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Windows NT スタートアップ

概要

 この章から、Windows NT Serverが登場します。( PCサーバの組み立ては、あまり興味のなかった方、お待たせしました。) Windows NT Serverのセットアップでは、いくつか注意するところがありますが、基本的には難しくない作業です。この章では、インストール、初期設定、サービスパックの導入など、Windows NTの最初の導入について説明していきます。

Windows NT Server ってどんなOS

 まず、Windows NT Serverをインストールする前に、Windows NT Serverとはどんなオペレーティングなのかみておきましょう。

 Windows NT は、Microsoft 社のWindows ファミリーの最上位に位置する本格的なマルチタスク、マルチユーザ機能をサポートした32ビットOSです。Windows NTが世の中にはじめて登場したのは、1993年に米国でリリースされたバージョン3.1からです。Microsoftのバージョンは他の製品系列にあわせるために、このようにほとんど意味がありません。

 Window NT 3.1は、機能や品質にいろいろ制限がありましたが、その後着実にバージョンアップやチューニングがなされ、 NT3.51辺りからPCサーバ用のOSとしては高い評価を受けるに至っています。

 199612月には、Windows95風のユーザインターフェースを備えた待望の最新バージョン4.0の日本語版リリースされました。その後、急速に普及を遂げているようです。本書もNT4.0をベースに解説します。

 

NOTE:

かなり以前から、次世代バージョン5.0がアナウンスされていますが、こちらの方はなかなか姿を表わしません。この本が店頭に並ぶ頃でも、NT5.0日本語版は登場していないだろうと思います。

 

 

サーバとワークステーションの違いは?

 Windows NTの製品には2系列あります。

 Microsoft社がサポートするネットワークモデルには、ワークグループドメインの2つがありま す。ServerWorkstationの一番大きな違いは、サポートするネットワークモデルとそのネットワークマネジメント機能の違いでしょう。

 ワークグループは、論理的なネットワークのグループで、Windows95でもお馴染みのピアーツーピアー形式のネットワークです。各マシンは、対等な関係だから、誰でも自由にワークグループを作れるし、そこに参加できます。ワークグループは、統一された管理体制を持っていないわけです。何のために集団化しているのか、実際のところよくわかりません。

 ドメインは、そのドメインに属すシステムからのログオンやアクセスはすべて統合されたセキュリティーデータベースを用いて管理されます。このドメインを構成するのに、最低1台のNT サーバが必要です。NTワークステーションでは、ドメインを構成できません。

 NTワークステーションでもサーバを運営できないのだろうか? サーバとワークステーションの価格差を考えると、こう思う人がいても不思議ではありません。しかし、Microsoft社純正のインターネットサーバであるIISサーバやBackOffice製品はNTサーバ用にしか提供されていません。サーバ用には、Windows NTサーバを選択するしかないようです。

 NTワークステーション自体は、Windows95より高い安定性を提供するクライアント機として存在しています。個人的には、NTワークステーションの方が、Windows95より安定していると思うのですが、基本的にどちらを使ってもほぼ同じです。マルチメディア周りは、Windows95の方が圧倒的に強いですが。

 本書では、PCサーバを使って、手作りSOHO環境を構築していきます。当然、サーバ用OSとして、NTサーバを使います。今後、単純に NTと呼ぶときは、Windows NT Server 4.0 のことだと思ってください。

NTはどこが特別なのか?

 NTと他のOSとの比較を少し見てみましょう。

アプリケーションのバグと運命を共にしない

 Windows95上では、怪しげなフリーウエアや体験版、ベータ版ソフトを使っていたら、そのバグが原因でシステム全体がフリーズした経験はありませんか? アプリケーション自体がアプリケーションのバグで勝手に落ちるのは当たり前だけど、何でシステムまで一緒に落ちる必要があるのだと不思議に思いませんか?

