第6章 ドライブの増設 BackOffice SBSのセットアップでは,すべて起動ドライブであるCドライブにシステムがセットアップされます.しかし,Cドライブが容量不足になって増設ドライブを使いたいというケースも多いでしょう.本章では増設ドライブの活用を紹介します. |
6.1 ドライブの増設
6.1.1 ドライブの増設の必要性
BackOffice SBSの動作条件として2GB以上のハードディスクという項目があります.しかし,実際問題として2GBのハードディスクではディスク容量が不足するのは目に見えています.ドライブの増設が必要になるのは時間の問題でしょう.とくに,ユーザーがデータを保存するユーザー用共有フォルダ,電子メールなどのOutlookやExchange Clientの情報が保存されるExchange Serverのインフォメーションストアやディレクトリーサービス,そしてホームページなどをWeb関連のファイルを保存するWebフォルダはみるみるうちにデータが大きくなっていくでしょう.
こうした状況でドライブを増設する必要が出てくるわけですが,BackOffice SBSのセットアップはすべてのシステムをCドライブにセットアップし,Dドライブ以降を活用するようにはなっていません.そこでDドライブ以降の増設ドライブを活用するためには管理者がさまざまな設定を行わなければなりません.本章ではこうしたドライブ増設に関して開設します.
6.1.2 EIDEとSCSI
現在,ドライブのインターフェースとしてはEIDE(Enchanced IDE)とSCSIの2種類が主流になっています.一般的には安価なEDIEが普及していますが,サーバーとして使用するにはSCSIが向いています.
EIDEはCPUが直接ハードディスクドライブを制御します.そのため,構造が単純手価格が安く,ディスクアクセスの要求があってからアクセスが始まるまでの反応速度は速いというメリットがあります.しかし,データの転送が始まるとCPUがデータの転送作業に追われるため,プログラムの実行速度が低下するという欠点があります.また,汎用性が低く,CD-ROMドライブを含めても最大4台のドライブしか接続できませんし,接続ケーブルの長さが極端に短く限られているために内蔵ドライブにしか使用できません.
一方,SCSIではSCSIアダプタがディスクを制御するために構造が複雑になってEIDEにくらべて高価です.しかし,CPUはディスクアクセスの命令をSCSIアダプタに発行した後はプログラムの実行に専念できますので,アクセスを開始するまでの速度はEIDEに劣るものの,アクセスを開始したあとはシステム全体のパフォーマンスを落とさずにすむという大きなメリットがあります.また,汎用性が高く,1つのSCSIアダプタに最大7台のさまざまな周辺機器を接続できる上,複数のSCSIアダプタを装着して併用することもできます.サーバー向けといえるでしょう.
6.1.3 EIDEの転送速度
現在,EIDEのデータ転送に関する規格には以下のような規格があります.主にマザーボードのEIDEインターフェースの仕様やBIOS設定によるものですが,Ultra DMA/33を使用するためにはマザーボードのEIDEインターフェースとハードディスクの両方がUltra DMA/33に対応している必要があります.
データ転送モード | データ転送速度 |
PIOモード0 | 3.3MB/sec |
PIOモード1 | 5.2MB/sec |
PIOモード2 | 8.3MB/sec |
PIOモード3 | 11.1MB/sec |
PIOモード4 | 16.8MB/sec |
バスマスタDMAモード0 | 4.2MB/sec |
バスマスタDMAモード1 | 13.3MB/sec |
バスマスタDMAモード2 | 16.7MB/sec |
Ultra DMA/33 | 33.3MB/sec |
これから新規に購入するのであれば,Ultra DMA/33(81)対応のドライブにすべきでしょう.コンピューターのマザーボードがUltra DMA/33に対応していない場合には,BIOS設定でコンピューター本体のEIDEインターフェースを停止して,Ultara DMA/33対応のEIDEインターフェースカードを増設するという方法もあります.
6.1.4 SCSIの種類
SCSIには以下のような規格があります.これまでの主流は転送速度10MB/secのFast SCSI-2(82)でしたが,現在,Ultra SCSIやUltra Wide SCSIが急速に普及しつつあります.
