第3章 BackOffice SBSのセットアップ

 この章では,いよいよBackOffice SBSに適したシステム環境を紹介し,BackOffice SBSのインストールと初期設定について解説します.

3.1 BackOffice SBSに必要なシステム

3.1.1 システム本体の必要条件

 BackOffice SBSのセットアップに必要なコンピューターの必要条件は以下の通りです.

アーキテクチャ PC/AT互換機
CPU Intel Pentium 120MHz以上
または
DEC Alpha
メモリ 64MB以上
ハードディスク 2GB以上の空き領域
ディスク装置 CD-ROMドライブ
ディスプレイ 800×600ピクセルで256色以上表示できるグラフィックアダプタとディスプレイ
通信機器 モデムまたはISDN TA
その他 ネットワークアダプタ,マウス

 いずれも,Microsoft BackOffice SBS互換であることが必要です.つまり,Microsoft BackOffice SBSでの動作が保証されている製品であるということです.Microsoft BackOffice SBS互換製品の情報に関しては,マイクロソフトのBackOffice SBSページ http://www.microsoft.com/japan/bkoffice/sbs/ で,「対応ハードウエア」のページを確認してください.基本的にはWindows NT互換製品であれば使用できますが,従来のWindows NTよりもBackOffice SBSでは各種の自動設定機能がつきつめられたため,Windows NT互換製品の中にも一部BackOffice SBSで動作しないものがあります.

 また,BackOffice SBSでは複数のFAXモデムやTA(ターミナルアダプター)を利用することができます.なるべく複数のTAやFAXモデムを装備して,ダイヤルアップ接続用とFAX送受信用に分けると,ネットワークの運用が効率的になります.筆者の場合,FAXモデムとTAを1台ずつ接続し,FAX共有サービス用にはFAXモデム,ダイヤルアップ接続・着信用にはTAを使用しています.

3.1.2 BackOffice SBSを快適に使用する環境

 前項で紹介した条件は,あくまで必要最小限の最低条件です.実際にBackOffice SBSを快適に使用するためには,以下のような環境が必要でしょう.

CPU Intel Pentium Pro 200MHzまたはIntel Pentium II 233MHz以上
メモリ 128MB
ハードディスク 起動ドライブとして4GB
ディスク装置 16倍速以上のCD-ROMドライブ
ディスプレイ 800×600ピクセルで256色以上表示できるグラフィックアダプタとディスプレイ
通信機器 56Kbps対応FAXモデムまたはISDN TA
その他 100Base-TX対応PCIネットワークアダプタ

 BackOffice SBSは非常に重いシステムです.大量のメモリーとハードディスクを必要とします.BackOffice製品群を個別に使用する場合には非常にコストがかかりますが,反面,メールサーバー,Webサーバー,SQLサーバーなどをそれぞれ独立したサーバーマシンセットアップしますので,それぞれのサーバーにかかる負荷は小さくなります.いわゆる分散環境です.しかし,BackOffice SBSでは1つのサーバーマシンにすべてのサーバーソフトをセットアップしますので,サーバーとなるマシンへの負荷は非常に大きくなります.そのため,CPUも高速なもので無ければなりませんし,メモリーも64MB程度では頻繁にスワップが発生して快適とは言えません.

 ハードディスクも3GB以上は欲ページころでしょう.BackOffice SBSはすべてのサーバーを起動ドライブとなるCドライブにセットアップするため,2GBという容量はぎりぎりの容量といえます.

 ただし,BackOffice SBSではCドライブとなるパーティションの容量の限界は4GBです.これは,BackOffice SBSをセットアップするときにシステムはまずFATファイルシステムで起動ドライブのフォーマットを行い,BackOffice SBS起動用のファイルをコピーした後でNTFS(42)に変換するという方法を行っているためです.NTFSには4GBという区画の限界はありませんが,最初にフォーマットするFATファイルシステムのパーティションの限界が4GBなのです.起動ドライブ以外のパーティションは最初からNTFSでフォーマットできますので4GBという容量制限はありません.

 以上のような点から,起動ドライブにするハードディスクは3GBまたは5GB以上のものがいいでしょう.4GB程度のハードディスクを起動ドライブとすると,まずCドライブとして3GBを確保するため,残りが1GBという中途半端な容量になってしまいます.できれば,起動用ハードディスクは3GBととし,必要に応じてハードディスクを追加するのがいいでしょう.1台のハードディスクを集中的に使用するよりも,複数のハードディスクに分散したほうが処理速度,故障などの危険回避の両面で有利だからです.

