DesignWave笑劇場
No.5

恋はタイミング
作・岸本陸一

少女A:
彼ったらわたしのこと,なまってるって言うんです.なまるのはルール違反だとまで言うんです.ひどいと思いませんか.わたしだって,好きでなまってるんじゃありません.わたしは重荷を背負って生きてるです.

それに,待ち合わせのとき,彼よりうんと先に来てないと,すごく怒るんです.時間にすごくうるさいんです.でも,わたしはすごく遠くから来ているから,そんなに早くこれないんです.いろいろな抵抗をふり切って会いに来てるのに.

帰るときも彼だけ先に帰っちゃって,わたしはその場でしばらくじっとしてなくちゃいけないんです.これって,つらいんです.

彼だって欠点はいっぱいあるんです.すごくせっかちだし,雑音をいっぱい出すし,仲間と歩調が合わないし.それに年々速くなってきてるんです.大食いだし,すぐ熱くなって,最後にはプチッと切れるんです.ひどいでしょ.自分が基準だって言って,うぬぼれてるんです.

昨日言われたんです.最近太ったって.わたし,立ち直れない.わたしはなまりを直したかったし,それに待ち合わせにも遅れたくなかったし,無理して太ったんです.好きで太ったんじゃないんです.彼のために太ったのに.

わたし,遅刻して怒られるのに我慢できなくて,さよならっていったら,彼,急に怒り出しちゃって.逆切れして,わたしのこと脅すんです.遅刻した罰にバッファ挿入してやるって.わたし,バッファ挿入だけはいや.タイミング制約だけでもうんざりなのに,バッファ挿入なんて最悪.

わたしだって頭にきて言ってやったわよ.あんたなんかゲーテッドされちゃえばいいのよって.そしたら,少しは大食いが直って,冷静になって,切れないでしょって.

わたしたちって,何度も一からやり直したんですよ.20回以上も.でも,それでも,タイミングがあわないんです.わたしたちって,うまくやって行けるんでしょうか.

カウンセラー:
多分,むずかしいと思いますよ.データ子さんとクロック男さん.


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