破竹の13連勝.本当におめでとうございます.

監督:
ありがとうございます.やっとIT野球の成果が出てきました.4月の首位から転落し,6月に最下位になったときには今年もダメかと思いました.7月に思い切ってIT野球を導入し,作戦に必要なデータ管理の徹底を行いました.うちのチームはもともと何も考えない力まかせの野球でしたので,情報化が大きな効果をあげました.

レポーター:
監督はベンチからノート・パソコンを使って選手にサインを送っておられますが,あれはどのような仕組みなのですか?

監督:
ホームページですよ.ソフトウェアが自動的にホームページに指示を書き込みます.選手は試合中でも全員ケータイをもっていますので,ホームページを見て指示通りにプレーします.

レポーター:
ソフト開発に苦労されたとうかがってますが?

監督:
わたしは捕手出身でしょ.いままで何人もの名捕手を育成したでしょ.教え子に作らせたんですよ.わたしはパソコンのことはさっぱりわからんので.

レポーター:
ところで,9回表に9点を失い,1点差までつめよられたときの継投は見事でした.ピッチャーを打者ごとに代えるだけでなく,いっしょにキャッチャーまで代えた采配がズバリとあたりました.でも,9回に9点を失ったときには,さすがの監督もあわてておられたようですが.

監督:
いゃあ,9回表にノート・パソコンが動かなくなりましてね.わたしは素人でしょ,あせりましたよ.あせってるうちに9点も取られて困りました.IT野球はノート・パソコンだけ見てるでしょ.パソコンが壊れると指示がまったく出せないんですよ.

レポーター:
では9回表のピッチャーとキャッチャーを同時に代えた作戦はパソコンの助けなしで?

監督:
そんなわけないでしょ.IT野球はすべてノート・パソコンの指示ですから.

レポーター:
ノート・パソコンを直されたということですか?

監督:
わたしが直せるわけないでしょ.ただ画面に,こう書いてあったんですよ.“バッテリーを入れ替えてください”.


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