 ディスプレイに関しては,高性能のディスプレイやグラフィックアダプタを用意する必要はありません.サーバーはアプリケーションソフトを利用するクライアントとは異なり,グラフィック能力は必要としないからです.

 ネットワークアダプタに関しては,必ずPCI対応のものにしてください.サーバー環境においてネットワークアダプタはもっとも頻繁にアクセスされるインターフェースですので,ネットワークアダプタをISA対応のものにすると,ネットワークアダプタへのアクセスがサーバー全体の処理速度の低下を招く場合があるからです.

 なお,サーバーではマルチメディアアプリケーションを使用することはありませんので,サウンドカードは不要です.

3.1.3 バックアップ装置

 バックアップ装置としてテープドライブも装備すべきです.必ずしもバックアップ装置がなければBackOffice SBSを使用できないわけではありませんが,実際の運用面を考えるとバックアップ装置は必須です.

 コンピューターのトラブルというとハードウエアの故障を重大なトラブルと考えがちです.しかし,実際にはデータが失われることが何よりも深刻なトラブルなのです.ハードウエアが故障しても,予算さえあれば修理したり新しい製品に交換したりすることが可能です.しかし,失われたデータは復元できません.たとえば,帳簿や重要な取り引きのメールが失われたらどうでしょうか? 顧客から預かった会計データを紛失したらどうなるでしょうか? 大変重大な問題です.趣味でコンピューターを使用するならともかく,ビジネスで使う以上はバックアップが必須なのです.

 バックアップ装置としてはテープドライブがいいでしょう.BackOffice SBSが標準対応しているバックアップ装置がSCSI接続のテープドライブであるというのも理由の1つですが,それよりも,テープは大容量で高速,安価なのです.バックアップデータ1GB当たりの単価を考えれば,テープドライブはほかのあらゆる記憶装置よりも圧倒的に安価です.また,CD-R,MOディスク,ZIPディスクなどの装置では,GB(ギガバイト)単位で扱うサーバーのバックアップには容量が小さすぎます.

3.1.4 サーバー専用機は何が特別なのか

 コンピューターのカタログを見ていると,非常に高価なサーバー専用機と,それ以外のコンピューターに大別できます.その価格は2倍以上も違います.BackOffice SBSを使用するためにサーバー専用機は必須条件ではありませんが,なるべく,サーバー専用機を使用することをお勧めします.サーバー専用機は通常のコンピューターに比較して,サーバーの用途に特化した以下のような特徴があります.

●高速である

 サーバー専用機は,カタログ上のスペックではほとんど違いが分からない…つまりCPUやメモリー容量,ハードディスク容量が変わらない…通常のコンピューターに対して,圧倒的に高速です.コンピューターの速度はCPUの速度だけで決まるわけではありません.メモリーのアクセス速度や周辺機器とのアクセス速度,アクセスタイミングなどが重要な意味を持ちます.サーバー専用機ではこのようなCPUと周辺機器のアクセスに贅沢な回路を使用しており,非常に高速に動作するように設計されています.Pentium II 300MHzの通常のコンピューターよりもPentium II 233MHzのサーバー専用機の方が高速であることはめずらしくありません.

●信頼性が高い

 サーバーがトラブルを起こすとネットワーク内のコンピューター環境全体が麻痺してしまいます.そこで,サーバー専用機には特に信頼性に配慮されています.

●メンテナンスしやすい

 サーバーでは複数のネットワークアダプタやSCSIアダプタ,ディスクアレイ装置を接続したり,ディスクの増設や交換を行ったりすることがよくあります.そのため,サーバー専用機ではメンテナンスをしやすいように特殊な配慮がされています.たとえば,CPUボードをドーターボードとして交換可能にしたり,工具無しで簡単にディスクの交換を行えたりします.また,上級機種ではサーバーを運用したまま(つまりBackOffice SBSを稼動させたまま)故障したハードディスクを交換するホットスワップ機能があるものもあります.

●サーバーならではの特殊機能がある

 前述のホットスワップのほか,不用意にサーバーをシャットダウンしたりハードウエアを取り外したりされないためのロック機能や,無停電装置への対応,電話回線やネットワークを通じて外部からリモートメンテナンスをする機能など,豊富な機能があります.

