DesignWave笑劇場
No.7

金属ウイルス
作・岸本陸一

ニュースキャスター:
半導体チップに感染するとして,全世界に衝撃を与えました金属ウイルスの問題も,少しずつ解決の方向に向かいつつあります.金属ウイルスの発見者である半導体金属研究所の金田博士にその後の状況をお聞きしたいと思います.

金田博士:
金属ウイルスは金属を伝わって感染するため,光ファイバを用いて感染経路を遮断することができます.おもな感染経路であるマウスのケーブルを光ファイバ化することにより,応急処置ができます.また,シリコン・チップのパッケージ内で,いったん光変換を行うことによって,より安全性が高められます.ただし,これでも万全ではありません.

ニュースキャスター:
どのような課題が残されているのでしょうか?

金田博士:
金属ウイルスは進化の速度が非常に速いのです.光ファイバを通過できる光金属ウイルス,ワイヤレス環境でも感染可能な無線金属ウイルスなどに進化する可能性が考えられます.

ニュースキャスター:
根本的な解決策であるワクチンの開発状況はいかがでしょうか?

金田博士:
残念ながら,まだメドがついていません.ただし,わたしが開発した人間型ロボットである愛子1号に対する応急処置の方法が見つかりました.金属ウイルスに感染して発病し,呼吸が停止しても,すぐに応急処置を行えば,蘇生できます.

ニュースキャスター:
その応急処置をテレビの前のみなさんにもご覧いただきましょう.金田博士,よろしくお願いします.

金田博士:
愛子1号の口の中に設置されたデバッグ用のUSBポートに感染源であるマウスを接続します.ご覧ください.愛子1号はすぐに発病し,呼吸が停止しました.ここで,応急処置を行います.ニュースキャスターさん,応急処置用に用意したもう一つのマウスを感染源のマウスの上に置いて下さい.はい,離して.はい,置いて.離して,置いて.はい,もう一度.

ニュースキャスター:
こんなことで助かるんですか?

金田博士:
呼吸が停止している場合には,マウス・トゥ・マウスですよ.やっぱり.


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