 OSの仕事のひとつに、メモリ管理も含まれています。ちゃんとしたOSは、あるアプリケーションが自由にシステムや他のアプリケーションが利用しているメモリ領域を参照したり書き換えられないように保護しています。アドレスを直接指定すれば、好きな番地を直接アクセスできたDOS、それが進化してきたWindows95には、耳が痛いところです。実際に、Windows95のメモリ保護機能は穴があって、未だ不完全なようです。もっとも、この点に関しては、MacOSもひどいものですが..

 NTは、見かけ上 Windows95にそっくりですが、内部構造はモダンな設計論理の基づいたいわゆるちゃんとしたOSに分類されます。完全なメモリ保護機能を備えているので、あるサーバサービスの調子が悪くなっても、他のサービスが連鎖しておかしくならないように設計されています。サーバ用OSでは、単なるマルチタスク機能だけでなく、しっかりした保護機能が求められます。その点で、Windows95MacOSは信頼性に欠けます。

 そうは言っても、NT自身には結構怪しいところがあります。原理的には信頼できるけど、実装上はちょっと不安という感じです。さらに、保護機構が厳しすぎて、パフォーマンスが上がらないという話も聞きます。NTだからと言って、完璧とは言えないようです。

Windows95は、誰が使っているか気にしない。

 Windows95MacOSは、個人利用、つまりOSの購入者しか使わないことを前提に作られています。だから、ハードディスクに置かれたファイルは、そのパソコンの前に座った人なら誰でも自由にアクセスできてしまいます。95は、誰が前に座ってパソコンを使っているのか全く気にしていないからです。作成した文章を他人に読まれたくなければ、自分で暗号化するなど対策を取る必要があります。

 サーバ機は、みんなで利用するコンピュータですから、当然多くの人が外部からアクセスしてきます。だから、アクセスしてきた人は誰か? 誰の所有のファイルをアクセスしているのか? などを把握できなければ成りません。その点で、NTはユーザを厳密に管理しています。基本的に、正しいパスワードを知らなければ、使うことすらできません。

UNIXと比べると..

 今まで、長い間 Windows/DOS ユーザだった方々でも、 UNIXと呼ばれるオペレーティングシステムの名前は聞いたことがあるはずです。UNIXは、サーバ用途のオペレーティングシステムの分野では、長い間、圧倒的に指示されてきました。現在のインターネットもUNIXテクノロジーをベースに築きあげられています。

UNIXは少し古い

 UNIXは、最初に生まれたのが70年代初頭です。それ以来数々の改良が成されて来ましたが、90年代のNTに比べると、やはり古いOSでしょう。90年代のOSのトレンドである、マイクロカーネル化やマルチスレッドライブラリのサポート、マルチプロセッサへの対応、C2レベルセキュリティーの実現を見ると、NTの方が進んでいます。

 しかし、UNIXの一番の問題は、その機能よりユーザインターフェースが古く成りすぎた所にあります。要するに、慣れて自由に使えるように成るまでに時間が掛かかり過ぎます。UNIX上にもX Window CDE/Motif などのグラフィカルユーザインターフェースが存在しますが、WindowsファミリーやMacOSのように洗練されていません。

 NT4.0は、Windows95とまったく同じインターフェースで運用できます。そのため、サーバ管理の初心者でも取っ付きやすいです。ただし、NTは簡単でUNIXは難しいと言い切ってしまうのは、どうかと思います。サーバを管理するためには、ネットワーキングの知識や理解が必要だからです。その点では、NTUNIXも同じですから、それなりの覚悟が必要ですよ。

 

コラム: UNIXの古さ

 UNIXの古さは、ls など極端に省略した標準コマンドに見ることができます。ls は、ファイル一覧を表示するコマンドで、list の略です。(ちょうど、DOSdirに当たります。)ls のように省略すると逆に覚えずらく、わざわざ使い難くする結果に成っています。しかし、テレターミナルの通信速度が110bps(一秒間に14文字程度)だった時代では、少しでもタイプ量を減らすための合理的なコマンドだった訳です。

 

 


以下省略.出版されている内容とは少し異なります.Copyright 1998 Kuramitsu Kimio


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