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表紙

アンテナの手作りがやさしくなる楽しくなるAntenna Simulation Technique
パソコンによるアンテナ設計


はじめに

 われわれハムが自作のリグから電波を出すことをほとんどしなくなってしまった今,自作の道は“アンテナ”にしか残されていない,という人がいます.確かにハムのアンテナは,あり合わせの材料でできあがり,こんなものからよく電波が……と思うほど手軽に自作の感動を体験することができます.
 しかし作られてしばらくは持ち主がQSOに夢中になるあまり,その存在すら忘れ去られてしまう“アンテナ”ですが,「どうも飛びが悪い」とか「なんであいつの5エレに負けるんだ?」などという疑問が持ち主に浮かんだ瞬間から,ハムと“アンテナ”との友としてのほんとうのおつき合いが始まることになるわけです.
 “アンテナ”とつき合うにはまず“アンテナの声”を聞いてあげなければなりません.そうすることによってアンテナは,どうして飛びが悪いのか,そっとあなたに教えてくれるかもしれません.
 私もかつてこの“声”を聞くために,さまざまな参考書を読みあさりました.しかし,なかなか自分の求めている製作例の載った本には巡り会えませんでした.
 ところがいまから10年ほど前,アメリカのアマチュア無線連盟ARRLの機関誌QST誌に,パソコンを使ってアンテナの飛びを解析できるプログラムの記事が載りました.このプログラムは,たまたま当時わたしが使っていたApple IIという8ビットのパソコンで動くものでしたので,さっそく作者であるAJ3Kに手紙を出して,そのプログラムをわけてもらいました.
 そのころのパソコンは,現在のような汎用大型機並の演算能力を持つマシンとは異なり,桁違いに動作が遅く,とても任意形状のアンテナ解析などできるものではないと思っていましたから,このプログラムが画面上でスイスイ動くのを初めて見たときは驚いてしまいました.
 このことがきっかけとなって,その後のわたしのアンテナの自作には,この種の解析プログラムが欠かせないものになりました.
 この10年間でパソコンの能力も格段に進歩し,ハムを趣味にしている多くの技術者が,いろいろな手法に基づく解析プログラムを発表するようになり,なかにはフリーウェアやシェアウェアのソフトとして頒布されるものも多くなっています.
 このように,電波を“見える”ようにする上で,パソコンによるアンテナ解析は大きな力となり,ハムライフをより一層楽しいものにしてくれるでしょう.

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 本書は,これらのアンテナ解析技法をていねいに解説し,アンテナの自作や,新しいアンテナ実験のお役に立つようにまとめました.
 また,解析ソフトそのものを自作してしまったというわが国のハムもついに登場するに至り,MMPCの作者であるJA1WXB松田幸雄氏と,YSIMの作者であるJA1QPY玉置晴朗氏に,それぞれ第5章,第9章をご担当いただきました.
 本書ではできるだけ多くの事例を取りあげ,読んでいるだけでもコンピュータで解析しているような気分が味わえるように工夫してみました.また具体的な数値結果も多く載せて,自作のお役に立つようにもしたつもりです.
 さらに海外で作られたPDSやシェアウェア,フリーウェア・ソフトなどは,当然英語の操作マニュアルしかありませんので,ある程度,日本語マニュアルとしても使えるようにページを割いています.  本書に載せきれなかったアンテナや,ご自身のアンテナ解析には,ぜひ添付のプログラムや配布サービスのソフトを実際に使ってみてください.
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 「近頃のハムは,パソコンの中なんかでアンテナをいじって…」などという声もどこからか聞こえてきそうですが,十分に解析をした後は,ぜひ体を動かして,思い通りのアンテナを工作してみてください.もしかしたら,作っている途中でアンテナの“声”が聞こえてくるかもしれませんよ.

編著者 JG1UNE 小暮裕明


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