 いずれも,高価なサーバー専用PCならではの機能です.つい2,3年前まではこうしたサーバー機はディスクもメモリーもない本体だけで100万円,さらにシステムを増設して1セット150万円〜200万円もする高価なものでした.しかし,SOHO向けのエントリサーバー50万円程度から販売されています.最近ではSOHO向けにサーバー専用機とBackOffice SBSをセットにして100万円を切る商品も登場しています.サーバー専用機を導入しましょう.

3.2 BackOffice SBSのセットアップの前準備

3.2.1 周辺機器の装備と接続

 BackOffice SBSをセットアップする前に,いくつか用意すべきことがあります.

 まず,接続する周辺機器をすべて接続し,電源を入れてください.BackOffice SBSはセットアップの過程で周辺機器を自動認識し,必要なデバイスドライバを組み込みます.この自動認識機能を使用するために,増設カードや外部周辺機器…たとえばモデムや外付けドライブなど…はすべて電源を入れておきます.SCSIアダプタなどを増設する際にも,あらかじめ装着しておいてください.

 ただし,BackOffice SBSサーバーをゲートウエイとして使用するために2枚のネットワークアダプタを装着する場合には注意が必要です.どちらのネットワークアダプタをLAN向けの内向きに,どちらのネットワークアダプタをインターネット接続への外向きに使用するか自動的に判断できませんので,内向きのネットワークアダプタだけを装着しておいてください.外向きのネットワークアダプタはBackOffice SBSセットアップ後に手動操作で増設セットアップを行います.

3.2.2 ほかOSとの共存

 BackOffice SBSではセットアップを確実に行い,トラブルを防止するために,基本的にすべて自動でセットアップが行われて起動ドライブはNTFSでフォーマットされます.Windows NTでは起動ドライブのファイルシステムにWindows 98やMS-DOSと互換性があるFATファイルシステムとNTFSのどちらかをセットアップ時に選択できますが,BackOffice SBSでは強制的にNTFSを使用します.

 従って,Windows 98やMS-DOSとの共存は困難です.セットアップで不用意なトラブルを起こさないためにも,Windows 98やMS-DOSと共存させることはせずに,BackOffice SBSのセットアップ時にはハードディスクを再フォーマットして,クリーンな状態でBackOffice SBSをセットアップするようにします.

3.2.3 サーバー専用機の特殊性

 BackOffice SBSをセットアップする場合,一般的には付属のセットアップFDをAドライブにセットしてPCを起動します.これによってセットアッププログラムが起動して自動的にBackOffice SBSのセットアップが行われます.

 しかし,サーバー専用機の中にはこの方法でセットアップを行うとトラブルを起こす機種があります.たとえば,サーバー専用機に付属の専用のメンテナンスソフトを起動し,そのメンテナンスソフトのOSインストールメニューからBackOffice SBSをセットアップする必要がある機種があります.BackOffice SBSのセットアップ方法はWindows NT Serverに準じています(43).サーバー専用機を使用している場合には,PCに付属のマニュアルでWindows NT Serverのセットアップ方法をよく確認し,Windows NT Serverのセットアップ手順に従ってセットアップしてください.

3.3 BackOffice SBSのセットアップ

3.3.1 Setup Diskの起動

 BackOffice SBSはセットアップ中にコンピューターの機器構成を検査し,必要なデバイスドライバをインストールします.BackOffice SBSのセットアップを始める前に,必ずすべての周辺機器を接続して電源を入れてください.

 セットアップは3枚のSetup Diskから行います.CD-ROMドライブからOSを起動できるPCの場合,Windows NTではマスターCD-ROMを使ってFDを使用せずにセットアップを行うことができますが,BackOffice SBSではCD-ROMからセットアッププログラムを起動することはできません.必ずFDを使用します.

 BackOffice SBSをセットアップするには,Setup Disk 1をAドライブに挿入し,PCの電源を入れてください.これによってセットアッププログラムが起動します.画面に表示されるメッセージに従って,Setup Disk 2,Setup Disk 3とディスクを交換してください.CPUが1個のPCであれば1〜3の順番通り,CPUが複数搭載されたPCでは,Setup Disk 1→Setup Disk 3→Setup Disk 2→Setup Disk 3という順序になります.


<以下省略.文章,図版は出版されているものといくぶん異なります.
Copyright 1998 Okazaki Toshihiko>


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