SCSI規格 | 転送速度 | 内容 |
Wide SCSI-2 (Wide SCSI) |
20MB/sec | データバスをSCSI-2倍の幅の16ビットに拡張しました.ケーブル総延長は6m以内です. |
Ultra SCSI | 20MB/sec | 転送レートをSCSI-2の倍に引き上げました.ただし,クロックの高速化によってSCSIケーブルの総延長が1.5m以内という短いものに制限されています. |
Ultra Wide SCSI (Wide Ultra SCSI) |
40MB/sec | 名前のとおり,Ultra SCSIとWide SCSIの両方の特徴を取り入れました.ケーブルの総延長は1.5m以内です. |
Ultra 2 SCSI (Fast80SCSI) |
80MB/sec | SCSIインターフェースの標準ともいえるメーカー,アダプテック社が提唱している新規格で,Wide SCSIと同じ16ビット幅のデータバスです.ケーブルの規格を変更することで,ケーブルの総延長の制限が12mになりました. |
Fiber Channel | 100MB/sec | ケーブルに光ファイバーを使用し,プラスチック光ファイバーで70m,グラス光ファイバーで200mのケーブル延長を誇ります.データバスは8ビット幅ですが,高速転送で100MB/secを実現しています. |
データバス幅が8ビットのSCSI,SCSI-2,Ultra SCSIでは50ピンケーブルが使用されます.Wide SCSIに対してこれらはNarrow SCSIともよばれます.データバス幅が16ビットのWide SCSI,Ultra Wide SCSIでは68ピンケーブルが使用されます.68ピンWide SCSI系のSCSIアダプタに50ピンNarrow SCSI系のハードディスクを接続することもできますが,その場合は68ピンから50ピンに変換するケーブルが必要です.ただし,SCSIアダプタを基点として68ピンから50ピンに変換した先に再び50ピンから68ピンに変換することはできません.
SCSIアダプタに接続する機器の数はデータバス幅に依存するため,Narrow SCSIでは7台,Wide SCSIでは15台となります(83).また,SCSI-2やUltra SCSI製品の一部にはデータバスを32ビットまで拡張し,31台のSCSI機器を接続できるものもありますが,これはほとんど普及していません.またFast80SCSIやFiber Channelもようやく製品化が始まったばかりでほとんど普及していません.
サーバーで使用するためにコストパフォーマンスや製品の豊富さも考えると,現状ではUltra Wide SCSIがもっとも適しているでしょう.
6.1.5 増設ドライブのフォーマット
増設ドライブを使用するにはパーティションの作成とフォーマットを行わなければなりません.MS-DOSやWindows 95ではこれらの作業はfdiskコマンドとformatコマンドによって行いましたが,BackOffice SBSではディスクアドミニストレータを使用します.
(1) ドライブを増設してBackOffice SBSを起動したら,スタートメニューの「プログラム」-「管理ツール(共通)」-「ディスクアドミニストレータ」を起動してください.
(2) 空き領域をクリックして選択します.そのパーティションを右クリックしてショートカットメニューを開き,プライマリパーティション(84)を作成する場合は「作成」,拡張パーティション(85)を作成する場合は「拡張パーティションの作成」を実行します.
(3) 空き領域の容量の最小値と最大値が表示されますので,作成したいパーティションの容量を指定してください.
(4) ショートカットメニューの「今すぐ変更を反映」を実行します.新しいパーティションにドライブ文字の割り当てが行われます.
(5) ショートカットメニューの「フォーマット」を実行します.
なお,ディスクアドミニストレータのヘルプを参照すると,NEC PC-9800シリーズでパーティションの作成,フォーマットを行う場合の記述がありますが,BackOffice SBSはNEC PC-9800シリーズでは使用できません(86).BackOffice製品群のWindows NT ServerはNEC PC-9800シリーズでも使用できますので,BackOffice SBSに含まれるWindows NT ServerにBackOffice製品群のWindows NT Serverのヘルプファイルが流用されているためと思われます.
<以下省略.文章,図版は出版されているものといくぶん異なります.
Copyright 1998 Okazaki Toshihiko>